採用学生の8割が国立+早慶の企業も…知られざる評価基準と大学名選別の実態:人事座談会

採用学生の8割が国立+早慶の企業も…知られざる評価基準と大学名選別の実態:人事座談会

「Thinkstock」より

 2018年卒学生の採用は大企業がほぼ終了し、中堅・中小企業に移り始めている。さらに19年卒学生に対するインターンシップの受付も開始されている。

 18年大卒の民間企業就職希望者数は42.3万人。一人当たりの求職者に対してどれだけの求人数があるかを示す求人倍率は1.78倍と前年の1.74倍を若干超えるなど売り手市場が続いている(リクルートワークス研究所)。といっても、誰もが希望する企業に入れるわけではない。

 とくに大企業志望の学生は多いが、入れるのはごくわずかにすぎない。インターン選考など採用戦略が多様化するなか、企業は学歴を含めてどういう基準で学生を選別しているのか。IT系企業、建設関連業企業、食品企業3社の人事担当者に集まってもらい、今年の就職戦線の選考実態について話を聞いた。

●学歴フィルター

司会 企業はインターンや企業説明会の参加者を決める際に、偏差値上位校に絞るいわゆる“学歴フィルター”をかけているといわれます。実際はどうなのでしょうか。

建設 当社のインターンシップ参加の可否を決める選考では、基本的に面談で判断するので学歴フィルターはかけていませんが、同業他社では大学のブランド名ではじいているところもあるようです。ただし、男女比は調整しています。しかし、結果として応募者の母数としてMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)クラスが多く、日東駒専(日大、東洋、駒沢、専修)クラス以下の応募は少ないですね。

IT 企業説明会では会場のスペースの関係もあり、当社の採用実績校など一定の大学とそうでない大学に分けて開催しています。大学名で分けるのはある程度意味があると思う。早稲田、慶応など偏差値の高い大学にいるということは少なくとも受験プロセスとして受かるための学習をしているわけで、社会人になってもそれと同じことを再現できるだろうと見ています。言い方は悪いが、二流、三流校と言われる大学にいる人よりも勉強のやり方は知っている。だから学歴フィルターは優秀な人材を採るための確率論として有効だし、なくならないと思います。もちろん入口の目安であって、実際に採るかどうかはその後の選考で判断しますが。

食品 実際に内定を出した学生も偏差値上位校が多いですね。実は3年前に特定の大学に偏りすぎているのではないか、大学の多様性も必要じゃないかと上に言われ、学生に人気のある複数の大手企業が採用した大学を調べたことがあります。約8割が旧帝大や早慶、残りの2割が他の国立大とMARCHクラスが占めていました。

 その理由を聞くと、「たまたまです」とか「採れそうだと意図的に採りにいきます」と言っていましたが、「うちよりも多様性がないじゃないか」と思いましたよ。

●大企業志向

司会 18年卒大学生の求人倍率は1.78倍と高いですが、従業員5000人以上の企業では0.39倍と前年の0.59倍より低下しています。学生の大企業志向が強まっていますが当然、不合格になる学生も多くなります。

建設 肌感覚としても大企業志向が高まっていると感じます。私たちの世代を含めて以前は大学ヒエラルキーによって入れる企業が暗黙の了解で決まっているところがありました。「この大学ならこのクラスの企業だよね」と。でも、今の学生は明らかに入れない大学の学生でも大企業を目指しています。それに対して大学側も何も言わない。

 学生も堂々としたもので、「なぜ大学フィルターをかけるんですか」「どうして入れないですか」と平気で聞いてくる。企業側も「いい人であれば採ります、大学は関係ありません」と言っているものだから、「明らかに入れないよね」というのがなかなか浸透していきません。

IT 受けるのをやめたらと言えばいいのですが、そう言うと自尊心が傷つけられてしまう。であれば丁寧に説明することです。大学入試は偏差値によって受ける大学が大体決まり、そのなかでの実質的な倍率は大体3〜5倍です。東大、東工大を受験する人は日大を受けませんからそのぐらいになります。でも大企業に入りたいという人はエントリーシートを出した人を実数とすれば、内定を取る人は数百倍から1000倍の競争率になります。しかも偏差値の高いトップクラスの大学生が業界1位の企業を目指しているわけです。

食品 落ちる確率も高いし、そこに受かるのは奇跡に近い。そのことを大学側も学生に説明しないと過大な期待を抱いてしまうことになるし、学生もかわいそうです。

●選考方法

司会 採用面接では複数回に分けて学生を見極めるわけですが、各社各様のやり方があると思います。どういう方法で選んでいるのですか。

建設 一次面接は20代後半から30代前半の主任クラスの社員が15分間面接します。一応、会社の理念、チャレンジ精神、やりきる力、リーダーシップなどいくつかの評価指標を与え、○×△をつけてもらうようにしています。1つでも×があると2次面接には進めません。2次は課長クラスが同じやり方で面接します。

 ただ、社員はアセスメントの能力があるわけではないので、どうしても自分に近い考えを持っている学生が良い学生に見えてくるものです。自分に合わないと良くないというように好き嫌いで判断してしまう。個人的には面接という手法はそろそろ限界かなと思っています。そういう意味では、採用の中心がインターンに流れていくのは自然かなと思います。

食品 当社は「協調性・チームワーク力」を面接の指標に入れていますが、確かに協調性は面接ではわからない。5人か10人ぐらいで何かを一緒にやらせてみて、どういう動きをするかを見ないとわからないし、面接のやりとりで見極めるのは相当難しい。

IT 人間は必ず感情が入ります。どうしても相手の印象に左右されますし、間違えます。私なんか最たるもので、決して面接がうまいとはいえない。

 実は今実践しているのは、面接官に学生との会話の内容を文字に書き起こしてもらい、人事と役員が判断するという試みです。「学び続ける力」「経験に基づく思考ができるか」「当社で成長できるか」という3つの指標ごとに学生の答えと面接官がどう感じたのかを提出してもらう。口頭で聞くと、おそらく自分の感情が入り混じった曖昧な答えしか言わないが、客観的に文字化したものであれば、感情というノイズを極力排除できます。最終的に書かれたものを人事と役員でチェックしています。

食品 経験に基づく思考は当社も重視しています。履歴書を見ればどんなことをしてきたのか、どんな学問をしてきたかはわかります。面接ではなぜそれを選んだのか、履歴書の裏にある学生の思いや考えをひたすら聞きます。それが聞く人を感動させれば大丈夫です。あるいは何かに挑戦し、失敗した経験でも失敗した事実をしっかりと受け止め、新たに選択した結果を聞き出す。それが的を射ていると思えれば、この人は当社に入っても選択のチューニングができると評価しますね。

建設 ただし気をつけないといけないのは、今の学生さんは「こういう質問にはこう答えるように」と一種のマニュアル漬けになっています。大学のなかには外部講師を就活セミナーに呼んで志望動機やアピールの仕方など詳細な模範解答を暗記させているところもあります。

 だから私は基本的に学生が暗記している内容は聞かないようにしてマニュアル外しをする。たとえば最初に「○○さん、おはようございます。朝ご飯は何を召し上がりましたか」と聞く。学生が同じように丁寧な言い方で返してくれればOKです。だが「○○君、今日の朝飯何を食ったの」とフランクに聞いたときに、「今日は母親につくっていただいたご飯をたっぷり食べてまいりました」と答えると、この学生はマニュアル人間だなと判断する。つまり、商談などにはTPOがあり、相手に合わせて対応しなければうまくいきません。この学生は対応力が欠如していると見ますね。

IT それは言える。そういう学生はお客さんと会って、いきなり計画書を出して、工期はいつまで、価格はこうです、とやりかねないし、それでは商談も成立しない。営業センスというのは相手との間の取り方、コミュニケーションを通じた人間関係の構築が前提です。マニュアル仕込みの丁寧語、謙譲語はいったん置いて、この業界ではどういうビジネスをしているのかを考え、自分の言葉を使って売り込む、なおかつ自分という人間を理解してもらうにはどうすればよいかを考えて面接に臨んでほしいと思いますね。
(構成=溝上憲文/労働ジャーナリスト)

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