性犯罪関連法、110年ぶりに厳罰化…発見困難な親子間のわいせつ行為等も厳罰化

性犯罪関連法、110年ぶりに厳罰化…発見困難な親子間のわいせつ行為等も厳罰化

「Thinkstock」より

 性犯罪を厳罰化するための改正刑法が6月16日に成立、7月13日から施行される。

 この改正法は、刑法制定以来110年ぶりに性犯罪処罰に係る諸規定を大きく改正するもの。これだけ多様化、複雑化する世の中にあって、1907年(明治40年)の刑法制定以来、性犯罪処罰規定の構成要件等は基本的に維持されてきたというから驚きだ。

 改正の主なポイントは以下のとおり。

(1)「強姦罪」の内容変更と「強制性交等罪」への罪名変更
(2)懲役刑の下限の引き上げ
(3)非親告罪化
(4)「監護者性交等罪」と「監護者わいせつ罪」を創設

 旧刑法第177条は、強姦罪の主体は原則として男性に限られ、強姦罪の対象となる行為は、女性に対するものに限られていた。改正法案は性別を問わず、「強制性交等罪」とした。

 また、暴行・脅迫がなく、飲酒や薬物の影響などで心神喪失・抗拒不能の状態にある者に対する行為も旧法の「準強姦罪」から「準強制性交等罪」に改められ、被害者の性別は問われないものとなった。旧法の強姦罪は「3年以上の有期懲役」、強姦等致死傷罪は「5年以上の有期懲役」だったが、強制性交等罪を「5年以上の有期懲役」、強制性交等致死傷罪を「6年以上の有期懲役」に引き上げた。

●非親告罪化

 今回の法改正で評価が高いのが、非親告罪化と監護者性交等罪だ。非親告罪化について警察関係者は、次のように評価する。

「多くの性犯罪が親告罪となっていたために、恐怖心や報復を恐れたり、心身に負ったダメージのため、告訴しないケースも多かった。今回の法改正により、告訴なしでも起訴できるし、被害者の親告が取り下げられても、犯罪が成立する限り起訴できるようになった。これは、犯人にとっては相当の脅威となるだろう」

 もう一方の監護者性交等罪は、18歳未満の者の監護者であることの影響力を利用したわいせつ行為及び性交等にかかわる罰則だ。親などの監護者がその影響力を使い、こうした行為に及んだ場合、暴行や脅迫がなくても処罰することができる。旧法では、たとえば親子間であれば、被害者(子)の意思に反して行われたものであっても、暴行または脅迫の事実が認められない場合には、強姦罪ではなく、量刑のより軽い児童福祉法違反等で処分されている例が多かった。これを厳しく処罰することを目途としている。

 監護者性交等罪について警察関係者は、こう語る。

「子どもの虐待と同様に、発見し起訴するのが非常に難しい。どうしても、親と子の関係は保護者がいなくなれば、子どもの生活が崩壊する可能性があるという、子どもの側に弱さがある。しかし、こうした卑劣な行為を取り締まる一助にはなるかもしれない」

 17歳の女性との飲酒や淫行が報じられ、所属事務所から無期限の芸能活動停止が発表された人気俳優の小出恵介のケースについて、同関係者は次のような見方を示す。

「相手女性が18歳未満であり、もし事件性を示すような行為、たとえば暴行に限らず、飲酒や薬物によって淫行が行われた証拠が出てくれば、改正法では事件化することも可能だ。そういった点も考慮して、所属事務所が先手を打って、無期限の芸能活動停止にしたのだろう」

●残る課題

 このように改正法は旧法に比べ、性犯罪を厳しく取り締まれるようになった。しかし、まだ問題は残っている。

 たとえば、親告がなくて立件できても、結局は公判を維持し犯人を処罰するためには、被害者の詳細な証言が必要になるであろうし、場合によっては法廷で証言する必要もあり、被害者の受ける苦痛・苦悩には旧法も改正法も変わりはないのではないか。

 また、監護者性交等罪は親子を基本として考えられているが、同様の力関係は18歳未満を選定としても、たとえば、教師と生徒、スポーツの指導者と選手、あるいは上司と部下などさまざまなケースが考えられる。より広範囲な規定が必要なのではないか。
 
 こうした点からは、まだまだ積み残された課題は多いものの、「性犯罪に関しては、110年ぶりに改正されただけでも大きな進歩。まずは、改正法をフル活用し、とにかく性犯罪の撲滅に取り組みたい」というのが警察関係者の意気込みだ。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

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