国税職員をヘロヘロにした税務調査先会社の「陰険&低レベルすぎる」嫌がらせ

国税職員をヘロヘロにした税務調査先会社の「陰険&低レベルすぎる」嫌がらせ

「Thinkstock」より

 元国税局職員さんきゅう倉田です。初めて宇宙に出て帰還したときに言うセリフは、「申告は青かった」と決めています。

 今回は、税務調査における不安について紹介します。

 税務調査は、個人の所得税にかかるものと、法人の法人税にかかるもので、調査する部署も実地調査のスケジュールも異なります。法人ですと、法人課税部門がおおむね2日間の調査を行います。2日間いますので、2回昼食を挟みます。ひとつめの不安は、この昼食にあります。昔は、調査先の納税者からお弁当などを振る舞ってもらっていたそうですが、現在は、調査先の外に出て定食屋などに入ります。

 しかし、調査先が辺鄙なところにあることもしばしばあり、スマートフォンもないような時代には、国土地理院発行の地図を開いて、準備調査の段階で飲食店を探していました。営業時間も、定休日も、店が存在するかもわからない、地図情報だけで戦略を練るランチ戦争。今、思い出すと、なんて無謀な戦いなのでしょう。単独での調査であれば失敗も許されますが、上司を連れ立って行う調査の際にミスは許されません。国道沿いにぽつりぽつりと存在する、味もわからない飲食店を何軒かピックアップし、不測の事態に備えます。味がどうこうより、とにかく飲食店に入ることが重要で、味など2の次3の次です。とにかく、店が存在すること、そして飢えをしのげて1時間、時間を潰せればいいのです。

●驚愕の塩入りコーヒー

 さて、ランチ問題が解決したら、残る不安はコーヒーです。

 2日間も調査先にいますから、民度の著しく低い会社でない限り飲み物が出されます。この場合は、一種の儀礼的に提供される飲料ではありますが、コーヒーが最も多いです。はるか昔から、それこそ南蛮から長崎にコーヒーが伝わったときから、税務署や国税局の職員を苦しめるコーヒーの魔の手は迫っていました。コーヒーは好きです。ぼくは、毎日のように、コロンビアスプレモ、ケニアAA、グアテマラSHBなどの豆を挽いて、コーヒーを淹れています。ブラックで豆のアロマをたのしむような“いけ好かない”男ですが、税務調査の際は、ストレートではないコーヒーを飲むことがしばしばありました。決して、自らコーヒーに砂糖やミルクを入れていたわけではありません。

 コーヒーに何か入っていました。それは「塩」です。主に、塩が入っていました。税務調査官の一部は、塩からいコーヒーを一日中、飲み続けなければならないのです。コーヒーを運んできた女性が、うっかり砂糖と間違えて塩を入れてしまったのでしょうか。あるいはエチオピアの文化に傾倒していて、エチオピアでは一般的といわれる飲み方を説明もなしに強制的に飲ませようとしているのでしょうか。そうではありません。

 代表取締役社長の密命を受けた社員が、調査官のストレス値を最大に上げようとしているのです。これは、社長と調査官のパワーゲームです。塩入りコーヒー程度でひるんでいたら、ナメられてしまいます。朝送り出してくれた統括官は、日常的に「根性見せろよ」と言っています。つまり、ここが最も根性を見せる場面です。

 ぼくは、ぐいと一息に飲み干して、「うまいコーヒーですね、エチオピア産ですか?」と帳簿を見ながらさらりと言って、何事もなかったように振る舞います。「こいつ、効いていないのか?」と社長と社員が目で会話しているのを視界の端に捉えながら、第1ラウンドを勝利した喜びに浸ります。達成感や充実感は、リスクとコストと危機感を伴った行為の中にしかありません。その達成感が、ぼくの生産性を上げてくれます。ぼくは、それをわかった上で、プライドでコーヒーを飲みました。

 きっと、同じ時刻に調査を行い、同時に塩入りコーヒーを出された全国の同僚たちも、「100匹目の猿」のような思いでコーヒーを飲み干したことでしょう。ただ、飲み干すことによって、お代わりが何度も出てくる地獄に突入します。調査を終えて帰社する18時ごろには、ナトリウムでむくみきってアンパンのヒーローのような顔になり、調査の報告を受ける上司に「なんだその顔は? 酒の飲みすぎだぞ、バカヤロウ」とどやされて、最大のリスクは内側にあることを知るのでした。

 皆さん、税務調査の際には、調査官にプレーンな飲み物を出してあげてください。
(文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人)

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