江本孟紀が提言「プロ野球は利益の使い道間違い」「交流戦は巨人という利権欲しさ」

江本孟紀が提言「プロ野球は利益の使い道間違い」「交流戦は巨人という利権欲しさ」

読売ジャイアンツの坂本勇人選手(「Wikipedia」より)

 いよいよ今年も、プロ野球の「日本生命セ・パ交流戦」がスタートする。初戦は5月30日の火曜日。対戦カードは以下の通りだ。

・北海道日本ハムファイターズvs.横浜DeNAベイスターズ
・東北楽天ゴールデンイーグルスvs.読売ジャイアンツ
・埼玉西武ライオンズvs.広島東洋カープ
・千葉ロッテマリーンズvs.阪神タイガース
・オリックス・バファローズvs.東京ヤクルトスワローズ
・福岡ソフトバンクホークスvs.中日ドラゴンズ

 最大の関心事は、やはり両リーグの勝敗だろう。セントラル・リーグの勝ち越しは、2009年の70勝67敗が最後だ。10年以降の7年間は、常にパシフィック・リーグが勝ち越している。

 セ・リーグのファンにとって、交流戦は「もう見たくない」「今すぐ中止してほしい」試合と化しているかもしれない。一方で、プロの解説者からも「見直し論」が提起されていることをご存じだろうか。東映フライヤーズ→南海ホークス→阪神とセ・パ両リーグでプレーした経験を持つ、元投手の江本孟紀氏の主張だ。

 そこで、江本氏に

・交流戦の見どころ
・パ・リーグが強い理由
・交流戦見直し論

の3点について話を聞いた。

●交流戦で両リーグの流れに波乱が生まれる?

 まず交流戦の見どころについて、江本氏は「開幕から続く各チームの流れが変わってしまう可能性にある」と語る。

「注目すべきは、交流戦が上位と下位のチームに与える影響ですね。前者は勢いが止まって失速する恐れがあり、後者は勝利を重ねて息を吹き返す可能性があります」(江本氏)

 具体的に見てみよう。セ・リーグは首位が広島、2位が阪神。最下位は中日だ(いずれも5月28日時点、以下同)。パ・リーグは首位が楽天、2位はソフトバンク、最下位はロッテとなっている。

 今年も交流戦はパ・リーグが強く、セ・リーグが苦戦する可能性が高いのであれば、ロッテファンは希望を見いだしてもいいのかもしれない。セ・リーグの各チームを撃破して勢いを取り戻し、後半戦で楽天、ソフトバンクに挑むというシナリオが予想される。

 一方、広島と阪神は褌を締め直さないと、せっかくのアドバンテージを失ってしまう。「パのチームにどれだけ負けないか」という情けない争いのなか、巨人やDeNAが漁夫の利を奪う可能性もある。最下位の中日にとっては、まさに正念場だ。パ・リーグを相手に勝ち越すという“下剋上”を果たすか、交流戦でも絶望的な状況に追い込まれるか……剣が峰に立たされるといっても過言ではないだろう。

「昨年の交流戦では、セ・リーグで広島が3位に食い込む強さを見せ、リーグ優勝への道筋をつくりました。逆に、パ・リーグではソフトバンクが勝ちすぎてリズムがおかしくなり、シーズン後半の勝負どころで日本ハムに付け込まれました。両リーグの流れを交流戦で途切れさせてしまうと、これだけの影響が出てしまうのです」(同)

 それにしても、なぜこれほどパ・リーグは強いのか。その理由を、江本氏は「DH(指名打者)制の有無につきます」と指摘する。

「DH制のパ・リーグでは、野手は1番から9番まで長打力のある選手を揃えるのが理想的です。どのチームも強力打線を目指すため、対戦するピッチャーも必然的に鍛えられます。対するセ・リーグは、DHという『打つだけの選手』がいないので、野手は1番から8番まで攻走守の三拍子が揃っているタイプが求められます。さらにピッチャーにも打順が回るため、代打や代走のスペシャリストも必要です」(同)

●交流戦打率ベスト10はパの選手が7人独占

 オーナーやゼネラル・マネージャー(GM)の立場で考えるとわかるが、セ・リーグのチームはパ・リーグに比べてコンパクトな陣容となる。セ・リーグの「スモールボール」がパ・リーグの「ビッグボール」を下せば小気味いいが、現実はなかなか厳しいようだ。

「投手にとっても打者にとっても、交流戦のポイントは『普段対戦していない相手に、どう立ち向かうか』です。そして、どうしてもセ・リーグのピッチャーには不利ですよ。パ・リーグのバッターは1番から9番まで、ブンブン振り回してくる。そして、当たると長打ですからね」(同)

 2016年の交流戦における打率ベスト10を振り返っておこう。(左から選手名、チーム名、打率)

1 城所龍磨(ソフトバンク).415
2 森友哉(西武).382
3 アルフレド・デスパイネ(ロッテ).381
3 鈴木誠也(広島).381
5 長野久義(巨人).361
6 秋山翔吾(西武).360
7 西川遥輝(日本ハム).355
8 田村龍弘(ロッテ).352
9 宮崎敏郎(DeNA).346
10 鈴木大地(ロッテ).344

 ご覧の通り、10人中パ・リーグは7人、セ・リーグは3人という内訳だ。江本氏が指摘するように、パ・リーグの打者が「ブンブン振り回した」結果は歴然としている。セ・リーグのピッチャーにとっては恐怖だろう。

 以上のような状況を踏まえ、江本氏は「条件付きで」交流戦の見直し論を主張する。その理由を「第一に、ペナントレースに与える影響が大きすぎること。第二に、オールスターと日本シリーズの格が下がってしまうこと」とする。

「第一の理由については、先に説明した通りです。パ・リーグがセ・リーグに圧勝するなかで、両リーグ内の順位変動が必要以上に激化してしまいます。無理のある日程や移動で調子を狂わされる選手も少なくありません」(同)

 第二の理由については、説明を必要としないファンも多いだろう。かつて、セ・リーグとパ・リーグのチームが対戦するのは、ペナントレースを勝ち抜いた2チームが激突する日本シリーズだけだった。だからこそ、セ・パ両リーグのスターが一同に介するオールスターゲームにも価値があったのだ。

「昔から、パ・リーグは交流戦の開催を求めてきました。しかしながら、『ファンのため』は口実にすぎず、『自分たちも巨人戦という利権がほしい』というのが本音だったんです。

 ところが、04年にプロ野球再編問題が持ち上がり、ある種の危機感から、翌05年から交流戦が実施されました。確かに、交流戦に一定の歴史的意義は認められます。とはいえ、パ・リーグはすでに自分たちの力でお客さんを集めることができます。

『ファンのため』という口実で始めた交流戦ですが、日程の悪影響など『選手のため』に見直しを考える時期に差しかかっているんです。興行面でもオールスターに悪影響を与えるというだけでなく、実際に観客動員が下がった交流戦もあります」(同)

●実はバブルの野球人気、NPBの野球振興に疑問

 江本氏によると、現在のプロ野球人気は一般的なイメージとは反対に最高潮に達しており、「バブル」と評してもいいレベルだという。

「いまだにメディアで『プロ野球の人気低迷が続いています』などと発言する識者や関係者がいますが、球場に足を運んだらそんなことは言えません。チーム名は伏せますが、シーズン終盤で最下位争いというカードでも、あきれるぐらい観客が入っています。

 価値が低いと思われるような試合にもかかわらず、興行的には成功している。これが、バブルともいえる今のプロ野球人気です。しかし、厳しい指摘をさせてもらうと、今球場に足を運んでくれているファンのなかには、単に騒ぎに来ているだけという人も少なくありません。特定の選手を応援しているわけでも、チームの勝利を祈っているわけでもないのです」(同)

 プロ野球人気が高止まりとなれば何よりだが、そんなシナリオは現実性に乏しい。ブームが去れば、必ず低迷期が訪れてしまう。それを防ぐには、どうしたらいいか。そんな観点から、交流戦を見直す必要に迫られている。

「せっかく定着したのですから、廃止する必要はないかもしれません。とはいえ、たとえばメジャーリーグの交流戦であるインターリーグは、全チームの対戦は行われません。ファンの要望や地理的条件を勘案してカードが組まれます。これは、日本でも参考にすべきではないでしょうか」(同)

 プロ野球に昔と変わらぬスポットライトが当てられているのは事実だが、そんななかで11年にはプロ野球選手の年金制度が解散に追い込まれている。資金難が原因だ。

 江本氏は「交流戦の収益のなかから年金の資金を拠出するなどしていれば、解散に追い込まれることはなかったでしょうし、僕も交流戦の見直しを訴えたりはしません」と言う。

「今の選手たちは、僕らの頃に比べてはるかに高額の年俸を手にしています。とはいえ、30代後半まで1軍でプレーできる選手など、ほんの一握りでしょう。球界全体の収益や全選手の生活保障を考えたときに、今のプロ野球人気と昔の巨人人気が圧倒的だった時代のどちらがよかったのか、今こそ冷静に比較すべきではないでしょうか」(同)

「プロ」野球である以上、興行収入を最大化しようとするのは当然かもしれない。しかし、江本氏は「利益の使い道も問題だらけです」と指摘する。

「興行を優先してペナントレースの魅力を激減させたというのは、交流戦だけでなくCS(クライマックスシリーズ)の責任も大きいですが、その収益を子供にプロ野球の楽しさを伝える事業に使ったり、アジアに野球を広める活動に投下したりするのであれば、まだ理解できます。しかし、残念なことにNPB(日本野球機構)は世界レベルでの野球振興もできていないのです」(同)

 野球の競技人口が減少しているという調査結果は、すでに発表されている。日本中学校体育連盟によると、男子の軟式野球人口は30万7053人(09年)から18万5314人(16年)に激減している。

 仮にプロ野球選手がゼロになってしまえば、交流戦どころかペナントレースを開催することもできなくなってしまう。こうした危機感を、ファンも持つべきだろう。

●交流戦が廃止されても野球の面白さは失われない

 しかしながら、江本氏は最後に「ゆくゆくは交流戦が廃止されたとしても、野球のおもしろさは失われないでしょう」と断言する。真の発展のために苦言を呈することはあっても、野球というスポーツそのものの力は信じているということなのだろう。

 とにもかくにも、間もなく交流戦の幕が開く。今年は、グラウンドで躍動する選手の姿を楽しむだけでなく、「グラウンドに落ちているゼニ」のゆくえに思いを馳せてみるのも、ファンとしては大切なことのようだ。
(文=編集部)

関連記事(外部サイト)