たばこ業界が巨額献金の自民党、受動喫煙防止法案に猛反発…小池都知事の禁煙条例が波紋

たばこ業界が巨額献金の自民党、受動喫煙防止法案に猛反発…小池都知事の禁煙条例が波紋

小池百合子東京都知事(写真:松尾/アフロ)

 世界保健機関(WHO)が「世界でも最低レベル」と指摘する、日本の受動喫煙防止対策。2020年の東京オリンピック前には改善しようと、厚生労働省は今国会で対策強化を図る健康増進法改正案の提出を予定していたが、たばこ業界の意向を受けた自民党の猛反発により頓挫した。

 一方、一向に対策を進められない自民党との違いをアピールしようと、小池百合子東京都知事は7月の東京都議会議員選挙での主要施策に受動喫煙防止を据えた。

●たばこ業界、自民党議員に6000万円以上の献金

 健康増進法改正案におけるたばこ対策は、レストランや居酒屋などでも屋内禁煙(喫煙専用室の設置可)を義務付ける。ただし、30平方m以下の小規模なバーなどに限って、「受動喫煙が生じ得る」との掲示や換気を条件に喫煙を認める。違反が発覚し、是正勧告に従わないなどすれば、施設管理者に最大50万円、たばこを吸った本人に同30万円の過料が設定されている。

 日本の状況を、今年4月に来日したWHOのダグラス・ベッチャー生活習慣病予防部長は、「世界最低レベルで前世紀並みに遅れている」と厳しく批判している。年間1万5000人が、受動喫煙が原因で死亡していると推計されている。厚労省は当初、すべての飲食店で原則禁煙(喫煙専用室は設置可)とする方針だった。しかし、飲食業界などの反発を受けて、小規模店舗は対象外とする原案を公表した。

 たばこ業界は「これでも厳しすぎる」として、緩和を求める120万筆以上の署名をわずか1カ月で集めた。署名では、「決して『受動喫煙防止の取組み』に反対ではないが、政府案では、小規模店は店舗面積や費用から対応できない」と訴える。また、日本禁煙学会の調査では、2010年からの6年間で、たばこ業界から自民党の160人以上の議員に計6000万円以上の政治献金がされていることが判明している。

 票と金の力を背景にしたたばこ業界の意を受けて、自民党は例外を「150平方m以下」と大幅に拡大することを提案した。塩崎恭久厚労大臣と自民党幹部は複数回の折衝を重ねたが、妥協点は見いだせていない。法案は自民党の部会を通過しないと提出できないため、現状維持の期間が続くことは、たばこ業界側が望む展開だ。

 たばこ対策は、国の医療政策も左右する。現在、日本のがん対策の方向性を示す「第3期がん対策推進基本計画」の策定が進むが、厚労省の諮問機関であるがん対策推進協議会は、構成員の全会一致で例外なく受動喫煙を0%にするように記載を求めた。

 厚労省の担当者は、「あくまで意見を聞く場で、調整の中で必ずしも委員の意見通りにはならない」と説明しているが、座長を務めた門田守人・堺市立病院機構理事長は「我々には我々の責任がある」と強調。日本癌学会理事長の宮園浩平・東京大学教授も「絶対負けないようにがんばっていただきたい」とエールを送る。

 規制強化を進めたい塩崎大臣は6月7日、突然、たばこの自動販売機の設置を禁止するよう、所管する財務省に要請する考えを明らかにした。たばこの重要な販路である自販機に切り込むことで事態を打開しようとする奇手だが、たばこ税は財務省にとって重要な権益となっており、実現は簡単ではない。秋の臨時国会を見据えて、水面下での折衝が続いている。

●支持率低迷の小池百合子、禁煙条例で巻き返し?

 そして、ここにきて塩崎大臣に思わぬ“援軍”が現れた。7月の都議選を前に、小池都知事が都民ファーストの会の公約に「屋内喫煙禁止」とする都独自の条例を制定することを表明したのだ。

 もともと、小池氏はたばこ対策には積極的だったとされるが、これまで表立って意見表明をしてこなかった。しかし、東京五輪会場や豊洲市場移転の問題がうまく進められずに支持率が下がり気味だったことに加え、自民党との対比を印象付ける作戦に出たと思われる。

「タイミングを計っていたのだろう」(自民党関係者)

 小池都知事の参戦は事態を動かすのか、はたまた混乱を引き起こすだけなのか。
(文=編集部)

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