結婚しなくても出産していい…選択的シングルマザーの多大なメリット「結婚より楽」との声も

結婚しなくても出産していい…選択的シングルマザーの多大なメリット「結婚より楽」との声も

「Thinkstock」より

「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」――。

 4月から放送されている「ゼクシィ」(リクルートマーケティングパートナーズ)のCMが話題を呼んでいる。

「ゼクシィ」といえば日本ナンバーワンの結婚情報誌で、結婚を考える女性の8〜9割が読むといわれるメディアだ。その「ゼクシィ」が、あろうことかCMで冒頭のようなキャッチコピーを打ち出したために、話題となっているのだ。

 確かに、もはや結婚は「幸せ」の必須条件ではなく、それぞれが多様な選択をする時代になっている。なかでも今注目されているのが、「結婚はしないが、子どもはほしい」という「選択的シングルマザー」だ。ニュース番組などで特集されたこともあるため、耳にしたことがある人も多いだろう。

 結婚しないで母親になることを選ぶ女性たちの本音は、どこにあるのか。30代の選択的シングルマザー・Mさんに話を聞いた。

●急増する「選択的シングルマザー」の実態と本音

 まず、選択的シングルマザーとは具体的にどのような女性たちなのか。

 選択的シングルマザーの最大の交流サイトである「SMCネット」は、その定義を「自らの意志で非婚で出産し、1人で子どもを育てることを決めた女性」としている。「共同で育児にあたっている未婚のカップルや事実婚のカップル」は含まれないという。

 意志の強さを感じるまっすぐな瞳が印象的なMさんも、この定義に当てはまる。一度結婚しているが、その後、選択的シングルマザーとして出産。現在は2歳児の母として、育児と仕事の両立に奮闘しつつ、都内で生活している。

「元夫と結婚して3年間、妊娠しませんでした。まわりはどんどん出産して、フェイスブックに子どもの写真をバンバン上げる……。気持ちばかりが焦り、不妊治療も考えましたが、元夫の同意は得られませんでした。当時はとにかく早く子どもがほしくて、すごくつらかった。その後、夫と離婚してから今のパートナーと出会って交際を始めて、不妊治療に通い始めました。治療開始前の検査を受けているときに子どもができたことがわかったんです」(Mさん)

 この場合、選択肢は大きく分けて3つある。「交際する男性と再婚して2人で子どもを育てる」「中絶手術をする」、そして「出産して1人で子どもを育てる」の3つだ。しかし、Mさんは「中絶は100%考えられませんでした」という。

「年齢的な問題もありますし、何より私自身がどうしても子どもがほしかった。産むという選択肢以外あり得ませんでした。ただ、交際中は結婚を考えていた相手に、妊娠がわかったあとで結婚の意思がないと言われたんです。それなら1人で育てようと決めたのです」(同)

 そして、Mさんは交際していた男性から養育費などの協力も得ず、自らシングルマザーとして生きていくことを決意する。現在は幼い子どもを育てながら、フルタイムの仕事をしている。

●シングルマザーは結婚するより楽?意外な利点

 もっとも、口でいうのは簡単だが、誰の助けも借りず、母親1人で働きながら子どもを育てていくのは容易なことではない。ところが、Mさんは「私はむしろ、結婚するより楽なんじゃないかなって思います」と語る。

「家事や育児に協力できない夫と結婚していて、育児に加えて夫の食事や洗濯……と、両方の面倒を見なくてはいけない人もいます。選択的シングルマザーには、そういったイライラが一切ありません」(同)

 Mさんは、夫婦そのものを否定しているわけではない。「夫婦は揃っていたほうがいい。育児に協力的な夫がいるのであれば、それが一番です」とも言う。その一方、選択的シングルマザーだからこそ「好きな相手の子どもを産むことができた」と、そのメリットを語る。

「女性は結婚相手の条件に経済力を重視する人も多いです。『年収1000万以上はないと無理!』と言う女性は少なくありません。選択的シングルマザーなら、そういった条件に振り回されず、純粋に好きな相手の子どもを産めます」(同)

 選択的シングルマザーには、現在の収入、将来性、お互いの家族構成など、長く一緒に暮らす生活相手を選ぶための諸条件を気にすることなく、純粋に好きな男性の子どもを産むことのできる利点があるという。

 また「選択的シングルマザーが日本人女性の出産を後押しするかもしれない」と語るのは、医師であり自身もシングルマザーの岡本彩さんだ。

 日本では、高度経済成長期には「出産」と「結婚」はセットで考えられてきた。しかし、都市部を中心に女性たちの晩婚化が進んだことで、出産のタイミングを逃してしまう人も少なくないという。

「日本では初婚の平均年齢が29歳で、出産は30歳ぐらい。ところが、アメリカやヨーロッパは日本と逆で、結婚よりも出産年齢のほうが若いことが多いんです。おそらく、それは事実婚が広く認められているからでしょう。日本は結婚してから出産する人が大多数なので、どうしても『結婚できない=産めない』という結論になる。だから、結婚前に妊娠した場合、なかには中絶を選択する女性もいると思います」(岡本さん)

 そういう意味では、選択的シングルマザーは「結婚しなくても出産していい」という考えを具現化した存在ともいえるだろう。

●日本のシングルマザーは100万人超え

 ただし、残念ながら、選択的シングルマザーはまだ日本社会に受け入れられているとは言い難い。

 さらに、税金など日本の制度の問題もある。離婚や夫との死別でシングルマザーとなった場合には「寡婦控除制度」によって税負担が軽くなるが、この所得控除は未婚のシングルマザーには適用されないのだ。

「日本では、まだ『籍』が重視されていて、『お父さんがいなくて子どもがかわいそう』という見方をする人もいます。でも、ヨーロッパやアメリカでは事実婚や婚外子はなんら珍しくありません。

『母子家庭だから子どもがかわいそうだ』『不幸』だという決めつけは、やめてほしいと思います。そうした偏った考えにこだわっていると、ますます日本の少子化が進んでしまうかもしれません」(同)

 もっとも、格差の拡大に伴い、近年のシングルマザーが「貧困」という文脈で語られることが多いのも事実だろう。だからこそ岡本さんも、自分の気持ちも大切だが、「シングルマザーを選択するなら経済的な自立を」と訴える。

「シングルマザーに低所得の人が多いのは事実です。子どもを育てるには感情が安定していなければいけませんが、そのためには経済的な余裕があったほうがいい。経済力があり、1人でも自立して生きていけることが大事です。そして、『実家に任せればいい』ではなくて、精神的な自立もしてほしいです」(同)

 総務省統計局によると、2010年のシングルマザーの総数は108万2000人と、100万人を大きく超えている。このうち、未婚のシングルマザーは 13万2000人。05年に比べて48.2%増と急増している。

 そのなかに選択的シングルマザーがどれくらい含まれているのかは不明だが、今後、こうした生き方に共感する女性が増えていく可能性はありそうだ。

 前述した選択的シングルマザーのMさんに、今後について尋ねると、子どもの父親の男性と定期的に連絡を取りつつ、いずれは別の男性と家庭を築くことも視野に入れているという。自らシングルマザーを「選択」したMさんは、一生懸命かつ貪欲に自分の人生を生きている。
(文=藤野ゆり/清談社)

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