採用・就職活動の現場ですべきアピールとは? 採用代行企業のプロに聞いてみた

採用・就職活動の現場ですべきアピールとは? 採用代行企業のプロに聞いてみた

「Thinkstock」より

 6月1日に企業の選考が解禁となり、幕を開けた2018年卒採用――といいつつ、大企業の中には採用選考に直結するインターンシップ(就業体験)を実施する企業が増加。選考開始前に学生に内定を出すなど、開幕と同時に採用活動を閉幕した企業も多く、就職情報サイト「マイナビ」が発表した就職内々定率は6月15日の時点で67.7%という高水準となっている。

 採用と直結するインターンの存在を疑問視する声は多く、今後の動向が気になるところだが、インターン実施を選ぶ企業が増えるばかりで、早くも19年卒の採用・就職活動に動きだした企業もあるようだ。

 一方で、中小企業やBtoB企業など一般的な知名度は高くない企業を中心に、採用・就職活動はこれからが本番という企業も多い。
 採用・就職活動の現場で、人事のプロたちは学生たちのどんなところを見ているのか。採用アウトソーシング(採用代行)企業社員で、新卒から中途、大企業や外資系企業から中小企業まで、さまざまな企業から委託され採用業務に携わってきたというA氏(仮名/キャリア20年程度)に、概況を聞いてみた。

――まず、採用アウトソーシングを受託する側というのは、普段はどんな形で業務を行っているのですか?

A 採用人事を委託されて業務として行うといっても、多様な形があるんです。それこそ面接官のひとりとして面接に最初から最後までガッチリ携わるときもあれば、バックヤード、応募書類の整理・分類だけというときもあります。ただ、新卒採用で我々のような外部の人間に、採用活動を丸ごと委託されるケースは少なく、企業の人事と協業する形が多いですね。

 新卒採用では「こういう考え方をする人なら、うちの社風に向いているかも」というポテンシャルを重視しますので、その企業の人でないと推し量れない部分がありますから。

――なるほど。それでは就職活動についてお尋ねしようと思いますが、ちなみに学生向けのビジネスマナーの教本やサイトがよくありますよね。結構売れていたりするみたいですが、採用する側はそういったところを見るものですか?

A 一応は見る、という程度の企業が多いですかね。でもそれは教本どおりしっかりできているかをチェックするわけではなく、相手に不快感を与えるか否か、という見かたです。社風によりますが、固い会社だとワイシャツは白しか認めないという企業もある一方で、柔らかい企業だと面接官が短パン姿だったりしますし。どこまでがんばればいいかというのは曖昧ですが、リクルートスーツを着ておけば無難でしょうね。

 また職種によって……たとえば営業職などでは清潔感を重視します。汗くさくないか、シャツはよれていないか、靴は汚れていないか。また外資系企業さんであれば、我々などには正直に「容姿も見る」と仰いますね。もちろん美男美女枠があるというわけではなく、「能力的に甲乙つけがたい場合は、容姿が優れたほうを選ぶ」というレベルではありますが。

――勉強したが本番では緊張で手順を間違えてしまった、というのはあまり減点対象にはならない?

A よほどでなければご愛嬌と受け止めます。なかには緊張しすぎて、泣きだしてしまう方もいますからね。面接中に言葉が詰まってパニックになってしまったり。大抵の人は緊張するものですから、大きなマイナスになることは少ないと思います。泣きだしてしまうぐらいパニックになってしまったり、4次、5次と面接が進んでも緊張しっぱなしであったりすると、力を発揮できないタイプなのかと評価につながる可能性もありますけどね。


●インターンよりもすごい逆指名制度、“交流会”の存在

――インターンという単語がすっかり定着しましたが、一般的な学生の就職活動は、各企業が行う説明会や大きな会場で行われる合同説明会から始まるわけですよね?

A そうですね。ただ、これも企業によって考え方が違うんです。合同説明会では人気企業、名前を知られているBtoC企業に、大学1〜2年生ぐらいだと集まってしまうんです。CMをよく見るとか、普段使っている商品を作っているといった企業に。

 そうすると1対数十、下手したら数百人を相手にしなくてはいけませんから、どうしても通り一辺倒な講演をして終わりになってしまうケースもあります。一方で、実は世界的に見てもシェアはすごいが、BtoB企業で一般的な知名度は低い企業や外食産業などだと、1対1でしっかり話すことができて、説明会やインターンといった次の機会につなげやすかったりしますし。そういった場に対する企業側の気合、臨み方には結構差がありますよ。

――理系、特に専門性の問われる学部であれば、BtoB企業もしっかり勉強しているのではないですか?

A そういった学部の学生だと、企業と教授、研究室とがしっかり結びついていて、毎年●名、研究室から大学院生が行くと事前に決まっていたりしますから、合同説明会などにはあまり出向きません。一応我々も面接したりしますけど、もう採用することは決まっている。もはやドラフト逆指名状態(笑)。

 加えて、各企業が欲しがるような人材を輩出するような上位校や研究室には、通常の就職課とは別に各企業が横並びで学生たちの就職を支援するような「●●会」みたいな組織があったりするんです。有志が資金を集めて、講演会をやったり、そういう場で学生と企業の人が触れ合う機会を作ったりという支援活動を行うような。

――各企業に散ったOBが、後輩のために作る組織ですね?

A そうです、旧帝大、一部の上位私立大などにはありますね。意外と国立大学に多い印象です。人気がある企業はそういった、公式サイトを見てもわからないところで、人材を確保しているケースも多いように思います。

――中堅私大文系卒という人間は、どうすればそういった場に入れたのでしょうか?

A いや、これは学力、偏差値を見る企業さんがある限り、個人でがんばってもある程度はどうしようもないのではないでしょうか。知力=学力ではないですけど、やはりある程度の物差しになると考える方も多いですし、先ほども触れた理系の上位の学生たちなどの場合は、研究室に入って鍛えられていますから。研究していた専門性を生かせなくとも、地頭の良さや研究を行うという経験を企業が見込むからこその逆指名が成立するんです。


●面接官は学生の話を聞きたいわけではない

――一般的な就職活動に話を戻すと、どういった手順を踏むものでしょうか。

A エントリーシートなどの書類選考があって、企業によってはSPIなどの試験があって、面接があって。提出書類やSPIは、訓練次第である程度のレベルまでたどり着くことができます。だからネックというか、重要なのは面接ですよね。

――やはりそうなるんですね。つかぬことを聞きますが、自己PRなどでは、やはりバイトリーダーとサークルの部長を名乗る学生さんは多いですか?

A 多いです、本当に多い。面接のマニュアルを勉強してきている、準備をちゃんとしているということでマイナスにはなりませんが、特にポイントにもなりません。もちろん、インカレや大きな展示会といった場で実績を残すような部に所属していたなどの経歴があれば別ですが。

 ですから最近は「OP(オープン)クエスチョン」、決まった回答しか帰ってこないであろう質問はしないという企業が増えました。志望動機は何ですか? 学生の間に一番打ち込んだことはなんですか? といった、就活本に模範例があるような回答を集めても、企業としては選別しきれませんから。個人個人の志向性や論理性を推し量れるような質問を、面接官が投げかけるようになってきていますね。

――難関校の受験は、暗記すれば解ける問題ではなく、応用が必要な本当の学力を測る問題が多いというお話と似ていますね。

A 本質は同じだと思います。さらにその延長線にあたるのが、インターンシップで1週間ぐらいかけてグループワークをやるという場だったりするわけです。そこまでやるとどうしたって化けの皮がはがれていきますから。そういう場でしっかり見極めたいという企業が最近は増えています。

――それは採用する側も手間暇かかりますね。1人採用するのに、高額なところでどれぐらいの経費をかけるものなんですか?

A 自分がかかわった範囲でいえば、最高で200〜300万円ぐらいでしょうか。それでも中途採用で人材を採ることを考えれば安上がりなんです。それなりの人材を中途で採ろうと思えば、エージェントを挟むことが増えますが、すると成功報酬として年収の何十%かを支払わねばなりません。時間がかかりはしますが、新卒を選びに選んで、鍛えたほうがいい、という考えかたをする企業が多いです。

――やはり学生は、面接をがんばるしかないと。ちなみに最近の面接では、どんな傾向や流行があると感じられますか?

A 面接の場でおもしろい経験をしてきました、というアピールも多いですね、それこそ世界一周してきましたとか。でも1年で何百という学生に会う我々からすれば、そういったエピソードもそれほど珍しくないですし、アピールにもなりません。

 一方で、私が会った学生さんの中で、サークルもバイトもせず、ただひたすら勉強していたという哲学科卒の方がいまして。学んできた哲学も直接は仕事に役に立たないと思うが、深く思考すること、物事の捉え方、アプローチの仕方、そして何かしらを人に伝える能力は身につけられたと思います、といった自己アピールをされたことがありました。自分が学んできたことと企業との架け橋をちゃんと考えてきていて、しかも論理性が高い。インパクトがありましたね。

 よくある「学生時代にどんなことをやってきましたか?」という質問は、本当に何をやっていたかを聞くだけではなく、「やってきたことが、どう会社で役にたつのか?」を聞きたいわけです。哲学科の彼はそこをちゃんと考えてきた、客観視できていたから印象に残ったし、評価も高くつけさせてもらいました。

――ごく普通の経験しかしてこなかった学生でも、うまく企業のメリットにつなげられるアピールさえできれば問題ないわけですね。

A そうです。ですからグループ面接で同席した人と、エピソードが多少重なっても全然いいんですよ。どうしても学生の方は同じ話をしてもつまらないと思われるんじゃないかと心配しがちですし、実際こっちも「同じことを言っているな」とは思っています、正直。

 でも、我々が注目するのは、話している内容そのものではなく、どうやって話すのかという態度であったり、どう話を組み立てるのかという論理性です。何百人もと会いますからトータル的なことをいえば、どんなに珍しいと思えるエピソードでも大抵は重なっているものです。そこで萎縮してほしくないですね。

――自分の学生生活が地味だからと、話を盛ったりは絶対しないほうがいいですね(笑)。

A それはいつか必ずばれるし、無理が出るでしょうね(笑)。アドバイスさせてもらえるなら、どんなに地頭が良くて、面接に手応えがあっても、相性と運次第では落ちてしまうこともあり得ますので、落ちることを当たり前というぐらいの感覚でいてほしいですし、そうでないと辛くなる一方だと思います。


●どんなに優秀でも落ちるときは落ちる。面接は時に運

――面接の上手い下手が数値化できたとして、全国で1位をとれる学生でも落ちるときは落ちる?

A 落ちます落ちます。人と人とが会って話すわけですから、多少失敗しても「こいつはバカだけどうち向けの性格をしている」なんて好印象を持ったり、しっかりと受け答えができても「そつがなさ過ぎてつまらない」と感じてしまったりと、面接官との相性の良し悪しはどうしても発生します。

 同じ企業でも人によって重要視するポイントも微妙に違ってしまいますし、ちょっと自分と似たところがある人物に親近感、好印象を持ってしまうことはどうしたって防げません。本当は同じ企業内でブレがあるのはマズイし、一生懸命クロスチェックもしますけど。

――面接官だって人間ですからね。

A そうですね。半分は運ぐらいに考えていたほうが、気が楽になると思います。たとえば同じような自己アピールがたまたま5人連続で続いてしまった。個々に見れば本当は5人目のアピールが一番よかったのに、疲れや慣れのせいで、その違いを見過ごしてしまったといったケースはやはり起きてしまいます。それは我々としては申し訳ないんですけど。

 ですから、青田買いだと批判を受けがちですけど、インターンは総合的なジャッジを下しやすいという意味で有益ではあるんです。問題があるとしたら、6月1日以前に決まってしまうというところですが、それだって経団連に入っていなければ関係ありませんからね。

――しかし、採用現場も大変ですね。

A いや、大変なのは現場だけではないんです、社内の調整もすごく大変ですよ。同じ企業でも、営業部に欲しい人材と事務方に欲しい人材とでは、タイプが違ってきますよね? いろんなことをできる人材を何割ぐらいとるのか、専門職を任せられる人は何割ぐらい割り当てられるのか。その調整が企業によってはなかなかできなかったりするんですよ……。

――現場も学生も、上層部も大変だと。では最後に、就活中の方へアドバイスなどいただけますか?

A ここ数年で何度か、就職活動の解禁日が変わっていますよね。我々も大変ですが、ゼミやサークルの先輩はこの時期から動いていたなという経験が、あまり生きないので注意してほしいなと。個人的にはインターンも含めて、大学1〜2年の頃から動きださなくてはいけないというのはせわしなくてかわいそうだなと思ったりもしますが、企業も有能な人材を確保するのに必死ですし。

 また、学生は有名企業に集中しがちなんですけど、そういった企業を志望する動機をざっくばらんに聞くと「有名だから」とか「大企業だから安定していると思って」みたいなケースが多い。でもしっかり探せばもっと安定しているBtoBの企業があったりしますし、最近は新卒向けのエージェントのサービスもあります。いろいろなサービスやシステムをしっかり活用することも大事だと思います。
(取材・構成=編集部)

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