吉野家の牛丼、「スマホ出前」開始…新聞配達員が宅配、セブンは無料配達を急拡大

吉野家の牛丼、「スマホ出前」開始…新聞配達員が宅配、セブンは無料配達を急拡大

吉野家の店舗

 吉野家が「出前」に参入した。別会社が運営する宅配ポータルサイト「出前館」に注文が入った場合に、一部の吉野家店舗から配達する仕組みだ。配達は新聞販売店「ASA」などのデリバリー拠点が所有するバイクと配達員で行う。

 この仕組みでは「シェアリングエコノミー」を採用している。シェアリングエコノミーとは、使われていない資産を有効活用することだが、新聞販売店でいえば、新聞配達をしない時間帯の配達員とバイクを出前に活用することがそのひとつだ。

 飲食店は、デリバリー機能がなくても出前が可能になる。シェアデリバリー拠点が新聞販売店の場合、その新聞販売店は所有するバイクと配達員を有効活用でき、出前館の運営会社は収入を得られる。利用者は出前の選択肢が増え、家にいながらスマホなどで簡単に注文ができる。

 このように、4者が得するシステムといえるだろう。出前館は3年後までにシェアデリバリー拠点を200カ所まで拡大する方針だ。

 出前館には現在、モスバーガーやケンタッキーフライドチキン、カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)といった有名企業が名を連ねており、加盟店舗数は1万4000店を超えるという。

 出前館を運営する「夢の街創造委員会」の業績は好調だ。2016年8月期の売上高は前年比13.5%の41億円だった。連結会計初年度の12年8月期の13億円からは3倍以上で、売上高は右肩上がりで成長している。出前館のアクティブ会員数は187万人(17年4月末時点)にもなるという。

 回転寿司チェーンのスシローも6月5日から出前を一部店舗で開始した。インターネットを使ったライドシェア(相乗り)大手の米ウーバーテクノロジーズが運営する宅配サービス「UberEATS(ウーバーイーツ)」経由で宅配する。

 ウーバーイーツでもシェアリングエコノミーを採用している。配達員に登録した一般の人が、時間の空いている時に自身のバイクや自転車で注文料理を配達するサービスだ。ウーバーならではのサービスといえるだろう。現在、大阪王将やクリスピー クリーム ドーナツ、タコベルなどが名を連ねている。

●中食の拡大、シェアリングエコノミーの発達

 こうした宅配サービスが急速に広まっているのは、「中食需要の拡大」が背景にある。日本惣菜協会によると、16年の中食市場は前年比2.7%増の9.8兆円となっている。共働き世帯や単身世帯、高齢者の増加などを背景として、自炊の手間と時間を省く人が増え、中食市場が拡大している。

 また、シェアリングエコノミーの発達が宅配サービスに追い風となっている。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の調査によると、シェアリングエコノミー主要5業種の世界全体の売上高は、13年には約150億ドルだったが、25年までに約3350億ドルにまで拡大すると予測している。日本で規制緩和が進みライドシェアなどが普及すれば、合わせて宅配市場もさらに拡大するだろう。

 飲食物の宅配は、身近な存在になりつつある。従前から宅配を行っている企業でも、近年の需要の高まりを受けて対応店舗網を拡大している。たとえば、日本マクドナルドはサラ・カサノバ氏がCEO(最高経営責任者)に就いて間もない14年度に、事業戦略の一環として宅配サービス「マックデリバリー」の実施店舗数を前年度の2倍程度にする方針を打ち出すなど、近年宅配サービスを強化している。ちなみにマックデリバリーは現在、1500円以上(一部1000円以上)の注文で店員が個別配達を引き受けている。配達料は別途300円かかる。

 セブン-イレブンも宅配サービスを強化している。2000年から宅配サービス「セブンミール」を展開しており、現在全店の約7割にあたる約1万5000店で実施している。日替わり弁当や惣菜、飲料など約2000品目を取り扱い、500円以上の商品を購入した場合の配達料は無料だ。

 セブンは4月、セブンミールを強化するために大手運輸企業グループのセイノーホールディングス(HD)と提携し、セイノーHD子会社がセブン専用の軽ワゴンで配達すると発表した。広島県の一部エリアの約150店舗で試行を始め、19年2月末までに全国3000店舗に拡大する計画だ。

 セブンミールでは、セブンの店員が接客などの通常業務を兼務しながら配達しているが、通常業務が多忙の場合、配達に十分な人手を避けない状況にあった。そこで、セイノーHD子会社が配達することで従来に比べ多頻度で配達が可能となるとしている。

 シェアリングエコノミーの一環として、店舗の従業員を有効活用して宅配する動きもある。米小売り最大手のウォルマート・ストアーズは、ネット通販で注文を受けた商品を店舗の従業員が帰宅途中に顧客宅へ配達する実験を今年6月から開始した。従業員は仕事が終わると、店舗にある注文を受けた商品を自身の車に積み込み、アプリに注文客の自宅の住所を入力し、GPSの誘導で配送する。

 世界最大のスーパーマーケットチェーン、米ウォルマートのように従業員が帰宅がてら注文された商品を宅配することが当たり前になる日が、日本にも遠くない将来やってくる可能性は十分にある。それが実現すれば、店は迅速かつ効率的に配達でき、配送コストを削減できる。そのような宅配サービスが充実すれば、客は恩恵を享受でき、店舗従業員は追加収入を得ることができる。三者が得するシステムといえる。そして宅配サービスはより活況となるだろう。

 宅配市場は、多くの飲食店や小売店が続々と参入し、出前館やウーバーイーツといった宅配プラットフォームも次々と現れており、戦国時代を迎えているといえるだろう。今後の動向から目が離せない。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

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