金子恵美、鈴木貴子議員批判などへの違和感…それは本当に「特権」なのか?過剰な反発が自分の首を絞める

金子恵美、鈴木貴子議員批判などへの違和感…それは本当に「特権」なのか?過剰な反発が自分の首を絞める

「鈴木貴子オフィシャルブログ」より

 鈴木貴子衆議院議員が自らのブログで妊娠を公表したところ、祝福や激励のメッセージに混じって、苦情や非難も届いているという。曰く「だから女性議員っていうのは……」「任期中の妊娠はいかがなものか」「一旦、辞職すべきだ」「職務放棄ではないか」といった内容だ。

 またか、と思う。

●議論を呼んだ「公用車での保育園送迎」

 日本で少子化に歯止めがかからず、男女共同参画社会がなかなか実現せず、さまざまな職場で女性が働き続けることが難しいのは、妊娠した女性が、こうしたマタニティ・ハラスメントにさらされる風土が最大の原因ではないのか。

 妊娠・出産だけではない。

 つい最近、金子恵美・総務大臣政務官が、「週刊新潮」(新潮社)の記事で、公用車で子どもを保育園に送るのは公私混同だとに批判される“事件”があった。

 これに対して、タレントの眞鍋かをりさんが「このケースで仕事の途中で保育園に送っていくことがダメなんだったら、働くお母さん誰1人、仕事と子育て両立できないと思う」と述べ、金子氏を擁護。

 それに対し、元衆議院議員でタレントの東国原英夫氏が、金子氏と眞鍋さんを激しく攻撃した。

「多くの子育て世代の父母が、仕事と子育て等を両立させながら、子供を保育園に、自転車・電車・徒歩等で送り迎えする涙ぐましい努力・労苦をされておられる。その中で、模範となるべき国会議員が、運転手付きの公用車(高級車)を私的に使うのは如何なものか」(同氏のツイッターより)

 東国原氏は、テレビでも声高に「その特権階級的行動と意識に問題がある」と金子氏への非難を行い、これに同調する声も少なくなかった。要するに、「国会議員、政務官の特権を許すな」という主張だ。

 こんなふうに「特権」という言葉に、やたら反応するのはいかがなものか。

 第一、金子氏は何も、子どもの送り迎えのために公用車に乗っていたわけではなく、ほかの政務官たちに比べて格別の「特権」を得ていたわけでもない。政務官には公用車出勤が認められているが、それは移動中にも機微に触れる事項の連絡などが迅速にできるようにというためだろう。金子氏の場合、職場に向かう通勤のために公用車の使用が認められており、その通勤の途中に保育園があったというだけの話だ。

 実際、金子氏はメディアのインタビューに対し、次のように答えている。

「夫が車で送ることもあれば、私がベビーカーに乗せて出勤することもありました。公用車を送迎に使ったのは、5月以降、子どもを預ける時間と政務官の公務の時間が重なった数回です。

 タクシーを使えばいいのでは、というご意見もありましたが、公用車を使ったのには理由がありました。機密情報を扱うので、タクシーでは電話や打ち合わせがしづらいですし、資料を忘れたりすれば大変なことになります。効率という面でも、移動の時間を使って当日のスケジュールを打ち合わせられる利点もありました」(朝日新聞デジタルより)

 しかも、そうした公用車使用は、総務省の規則にも反していなかった。

 それにもかかわらず、批判を受けて、金子氏は公用車に子どもを同乗させないことにした。それによって、いったいどんな「よいこと」があったのだろう。誰が、どのような利益を得たのだろうか。子どもを育てながら働く親たちにとって、少しでも暮らしやすい社会に近づくのだろうか。

●自分が“損”をしているという“錯覚”

 安倍政権は、重要政策のひとつに「女性の活躍」を掲げている。現実には、子育ての負担は母親のほうが父親より大きい場合が多い。そのハンディを補うためのサポートを充実させることは、政権にとって最重要課題のはずだ。しかも、今回の件は規則上なんの問題もないのに、金子氏の上司である高市早苗総務相からも、内閣府特命担当大臣(少子化対策担当、男女共同参画担当)及び一億総活躍担当、働き方改革担当、女性活躍担当などを兼任する加藤勝信大臣からも、金子氏を擁護する声は聞こえてこなかった。

 眞鍋さんは、「自民党の中から誰か、子育て中の議員さんは全力でサポートします、それで何がいけないんですかって言ってほしかった」とも言っていたが、まったく同感である。

 民進党の蓮舫代表が、金子氏を非難したのも残念だった。蓮舫氏はFacebookで「公用車で子どもを保育園に送迎。『運用ルール上問題ない』と言い切る考えに全く共鳴も、理解もできません。議員会館にある保育園。ならば、会館まで自力で行き、そこから公用車で総務省に出勤すれば済む話です。公私混同の感覚が絶対的に欠如してます」と書いた。

 いくら都議選の最中だからといって、ここぞとばかりに自民党議員への非難に便乗すればいいというものではないだろう。社会をよくすることより、目先の敵をたたくことを優先するというのは、政権交代を狙う野党第一党の党首として、あまりに情けない。

 子育て中の親は、同じ職場の同僚に比べ、仕事をするうえでさまざまなハンディを負う。それをできるだけ補うサポートがあれば、対等な競争が可能になるし、そうすれば職場は多様な人材を生かすことができる。今、子育ての最中の親たちだけでなく、これから子どもを持つだろう若い世代も、安心して働く職場になる。子育てを通してさまざまな課題に気づいたり、その解決法を発見するということもあるだろう。それを生かせば、社会に、つまり皆にとって利益になるではないか。その積み重ねで少子化に歯止めがかかれば、大きな国益にもなる。

 ところが、ハンディを補うためのサポートが、あたかも「特権」を享受しているかのように見え、その人が得をしているかのように感じ、ひいては自分が損をしているように錯覚し、この「特権」を剥奪したいという欲求にかられてしまう、残念な人たちがいる。しかし、そういう発想では、世の中はなかなかよくならない。それどころか、自分の首を絞める結果にすらなりうる。

●誤った“特権批判”をする前に

 バニラエアの車いすの乗客をめぐるトラブルでも、同じことを感じた。

 奄美空港で航空会社の社員から、車いすの男性が「歩けない人は乗れない」と言われ、腕の力で這ってタラップをのぼったことについて、同社は謝罪。同空港にも車いすで乗り降りできる設備を備えることになった。

 問題提起がなされ、それを契機に事態が改善される。そんなよい事例だ……と思っていたら、男性を非難する声がネット上で飛び交った。特に、男性が航空会社に事前連絡をせずに乗ったことへの非難が目に付いた。

 これに対し男性は、ブログで次のように答えている。

「(航空会社が車いす乗客の事前連絡を求めていることに)そもそも気づいてませんでした。航空券をネットでポチっと購入しただけ。いちいち他のページ見ますか?」
「事件後に明らかになりましたが、事前連絡したら、まず乗れなかったのですよー。設備がないことを理由に全て断っていたんです」

 すべての交通機関で、車いすの乗客も、事前に連絡する必要などなく、利用できるのが望ましい。現実には機材や人手が足りなく、事前連絡をしたほうが適切なサービスを受けられるという場合はあるだろう。しかし、それで体よく断られるということになれば、事前連絡が車いす乗客の排除につながってしまう。

 さらに驚いたのは、このブログに寄せられたメッセージだ。

「ルール無視してイチャモンつけて、お金をせびるのがお仕事なんですか。いいご身分ですね。私は10年以上、旅行とかしてないですけどね」
「馬鹿野郎。謙虚に生きろ。図に乗るなこの野郎。邪魔、目障り」
「障害者だからって威張るな。障害者はしね。クレーマー」

 そんな罵倒がいくつも並んでいた。

 奄美空港でも、ほかの空港と同じように、車いすでの乗り降りができるようになれば、足の不自由な障害者だけでなく、足腰の弱った高齢者も助かるだろう。

 人は、誰もがいつかは老いる。事故や病気で歩けなくなることもある。車いす対応の場所が増えれば、自分の足が不自由になった時にも助かるではないか。この男性の行動と、その後の航空会社の対応によって、世の中は、またほんの少し住みやすくなったといえる。

 その契機となる問題提起をした人を叩くというのは、社会にとって有害な行為にほかならない。

「特権」に反発する前に、頭を冷やし、少し想像力を働かせて考えてみてほしい。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

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