中国の人権活動家死去、日本政府が示す意図的な「無関心」…習近平の民主化弾圧強化を黙認

中国の人権活動家死去、日本政府が示す意図的な「無関心」…習近平の民主化弾圧強化を黙認

がんで治療の劉暁波氏(Chinese hospital/Newscom/アフロ)

 ノーベル平和賞受賞者で、中国の著名な政治囚、劉暁波氏が13日、死去したことがわかった。すでに6月中旬には当局により「末期がん」と発表されていたが、あまりも急な死去だけに、劉氏の獄中での扱いや治療態勢など、中国当局の対応には西側各国から批判が集中している。

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 その一方で、劉氏が入院していた病院がある中国遼寧省瀋陽市は成田空港から飛行機でわずか2時間ほどと極めて近いにもかかわらず、日本政府は医師団の派遣すら提案しておらず、中国の民主化実現には無関心で、冷淡といわざるを得ない。

 筆者は7月3日まで、香港の中国返還20周年記念式典を取材するために香港に滞在。1日の中国への抗議集会やデモで、市民らが中国の民主化進展を要求して劉氏の大きな写真を掲げて行進していただけに、すでに中国による政治的な圧力が日に日に強まっている香港の人々にとって、劉氏への対応は香港の未来を暗示させる否定的なニュースに映ったに違いない。

 これは中国大陸内部でも同様だ。習近平国家主席が2012年11月に最高指導者に就任して以来、中国はますます保守化し、共産党一党独裁体制を強めつつあり、多くの民主化指導者や人権活動家が逮捕、投獄されているからだ。

 しかも、一般市民は1989年の天安門事件以降の民主化弾圧を目の当たりにしており、かつての中国における民主化運動の再来はまだまだ極めて可能性が低いといわざるを得ない。

 欧米各国のなかでも、米国政府は13日に声明を発表し「トランプ米大統領はノーベル平和賞受賞者で、中国の著名な政治囚、劉暁波氏の死去を知って深く悲しんでいる」と表明した。しかし、当のトランプ氏はパリで行った米仏首脳会談後の共同記者会見で、記者から中国について質問され、習氏を「偉大な指導者でとても才能があり、善人だ」と持ち上げたものの、劉氏の死去には触れず、中国の民主化には無関心であることを示唆した。

 米国政府はこれまでも「民主主義国家の代表」であることを標榜してきた。一例を挙げると、歴代大統領はチベット仏教の最高指導者で、やはり劉氏と同じく中国問題に関連してノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマ14世と会見し、中国政府によるチベットの弾圧に強いに懸念を表明してきた。

 ところが、チベット関係筋が明らかにしたところによると、トランプ氏はダライ・ラマが5月に訪米した際、希望した会見を拒否したという。トランプ氏はここでも、歴代大統領とは際立った違いを見せている。

●対中弱腰外交

 日本も米国の対応と五十歩百歩だ。岸田文雄外相も14日午前の記者会見で、劉氏について「劉氏は自由と民主の追求に人生をささげられた」と述べ、哀悼の意を示したうえで、「自由、基本的人権の尊重、法の支配は国際社会における普遍的価値であり、これらが中国でも保障されることが重要だ。高い関心を持って中国の人権状況を注視していきたい」と強調した。

 しかし、その言葉とは裏腹に、日本政府は中国の人権に触れることには及び腰であるようだ。なぜならば、劉氏が末期がんであることがわかると、ドイツと米国の医師団が中国当局に治療のための中国訪問を要求したが、日本は医師団の派遣を表明していない。日本こそが最初に手を挙げるべきではなかったと感じる。

 中国は海外から国内の敏感問題について指摘されると「内政不干渉」を主張するのが常であり、その対応はときには外交に跳ね返ってくる。

 日中両国は2012年の沖縄県尖閣諸島の国有化問題に端を発した関係悪化を今も引きずっており、中国の民主化という微妙な問題に首を突っ込まないほうがよいというのが日本側の判断なのだろうが、このような及び腰の姿勢が「対中弱腰外交」と呼ばれる所以なのではないか。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

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