大戸屋、対立抗争の創業家に功労金2億円を贈呈…創業家は「足りない」と主張

大戸屋、対立抗争の創業家に功労金2億円を贈呈…創業家は「足りない」と主張

大戸屋の店舗(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 3月期決算企業の株主総会が一通り終わったが、今年は例年以上にいろいろな出来事があった。そのなかでも特に、創業家と経営陣の対立が話題になった。

●出光興産

 出光興産では、昭和シェル石油との合併に創業家が反対している。創業家側は出光昭介名誉会長をはじめ、一族・財団で出光興産の議決権の33.9%を握る。創業家代理人の鶴間洋平弁護士は6月5日、創業家側の総会対応方針を明らかにした。会社側が提示した12名の取締役候補のうち、5名の取締役の選任(社内取締役4名、社外取締役1名)に反対した。

 6月29日に開いた株主総会では、月岡隆社長らを再任する人事案が可決された。月岡社長の賛成率は61.1%で、前年の賛成率52.3%より高まった。創業家は、出光の石油を売る特約店や販売店の経営者たちの賛同を得ることができなかった。創業家が反対した月岡社長ら5人の賛成率は61%超で、ほかの取締役のそれは98%超だった。

 出光は7月3日、公募増資を実施し、1400億円を調達すると発表した。創業家は現在、出光株の3分1超を持ち、合併を阻止できる拒否権を持つ。経営陣は、発行済み株式総数の3割にあたる株式を新たに発行し、創業家の持ち株比率を20%台に引き下げることを狙う。公募増資が予定通り行われれば、創業家の保有比率は26%まで下がり、株主総会で合併を拒否できなくなる。

 創業家側は東京地方裁判所に新株の発行の差し止めを求める仮処分を申し立て、出光は「創業家の主張は誤り」と強く反論した。創業家は、高齢の昭介氏に代わり、合併反対の強硬派である昭介氏の妻・千恵子氏と、次男の正道氏が主導権を握っている。

●大戸屋ホールディングス

 定食チェーン「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングス(HD)は、2015年に亡くなった創業者・三森久実氏への功労金や、長男の智仁氏の処遇といった経営体制をめぐり、経営陣と創業家が対立を続けてきた。会社側は歩み寄りをみせ、株主総会で久実氏の遺族へ功労金2億円と弔慰金1000万円を贈呈する議案を提出した。

 久実氏の株式を相続した妻の三枝子氏が13.14%、長男の智仁氏が5.63%、合計2割弱の株式を保有している。6月28日に開催した株主総会では、取締役10名の再任を可決した。窪田健一社長に対する賛成率は64.31%で、ほかの取締役も64%超の賛成。創業家以外の株主からも反対があった。

 功労金2億円と弔慰金1000万円の贈呈の議案は、それぞれ62.20%、63.20%の賛成で可決した。創業家は白票を投じた。

 役員や従業員などにストックオプションを付与する議案は否決された。3分の2以上の賛成が必要な特別決議で、創業家が反対したため賛成は63.14%にとどまり3分の2にとどかなかった。ストックオプションの付与で創業家は持ち株が希薄化することを懸念して、反対に回ったとされる。

 創業家は総会後、メディアの取材に、功労金贈呈の議案に白票を投じた理由を、こう説明した。

「相続税を支払うため、相続した株式を担保に銀行から融資を受けている。2億円の功労金では足りない」

 そのため、創業家が保有している株式を売却すると表明したが、問題はどこに売却するかだ。大戸屋のお家騒動は、M&A(合併・買収)に発展する可能性が出てきた。

●東芝

 経営危機の渦中にある東芝は6月28日、株主総会を開いた。監査法人との対立で、17年3月期決算が発表できない異常事態が続くなかでの株主総会だった。東芝株の東京証券取引所2部への降格決定など迷走が続き、株主から批判が続出した。

 会社側は、秋ごろに開く臨時株主総会までを任期として綱川智社長ら取締役9人の再任を求めた。綱川社長の賛成率は89.00%で、前年の87.06%より上昇したが、9割に届かず9人のなかで最も低かった。他方、綱川社長以外の8人の賛成率は前年より平均で7ポイント程度下がり90%前後にとどまった。

●タカタ

 民事再生法を申請したタカタは、6月27日に株主総会を開いた。タカタ株は経営破綻を受け7月27日付で上場廃止になるため、上場企業として最後の株主総会となった。株主からは「なぜ法的整理を回避できなかったのか」など、批判の声が相次いだ。

 取締役6人全員の再任を求める議案は賛成多数で承認された。高田重久会長兼社長に対する賛成率は83.78%で、6人のなかで最も低かった。筆頭株主である資産管理会社をはじめ、創業家一族で6割近い株式を保有している同族企業であり、再任案が否決されることはないという事情が働いている。

 倒産によって、タカタはすべての事業を1750億円で中国企業傘下の米自動車部品大手キー・セイフティー・システムズ(KSS)に売却することになった。高田会長はKSSへの事業譲渡が完了する来年3月末までに辞任するとしている。これで、創業家による同族支配は終わる。

●ソレキア

 電子部品商社のソレキアは、富士通によるTOB(株式公開買い付け)が不成立に終わった後、押し出し機を製造するフリージア・マクロスの佐々木ベジ会長が筆頭株主となった。そのソレキアの株主総会は6月29日に開催された。取締役9名の選任の議案は賛成多数で可決した。創業家出身の小林義和社長の93.33%をはじめ、ほかの取締役も93%超の賛成を得た。

 終了後、佐々木氏は「これからはROE(自己資本利益率)の改善などで応援していく」とのコメントを出した。

 佐々木氏は6月30日までにフリージア・マクロスにソレキア株の一部を売却した。これによりフリージア・マクロスのソレキア株保有比率は23%超となり、ソレキアは持分法適用会社となった。

 創立以来、取引がある富士通が今後もソレキアと取引を継続するかが焦点となる。佐々木氏の軍門に下ったソレキアでは、創業家である小林家による同族経営が終わりを告げた。
(文=編集部)

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