消費税収19兆のうち6兆が大企業に還付…消費税と法人税を「払わない」大企業、優遇の実態

消費税収19兆のうち6兆が大企業に還付…消費税と法人税を「払わない」大企業、優遇の実態

>今年2月、対トランプ協議で安倍首相と会談したトヨタ自動車・豊田章男社長(ロイター/アフロ)

●大企業とマスメディアはなぜ「消費税率アップ」に反対しない?

 2014年4月に消費税率は5%から8%に引き上げられました。15年10月にはさらに10%へ引き上げ予定でしたが、17年4月へと延期し、さらに昨年には19年10月まで2年半延期すると安倍晋三首相は表明しました。

 世界経済の不透明感が増していることなどが理由でしたが、いまだにデフレから脱却できないアベノミクスの大失敗が、景気の腰折れで決定的になることを避けたかったからにほかならないでしょう。なにしろ消費税率アップは、小売業をはじめ一般消費者への影響は甚大だからです。

 政府・財務省は、将来の社会保障の財源を確保するうえで、所得税や法人税の増税は適切ではなく、負担の公平性からも消費税率を引き上げることこそがベストと強調してきました。そして、財界や大手マスコミも消費税増税はやむなしのポーズを決め込んできました。

 輸出大企業中心の財界にとっては、消費増税は大きなメリットがあるから当然でしょう。つまり、非常に不公平なカラクリによって、莫大な権益を享受しているのが輸出大企業だからです。

 また、大手マスコミも消費増税でうかつに政府に楯突くことはできません。これまで政府から戦後に国有地を格安で払い下げてもらい、テレビ局放送免許を独占的に付与され、激安の電波料で儲けさせてもらっているからです。さらに経費で飲み食いしても「取材上の交際費は非課税」と処理しているので、下手に消費増税に反対して業界の談合体質を突つかれたり、財務省から経費水増しの常習ぶりを税務調査で暴かれると大変だからです。過去にもマスコミの申告漏れや所得隠しの脱税は多数あったので、再び追及されることは避けたいところでしょう。

 財界と大手マスコミは、もともと広告宣伝関係でがっちりつながっています。特権階級同士は、「阿吽の呼吸」で政府と一枚岩になるゆえんなのです。

●輸出が主力の大企業は消費税を払っていない?

 これまで日本では、「欧米と比べ消費税率が低いから上げる」という論理が支配的でした。しかし、欧米では食料品など生活必需品が非課税になるなど、所得の低い人には負担のしわ寄せがいかないような工夫があります。日本では、何から何まで一網打尽に消費税を徴収しますから、現行の8%でも生活者の実質的負担は欧米以上に高いのです。逆進性が高く、所得再分配機能も働かない租税立法上の「応能負担原則」にも反します。所得が低く貧しい人ほど、日常生活は苦しくなるわけです。

 しかも、輸出で稼ぐ大企業には輸出還付金制度という特典があります。これは、海外販売分では消費税が発生しないことを理由に、仕入れの際に支払った消費税分を「輸出戻し税」というかたちで還付される制度です。これにより、部品材の仕入れの際に子会社や下請けに「買い叩き」をしても、国から還付金を得ることができます。

 消費税が5%だった時にも、例年3兆円強が大企業に還付されたため、消費税収の毎年10兆円が国庫に入る時には、7兆円弱になっていました。一方、下請けの中小企業は大企業向けでは納品価格に消費税分を載せられずカットされるため、納品価格の内税分の消費税を払うことになります。消費税は赤字でも払わなければならないため、中小企業は青息吐息です。

 消費税率5%だった2010年度の大企業の推定還付金は以下の通りです。

・トヨタ自動車:2200億円強
・ソニー:1100億強
・日産:1000億円弱
・東芝、キャノン、ホンダ:700億円台
・パナソニック、マツダ:600億円台
・三菱自動車工業:500億円台
・新日鉄:300億円台

 そして消費税率が8%の15年度には、トヨタが3633億円、日産が1546億円などで、消費税収19兆円のうち還付金額は6兆円に膨らんでいます。消費税収19兆円でも、国庫の実収はたったの13兆円なのです。消費税率がアップするほど、輸出大企業は払ってもいない消費税の還付で儲かります。まるで輸出奨励金なので、そのうち米国トランプ政権も目をつけてくるでしょう。

 そして大企業にとって税金でトクをする状況は、消費税だけに限った話ではありません。法人税もろくに払っていないのが実態なのです。

●大企業の法人税実効税率は高くない

 大企業もマスコミも「日本の法人税実効税率は高い」と唱え、安倍首相も16年度に30%を切る29.97%にして、2018年度には29.74%にするとしていますが、大企業の多くはこの実効税率をまともに払っていません。なぜなら、企業にはさまざまな減税措置があるからです。

 国税庁が公表した13年度の「資本金階級別の法人税(国税)の状況」によれば、実質的な法人税率は以下のようになっています。

・全企業平均:15.66%
・資本金1000万円以下の単体法人:13.6%
・資本金1000万円超1億円以下の単体法人:17.6%
・資本金1億円超10億円以下の単体法人:22.3%
・資本金10億円超の単体法人及び連結法人:14.6%
(うち資本金100億円超の単体及び連結法人:13.6%)

 資本金100億円超の大企業と資本金1000万円以下の零細企業が、たったの13.6%という同じ税率なのです。これに地方税7.38%を加えても、法人税・実効税率は20.98%にしかなりません。これは13年度の実績として国税庁が公表したものですが、実際には16年度から法人税の実効税率は表向き29.97%と、13年度(34.62%)と比べ4.6%も下がっていますから、16年度なら資本金10億円以上の大企業は、実質的な法人税負担率は10%さえも切っている可能性があります。

●世界の中で日本の法人税実効税率は低水準

 世界の法人税実効税率は、表向きは以下のような順番になっていますが、少なくとも日本の場合は、実際の税負担はさらに10%前後は低いと言えるのです。

 米国38.91%、フランス34.43%、ベルギー33.99%、ドイツ30.18%、オーストラリア30%、メキシコ30%、日本29.97%、ポルトガル29.5%、イタリア27.81%、オランダ25%、韓国24.2%、アイスランド20%、トルコ20%、イギリス19%、チェコ19%、ポーランド19%、ラトビア15%、アイルランド12・5%

 日本の29.97%から10%前後を差し引くと、実質的な負担率は法人税が低いといわれるイギリス、チェコ、ポーランド並みとなります。消費税引き上げ分の負担を家計に押し付け、大企業には消費税に加えて法人税も大まけして、与党は大企業から政治献金の見返りをもらうという構図なのです。

 こうした大企業に与えられている法人税の軽減特典は、ざっと挙げれば「連結納税制度による所得金額の減少措置」「受け取り配当金の所得不算入」「外国子会社配当金の所得不算入」「所得税額控除」「外国税額控除」「試験研究費税額控除」などがあります。大企業ほど特典が多数あります。そして大企業は正社員を減らして非正規雇用を激増させ、人件費を削って内部留保(利益剰余金)も膨らむ一方です。

「日本の法人税の実効税率は高い」という嘘を垂れ流してきたマスコミや大企業、政府与党の罪は重いのです。法人税率は、これ以上下げる必要はありません。そして、大企業経営者などの金持ち優遇策で引き下げてきた累進所得税率を上げ、とっとと消費税は廃止すべきです。
(文=神樹兵輔/マネーコンサルタント)

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