富士ゼロックス不正会計、問題は再び起こる可能性…複雑かつ根深い「リース会計」問題

富士ゼロックス不正会計、問題は再び起こる可能性…複雑かつ根深い「リース会計」問題

富士ゼロックス本社が所在する東京ミッドタウンWestビル(「Wikipedia」より)

 富士フイルムホールディングスの子会社である富士ゼロックスにおいて不正会計が発覚し、6月12日に第三者委員会報告書が公表された。問題になったのは、富士ゼロックスのニュージーランドとオーストラリアの子会社におけるリース取引だ。ゼロックス製のコピー機などをリースしている会社が多いことからもわかるように、リース取引は同社の根幹をなす取引といってよい。

 いったい何が問題だったのか。それを理解するには、リースの会計上の扱いを理解する必要がある。

●リースとレンタルは何が違う?

 よく聞かれるのが、「リースとレンタルは何が違うの?」という質問だ。

 この2つは、法的性質には違いはない。いずれも賃貸借取引、すわなち「貸し借り」だ。ところが、リースは会計的には必ずしも「貸し借り」として処理しない。ここに、リースとレンタルの大きな違いがある。

「貸し借り」として処理しないのは、借り手がそのリース物件をあたかも我が物のように使う場合だ。具体的には、リース期間がその物件の耐用年数にほぼ等しい場合や、リース料の総額がその物件の購入価額に匹敵するような場合だ。そのような場合は、その借り手がほぼ独占的に使用することになるので、あたかも我が物のように使っているということになるわけだ。

 このようなリース取引を「ファイナンス・リース」(米国では「キャピタル・リース」)という。この場合、借り手はリース会社から購入資金を借りて、自ら購入したとみなして会計処理する。すなわち、「資金調達(ファイナンス)+売買取引」とみなして処理するのだ。その結果、貸し手にはリース開始時点で売上高が全額計上され、リース物件は借り手の資産として計上される。

 ちなみに、「みなす」という言葉は、「実際はそうではないとしても、そういうことにする」という意味の言葉だ。法形式的にはあくまでも貸し借りであり、所有権も貸し手に残ったままだが、経済的実態が「我が物のように使っている」ならば、経済的実態に即した会計処理にするということだ。法形式よりも経済的実態を優先するのは会計全般にみられる特徴である。

 ファイナンス・リースに該当しないものは「オペレーティング・リース」という。これはレンタルそのものだ。会計的にもリース料は賃料の扱いであり、その授受があったときに貸し手・借り手はそれぞれ収益と費用に計上するだけである。

●すべてをファイナンス・リースとして処理したゼロックス

 第三者委員会報告書によると、今回問題になったリース取引は、富士ゼロックスのニュージーランド販社等が考案した、機器利用量に応じてリース料を変動させるリース商品だ。このリース商品の場合、顧客が短期間で解約することもあり得るので、必ずしも我が物のように使うとは限らない。

 ところが、富士ゼロックスのニュージーランドとオーストラリアの販社では、このリース商品のすべてをファイナンス・リースとして処理していたのだ。ファイナンス・リースとして処理すれば、オペレーティング・リースとして処理する場合よりも売上高は多額かつ早期に計上できる。

 さらに、「ターゲット・ボリューム」と呼ぶ、契約時のサービス利用想定量を過大に見積もるということも行っていた。実際、事後調査で7割のリース取引がターゲット・ボリューム未達だったことがわかっている。未達だった場合も、売上高の減額修正を行っていない。これによって、売上高の過大計上も行っていたのだ。

 ターゲット・ボリューム未達の場合に売上高の減額修正を行わなかったのは明らかにアウトであるが、当該リース商品がファイナンス・リースに該当するか否かについてはグレーな部分もある。

 実際、当該リース取引についてニュージーランド子会社は現地会計事務所から「条件を満たしていればファイナンス・リースとして取り扱うことは合理的」という見解を得ている。ただ、それは一般的な契約テンプレートに対して得た見解だったようだ。会計事務所が「条件を満たしていれば」と言っているように、ファイナンス・リースに該当するかどうかの判断は個々の契約に対して行われる必要があるが、それでその判断は必ずしも容易ではない。

●国際的にはリース区分撤廃の方向性

 どこまでいっても、どちらのリース取引に該当するかの判断には恣意性が伴う。「それならば、いっそのこと、2つのリース区分をやめてしまえ」という方向性に国際的にはなっている。

 IFRS(国際財務報告基準)が2019年1月から適用する新しいリース会計基準では、借り手側は原則としてリース取引を区分せず、統一的な会計処理にすることにしている。ただし、貸し手側の会計処理は従来通りなので、今回の富士ゼロックスの問題は依然として起こり得る。

 IFRSとの統合を目指す米国基準も、まったく同じ時期から同様のリース会計基準に変更する。

 日本基準は今のところ静観しているようだ。リース会計基準を変えればいいというものでもないが、世界のメジャーな潮流から外れた独自路線でいいのかという問題は残る。少なくとも、今や世界の大半を占める「IRFS+米国基準」ユーザーには理解されないだろう。

 以前から何かと問題のあるリース会計。国際的な会計基準の方向性も含めて、論点の多い分野である。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)

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