『過保護のカホコ』、日本に蔓延の「過保護」をえぐるホラー感…目を覆いたい家族の問題

『過保護のカホコ』、日本に蔓延の「過保護」をえぐるホラー感…目を覆いたい家族の問題

『過保護のカホコ』公式サイトより

 今クール(7〜9月期)の連続テレビドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)の第1話が12日、放送された。

 主人公の根本加穂子(高畑充希)は現在21歳(劇中で22歳の誕生日を迎える)の大学4年生だが、生まれてから母・泉(黒木瞳)と父・正高(時任三郎)の“過保護”の下で育てられたため、泉がいなければ一人で何もできない。そのため、就職活動も全敗中で、正高のコネを頼りに受けた会社すら落ちてしまう。そんな加穂子を見た泉は、就職活動をやめてこれからは花嫁修業に専念するよう加穂子を説得するが、加穂子は大学の同級生・麦野初(竹内涼真)に騙されて、ティッシュ配りとピザ配達のアルバイトをさせられ、生まれて始めて「働く」という経験をする。そこで加穂子は働くことの素晴らしさを体感し、泉と正高に向かって、人を幸せにするために働くことを宣言する――、というところまでが放送された。

 第1話を見て、過保護ぶりがリアルすぎて身の毛がよだつほど恐ろしいというのが、まず抱いた感想だ。加穂子は毎日最寄りの駅まで泉に車で送り迎えをしてもらい、大学生になってもお昼は泉のつくった弁当を食べ、これまで撮影した膨大な可穂子の記録DVDのなかからチョイスしたものを毎晩親子で見て、誰と話していても会話の節々に「お母さん」というフレーズが登場し、20歳を過ぎてもデコレーションを施した自宅で家族で誕生日パーティーを開き、その様子を正高がビデオで撮影し、加穂子の帰りが少しでも遅いと泉はパニックになり手当たり次第に電話をかけたり……。ここまでくると、まさにホラーだ。

 ホラーという意味では、泉も正高も加穂子も、「このままではマズイ」「加穂子には、なんの取り柄もない」ということに薄々気が付いていつつも、それをみんなが隠しながら生活を送っているというのも、痛々しく戦慄が走る思いがする。と同時に、問題に目を逸らしつつ過保護にすがるこの親子を見ていると、無性にイライラするのも事実だ。

 そして、「これからの加穂子の人生は、いったいどうなってしまうのだろう……」と思いを馳せると、冗談抜きで恐ろしくなってくる。以前、インターネットか雑誌か何かで、大学卒業後に仕事に就かず花嫁修業を始めたものの、結局独身のまま40代に突入し、働いた経験もないまま人生が八方塞がりになってしまった女性を紹介する記事を読んだことがあるが、まさにその時に感じた“得体の知れない恐怖感”が、このドラマを見ながら胸に再来した。

●良作の予感

 しかし、である。ここまで極端ではないにせよ、私の周囲でも、これに近いような親子や、(男性女性に限らず)加穂子のような人って、結構いるよな、とも思った。たとえば職場でも、若い社員などで「あれ、コイツって、もしかして過保護ちゃん?」と思われている人が1人や2人いることは、まあまあある。もちろん実際に他人の家庭の内情なんて外からはわからないけれど、親の人から話を聞いたり見たりしていると、「ちょっと過保護じゃないか……」と感じることも私自身しばしばある。

 そういえば、以前働いていた会社で、忙しい時期に若い女性社員の帰宅が遅い日が3〜4日続いたとき(遅いといっても、夜9時とかそれくらいだし、その社員はいわゆる総合職だったのだが)、なんとその女性社員の親から職場に電話がかかってきて、上司が烈火の如くクレームを言われてシドロモドロになるという“事件”に居合わせたことがあるが、可穂子を見ていて、ふと思い出してしまった。ちなみに、その時の職場に流れた異様な空気は、今でも忘れられない。

 また、以前カウンセラーのような仕事をしている人から聞いた話だが、最近は一人っ子など、家庭における子どもの数が減ってきているので、無意識のうちに過保護なってしまっている親が多いという。その影響からか、若い夫婦が喧嘩になる際に、「僕のお母さんは、そんなことは言わなかった」「私のお父さんは、こうしてくれた」などという言い合いになることも多いという。
 
 で、ドラマから話が逸れてしまったが、何が言いたいのかといえば、このドラマ、もちろん誇張はあるものの、今の日本が抱えている、目を逸したくなる家族、いや社会の問題を、かなりえぐり出しているのではないか、ということだ。それだけに、ドラマを見ながら「あっ、ウチの家族もヤバいかも……」と胸がザワザワした視聴者もいるのではないか。

 しかし加穂子は、幸運にもギリギリで自身の境遇に気が付き、そして「働くこと」を決心することができた。第2話以降では、加穂子が、そして泉と正高が「自立」に向かって悪戦苦闘する物語が軸となって進められることが予想される。第1話で加穂子が繰り返し発した「人はなんのために働くのか?」という問い、そして「仕事とは何か?」「家族とは何か?」「人生における幸せとは何か?」を視聴者も考えさせられるような、良作になってくれることが期待できそうだ。

 最後に、もう一つの見どころとしては、やはり高畑の巧みな演技だろう。泉や正高、麦野に見せる、あどけなくかわいい笑顔、突然必死に何かを訴える迫真の表情、そして困った時のなんともいえない困惑顔など、縦横無尽に繰り出す高畑の演技は、“さすが”といえる(相変わらず美貌を保っている黒木瞳も、やっぱりいい感じだね。時任三郎の演技はちょっとウザったいけれど)。

 いずれにせよ今後、話題性、視聴率ともに期待が持てそうなドラマといえよう。
(文=米倉奈津子/ライター)

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