麻生太郎、次期首相か…自民党内で安倍首相「終焉」の動き加速

安倍政権の終わりが始まっているとの声 台風の目は麻生太郎氏で、岸田外相擁立論も

記事まとめ

  • 安倍政権の終わりが始まっているらしく、『党内抗争』がエスカレートしつつあるという
  • 石破茂氏と岸田外相が安倍晋三首相に異論を唱え始めたが、台風の目は麻生太郎氏らしい
  • 麻生派は岸田派取り込みを考え、岸田外相擁立も麻生氏自身の首相就任もありうるという

麻生太郎、次期首相か…自民党内で安倍首相「終焉」の動き加速

麻生太郎、次期首相か…自民党内で安倍首相「終焉」の動き加速

麻生太郎副総理・財務大臣(写真:AP/アフロ)

 安倍晋三首相が蕎麦を注文。店員が「もり」か「かけ」かを聞くと、首相は血相を変えて逃走──こんな漫画が話題になっているという。言わずもがなだが「もりそば」は森友学園、「かけそば」は加計学園に引っ掛けられている。

 首相の苦境は、野党に利するところがない。だが、「党内抗争」はエスカレートしつつある。つまり、自民党内の「ポスト安倍」レースが本格化してきたのだ。

 台風の目は、麻生太郎副総理・財務相だろう。関係者の誰もが「政局を握るキーパーソン」と睨む。

 最大の関心事は「麻生派は、どこまで拡大するか」だ。5月15日、麻生氏と山東派の山東昭子・元参議院副議長、佐藤勉・衆議院議院運営委員長の3人は、新派閥結成で合意した。順当に進めば、麻生派(44人)、山東派(11人)、佐藤グループ(6人)で合計61人となる。

 これで、額賀福志郎・元財務相の額賀派(55人)を抜く。そして、安倍首相の出身派閥であり、党内最大勢力を誇る細田博之総務会長の細田派(96人)に次ぐ、党内第2位の勢力として躍り出るわけだ。

 さらに、岸田文雄外相の岸田派(45人)との関係も注目されている。もともと、麻生派と岸田派は旧宮沢派から分裂して誕生した。元首相の池田勇人が設立した宏池会は、さらに大平正芳、鈴木善幸、宮澤喜一らの首相を輩出した名門派閥。しかし、2000年に第2次森喜朗内閣を打倒しようとした故・加藤紘一氏の「加藤の乱」が失敗に終わって分裂した。

 別れたとはいえ、以前は「同じ釜の飯を食った」仲間。“復縁”の可能性が取り沙汰されるのは当然だろう。もし、61人に45人が加われば106人。細田派すら抜く。自民党最大派閥の誕生だ。

 麻生氏も、自身が政局の中心に立っているという自負があるようだ。4月12日、都内で開かれた麻生派パーティーで「自民党の中で大きな政策集団が切磋琢磨するほうが政治として安定する」と発言。細田派vs.大宏池会という構図を描いてみせた。

 次回の自民党総裁選は2018年9月。もし大宏池会が実現すれば、麻生氏が再び総裁に返り咲くことも可能だ。はたして、麻生氏は「ポスト安倍」に名乗りを上げ、もう一度首相の座に返り咲こうとしているのか。大派閥を擁する「キングメーカー」として君臨するつもりなのか──政治アナリストの伊藤惇夫氏が解説する。

●「安倍の終わり」はすでに始まっている?

「意外に知られたエピソードですが、麻生さんは以前、『安倍が首相を2回やれるなら、俺だってやれる』と公言していました。しかし、今の動きは首相に返り咲くための行動ではないでしょう。選択肢を増やす、というのが麻生さんの戦略だと思います」(伊藤氏)

 野党のだらしなさもあり、いまだに安倍政権は盤石。一部の関係者やマスコミが期待するほど、政権の屋台骨は揺らいでいない。

「しかし、政権のあちこちで軋みが生じているのは事実です。となると、一朝有事の備えも必要になる。派閥が大きくなれば、キングメーカーの存在感はもちろん、緊急時にワンポイントで首相に返り咲くカードも手元に持てる。麻生さんの狙いを読み解けば、こんな感じではないでしょうか」(同)

 総裁選に立候補すると目されている議員は最近、安倍首相に異論を唱え始めた。首相が提案した憲法9条の改正には、石破茂氏と岸田氏が否定的な発言を行った。

 加計学園問題では、それこそ麻生氏が「獣医学部新設は、獣医師のレベル低下を招く」と発言している。麻生氏と獣医師会の深い関係が報道されたこともあわせて、かなりの耳目を集めた。

 安倍政権の「軋み」として伊藤氏が注目するのは、5月16日に野田毅・前税制調査会長が「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」を開き、そこに自民党の議員が60人集まったことだ。

 政権に近いとされる読売新聞も、17日付の朝刊で「野田聖子・元総務会長が呼び掛け人に名を連ね、事務局を村上誠一郎・元行政改革相が務めるなど、首相と政策的に距離を置く議員が中核を占める」と解説。「党内では、『次期総裁選に意欲を示している野田聖子氏出馬への布石ではないか』(党幹部)との見方もある」とまで踏み込んだ。

「安倍首相の改憲発言には、自民党内からもさまざまな反対論が沸き上がりましたが、アベノミクスは政権における唯一の成功政策。それを検証しようというのですから、インパクトは段違いです。おまけに60人の自民党議員が集まったとなると、すでに『安倍の終わり』は始まっていると見るべきでしょう」(同)

●なぜ自民党の派閥は生き残った?

 それにしても、「数の力」や「キングメーカー」などの言葉が飛び交う昨今の政治ニュースは、まるで田中角栄が生きていた時代のようだ。「中選挙区制的」と形容できるだろう。

 自民=与党、社会=野党の図式が固定化していた「55年体制」(1955〜93年)を麻生氏が蘇らせたのだろうか。なぜ、麻生氏は時計の針を戻せたのか。

「中選挙区制の時代、自民党における派閥には3つの構成要件が必要でした。ひとつ目は、カネを集めて派閥のメンバーに配ること。2つ目は中選挙区制の下で野党だけでなく同じ自民党の候補者とも戦い、当選させること。そして、3つ目は派閥のメンバーに大臣や党幹部のポストを獲得させること、です。ところが、ひとつ目と2つ目の能力は小選挙区制で消滅しました」(同)

 現在の政治で、もっとも重要なカネは政党交付金だ。自民党の場合は、当然ながら党本部が受け取り、直に議員へ配る。派閥の出る幕はない。

 中選挙区制では、ひとつの選挙区から3〜5人を選出するのが一般的だ。ひとつの政党から複数の候補者が立つため、最終的には「候補者vs.候補者」という人物本位の選挙になる。

 対して、小選挙区制は“敗者復活”を除き、ひとつの選挙区から1人しか当選できない。政党は1人の候補者を全力で支援するため、政党本意の選挙となる。立候補者にとっては、現職であれ新人であれ、党の公認を得られるかどうかが死活問題となる。そして、公認を与えるのは党本部だ。

 今の自民党本部は、カネと選挙を掌握している。議員は生殺与奪の権を握られているに等しい。派閥は無用のものとなり、党は執行部を頂点とするピラミッド型組織に生まれ変わる──はずだったのだが、現実は違った。派閥は生き残った。

「2つの要素が消えたのに、なぜ自民党で派閥が存続したのかといえば、ポストの分配機能だけは温存されたからです。小泉純一郎政権時代から、脱派閥人事がうたわれてきましたし、実際にそういう人事も行われました。ですが、完全に無視することはできなかった。派閥への配慮は、それなりに続いてきたのです」(同)

 そして、究極の人事が自民党総裁=首相というポストだ。総裁選で地方票を重要視する“改革”は続いているとはいえ、現在のところは派閥の力が大きい。部下たる議員としては、派閥の長を総理総裁に押し上げることが、何よりも自分たちの利益ともなる。昔と変わらぬ「数の論理」を元に「鉄の団結」が必要になってくるというわけだ。

●第2次安倍政権での麻生太郎の“変化”とは

 こうして、日増しに存在感を増す麻生氏だが、今の「副総理」を見ると、伊藤氏はある「変化」を感じるという。

「以前の麻生さんは、政策通という自負もあってか『オレが、オレが』というタイプの政治家でした。ところが第2次安倍政権になってからは、隠忍自重して政権を黙々と支えているんですね。意見が対立することがあっても、今は麻生さんのほうが自分を抑えている」(同)

 たとえば、麻生氏は消費税増税派として知られている。財務相だからというわけではなく、政治家として信念を持っているのだ。

 一方、消費税増税を延期させた菅義偉官房長官は「政局の政治家」だ。究極的には、政策は関係ない。自民党が選挙で勝つにはどうしたらいいかということを最優先に考え、消費税増税問題に対処する。

「祖父が吉田茂という麻生さんと、横浜市議からキャリアをスタートさせた菅さんは、本質的に水と油というところがあります。ですが、今回、少なくとも表面的なレベルでは麻生さんは菅さんを立てている。ここに、私は麻生さんが政治家として成長した印象を持ちます」(同)

「オレが、オレが」という鼻息の荒さがなくなったとなると、俄然、キングメーカー説が優位に立ちそうだが、いずれにしても、大宏池会が実現しないことには絵に描いた餅にすぎない。

 もともと、永田町の一部では「安倍首相は、岸田外相に政権を禅譲する予定だ」という説がささやかれていた。だが、それに大宏池会構想が新たに加わった。共に事実なら、岸田氏は首相と副総理からラブコールを送られているという“モテモテ”ぶりなのだが、今後の政局にどのような影響を与えるだろうか。

「麻生派が岸田派を取り込もうとしているのは事実です。そのため、岸田さんとしては、麻生さんが本気でキングメーカーになろうとしているのか、自分を利用して首相に返り咲きたいのかを見定める必要があるわけです。

 とはいえ、ポストに関する約束など、政治の世界ではなんの信頼性もありません。厳しい言い方をすると、岸田さんが安倍首相や麻生さんを振り回すぐらいでないと、総理総裁の座は遠いのではないでしょうか」(同)

 そもそも、自民党総裁の任期が「3期9年」に延長されたため、「ポスト安倍」レースには、総裁2期目の安倍首相も名乗りを上げることができる。となれば、今後の“ポスト安倍レース”は激化することはあっても、沈静化することはなさそうだ。
(文=編集部)

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