三菱自、益子CEO退任要求噴出でゴーン氏が株主の質問を強制遮断…苛立ち露わ

三菱自、益子CEO退任要求噴出でゴーン氏が株主の質問を強制遮断…苛立ち露わ

日産自動車のカルロス・ゴーン社長と三菱自動車の益子修会長兼社長(東洋経済/アフロ)

「株主全員が(取締役案に)賛同していないのは理解しているが、議決権の結果、過半数の賛同があれば、それは(取締役が)信頼された証」(カルロス・ゴーン氏)

 三菱自動車工業が6月23日に都内で開催した「第48回定時株主総会」で、出席した株主から益子修氏の取締役就任に反対する意見が相次ぎ、議長であるゴーン氏も苛立ちを隠しきれなかった。

 昨年6月に開催された三菱自の定時株主総会では、燃費不正の責任をとって当時社長だった相川哲郎氏が退任する一方で、会長兼CEO(最高経営責任者)として三菱自で権勢をふるってきた益子氏が残留したことに強い批判の声が上がった。益子氏は、日産との資本提携を正式に締結し「(日産主導による)新体制の発足時に責任を明確にする」と述べ、日産との資本提携後に退任すると明言していた。

 しかし、日産グループ入り後の三菱自の新しい経営体制が検討されるなか、簡単に前言を翻した。ゴーン氏が益子氏の留任を強く慰留したからで、益子氏も「悩んだ」と言いながらも最終的に引き受け、昨年12月に益子氏が社長兼CEOとなり、ゴーン氏が会長となった。

●益子氏の取締役選任に批判続出

 そして今年の株主総会。株主からは「益子氏は燃費不正事件での最大の戦犯」「新体制発足で責任を示すと言っていたのだから辞めるべき」など、益子氏の取締役選任を批判する声が相次いだ。さらに、燃費不正の発覚で三菱自の株価が急落したところで電撃的に資本提携したことに、「ゴーン氏は三菱自を安くで買い叩き、その見返りとして益子氏が残留する約束をしていたのでは」と訝る意見もあった。

 益子氏は「責任の取り方はいろいろある。何が最善か考え続け、ゴーンさんにも相談した。そのなかでつらい思いをさせた従業員とその家族を守るため、会社を存続させて持続的な成長に最大限努力し、信頼を回復させることが問題にかかわってきた者の責任」と力なく答えた。ゴーン氏は「(日産グループ入りで)三菱自がアイデンティティを失うリスクがある。三菱自がその特徴と自主性を維持するのにもっとも適した人物は益子さんだ」と擁護した。

 それでも、その後も続く益子氏を退任させるべきと追及する株主に議長のゴーン氏は質問を途中で遮って、「質問はなんですか。それは(私に益子氏を辞めさせろと)指示しているのか」と述べるなど苛立ちを隠さなかった。

 トップ留任に後ろ暗いところがあったのか、益子氏は今回の定時株主総会で社長職をなくし、CEOのみとすることを表明。「アライアンスのなかで活動するのに(三菱自の)業務執行の最高責任者としてCEOのほうが現実的」(益子氏)と述べ、三菱自のトップに居座るのでなく、ルノー日産・三菱自アライアンスのなかでの一役職にすぎないことを強調した。

 益子氏の留任には多くの株主からの反発がありながらも、ゴーン氏は最終的に「議決権の結果で決まる」と資本の論理で押し切った。そもそも三菱自は今回の定時株主総会から日産のやり方を導入した。それは質問を希望する株主にはあらかじめ申請してもらい、くじ引きで質問者を決めるものだ。何人質問するかは議長であるゴーン氏の裁量で決められ、一定の時間が経過すると半ば強引に質問を打ち切るやり方だ。

●益子氏の茨の道

 こうしたやり方が通用するのも、日産が三菱自に34%出資しているほか、三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行の三菱グループ3社合計の出資比率が20.8%。日産と三菱グループで出資比率が54.8%と過半数を占めるからだ。経営陣が上程するすべての議案が承認されることは確実だ。それでも株主総会で他の議案の賛成は99%前後だったのに対して益子氏を含む取締役選任の議案の賛成率は83.4%にとどまった。

 資本の論理で三菱自トップの続投が決まった益子氏だが、ゴーン氏から課せられた宿題は重い。日産傘下に入った三菱自は今秋に中期経営計画を策定する。新車販売を19年度に17年度計画比25%増となる125万台、売上高営業利益率6%を掲げる。ゴーン氏はコミットメント(目標必達)経営を標榜しており、長年の友好関係にある益子氏も、これに関しては例外ではない。それは日産の業績が悪化して相次いで下方修正した際、ゴーン氏は自らの責任はさておき、最有力後継者だった志賀俊之氏(当時COO<最高執行責任者>)を更迭したことでもわかる。

 ゴーン氏は益子氏の続投について「来年、再来年の結果に基づいて判断してほしい」と述べ、株主に過去ではなく未来を見てほしいと訴えた。逆にいえば、三菱自の業績が計画を下回るようなことがあれば益子氏は切られる運命にある。

 自動車業界はグローバルで販売競争が激化しており、販売台数の増加と利益率アップの両立は難しい。ゴーン氏のバックアップによって三菱自トップの地位に恋々とする益子氏だが、茨の道は続きそうだ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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