異色の「ウルトラマン」ドラマが素晴らしい…ずっと聞いていたくなる謎と致命的失敗

異色の「ウルトラマン」ドラマが素晴らしい…ずっと聞いていたくなる謎と致命的失敗

「怪獣倶楽部〜空想特撮青春記〜 | MBSドラマイズム - 毎日放送」より

 深夜ドラマにはゴールデン帯にはない異色作が多数あるが、『怪獣倶楽部〜空想特撮青春記〜』(MBS、TBS系)も一風変わったドラマである。本作は毎週火曜深夜に放送されており、6月27日深夜に最終回を迎える(TBS系の場合)。

 時は1970年代。喫茶店の片隅で『ウルトラマン』(TBS系)などの特撮番組に登場する怪獣について、熱い議論を交わす男たちがいた。彼らは「怪獣?楽部」と名乗り、怪獣にまつわる同人誌を定期発行していた。

 主人公は、怪獣倶楽部のメンバー・リョウタ(本郷奏多)。怪獣倶楽部の居心地の良さを満喫するリョウタだったが、お付き合いをしているユリコ(馬場ふみか)には怪獣倶楽部のことを言えずにいた。

 会合とデートが重なったり、映画館でデートしているところを仲間に見られてごまかしたりと、リョウタの困難は続く。

●ユニークな「ファンたちの青春」という視点

『ウルトラセブン』(TBS系)の脚本に参加していた故・市川森一が執筆したドラマ『私が愛したウルトラセブン』(NHK)など、特撮番組の制作秘話を題材にしたドラマは過去にいくつかつくられたが、本作がユニークなのは、つくり手ではなく、作品を愛好するファンたちの青春を描いているところだろう。

 漫画家の島本和彦の自伝的漫画をドラマ化した『アオイホノオ』(テレビ東京系)のようなつくり手の青春時代を描く作品なら成功物語としてドラマ化しやすいのだが、消費者であるファンの青春となると「ドラマ化するのは難しいのではないか」と当初は思った。

 だが、怪獣倶楽部の面々が熱い議論を交わしている場面は見応えがあり、ずっと聞いていたくなる。

 喫茶店のマスターとウェイトレスが怪獣倶楽部の会話を盗み聞きして、危ない集団と勘違いする場面はシチュエーションとしてもおもしろく、見せ方次第でいくらでも広げられると思った。

 怪獣倶楽部の面々は、まだ「オタク」という言葉がなかった70年代にオタク的趣味を愛好していた若者たちだ。『ウルトラマン』のような特撮番組はもちろんのこと、漫画やアニメといった趣味は子どものもので、成長すると卒業するものだった。

 現在は、オタクという言葉が世間に認知され、大人になっても漫画やアニメを楽しむことは趣味として定着している。しかし、当時は到底考えられないことで、いい年をしてオタク趣味に没頭する怪獣倶楽部のような面々は、世間から白い目で見られていた。そういった前提が理解できる人には、リョウタの気持ちは痛いほどわかるだろう。

●郷愁を誘うウルトラ怪獣、恋愛パートには不満も

 当時はビデオやDVDといった記録メディアが一般家庭に普及していなかったため、怪獣倶楽部の面々はテレビで見た記憶だけを頼りに番組について議論する。あるいは、古本屋に足繁く通って関連本を探したり、撮影所のまわりをウロウロして偶然を装って監督に話を聞いたりしている。

 今であればインターネットで行われている活動を、当時のオタクがどのように行っていたのかを描いているのが、本作のおもしろいところだ。

 劇中では、ガッツ星人やゼットンなどのウルトラ怪獣が守護霊のように主人公たちを見守っているのだが、その姿は郷愁を誘う。夕暮れの映像が多いことも含めて、ノスタルジックな深夜ドラマとして、よくできている。

 ただ、若干不満なのは、怪獣倶楽部の面々が議論する評論パートが少ないことと、主人公が趣味と恋愛の間で葛藤する場面に重点を置きすぎていること。

 オタク談義は、具体的な知識が伝わらなくても、しゃべっている人たちの熱量さえ伝われば娯楽として成立するので、もっと喧々諤々の評論を戦わせる場面が長くてもよかったのではないか。ネタ元となる『ウルトラマン』『ウルトラセブン』のエピソードも直球続きなので、もっと異色作を交えてもよかったと思う。このあたりは、全4話しかないために仕方ないのかもしれないが。

 リョウタとユリコの恋愛パートについては、オタク趣味を隠して彼女とデートする姿に、正体を隠して戦うウルトラマンの葛藤を重ね合わせているのは理解できる。

 しかし、恋愛と趣味の対立にこだわってしまうこと自体が、どこか1世代前の葛藤のように見えてしまい、「今、それをやられてもなぁ」と思う。趣味がなんだろうが、モテる奴はモテるし、モテない奴はモテない。

 ユリコの描写も記号的で、モグラ女子(ファッションモデルとグラビアアイドルを両立しているタレント)として定評のある馬場ふみかの魅力を生かしきれていない。むしろ、喫茶店のウェイトレスを演じている、あの(ゆるめるモ!)のほうが魅力的である。

 ここまでとがった企画なのだから、いっそ恋愛パートはバッサリ切ってもよかったのではないかと思う。

 サブカルチャーのうんちくを楽しむこと自体が娯楽として成立するのは、『アメトーーク!』や『タモリ倶楽部』(ともにテレビ朝日系)などのトークバラエティの成功からも明らかだ。本作のおもしろさは、そういった「エンターテインメントとしての評論」の可能性を掘り起こしたことにある。

 特撮以外にも、アニメや映画、漫画、小説など、題材は無限にある。本作に続き、今後もファンを主人公にしたマニアックなドラマがつくられてほしい。
(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)

関連記事(外部サイト)