『過保護のカホコ』、えげつない本音をまき散らす問題作に?試される高畑充希の力量

『過保護のカホコ』、えげつない本音をまき散らす問題作に?試される高畑充希の力量

高畑充希

 水曜夜10時から放送されている『過保護のカホコ』(日本テレビ系)は、両親から過保護に育てられた大学生・根本加穂子を主人公にしたドラマだ。

 主人公の加穂子を演じるのは、NHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『とと姉ちゃん』でヒロインを演じた高畑充希。

 脚本は『女王の教室』や『家政婦のミタ』(ともに日本テレビ系)といったヒット作で知られる遊川和彦。

 朝ドラ以降、久々の連続ドラマとなる高畑と、毎回ショッキングな問題作を発表する遊川のタッグということもあり、「どんな作品になるのか」と期待半分、不安半分で第1話を見た。

●視点が「夫婦」から「子ども」に移った遊川作品

 すでに「母子密着問題」という同じようなテーマに挑戦し、圧倒的なおもしろさを見せつけた井上由美子脚本のドラマ『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK)が今年の冬に放送されていたため、ついつい比較してしまうのだが、『過保護のカホコ』は毒っ気の強いコメディドラマで、遊川らしくわかりやすいドラマとなっていた。

 女性に人気のスマートフォンアプリ「SNOW」で加工したように登場人物の顔が動物のようになる場面や、グーグルマップを比喩表現として用いる演出については、正直あまりうまくいっているとは思えなかった。しかし、現在朝ドラ『ひよっこ』で人気が爆発している竹内涼真が演じる画家志望の大学生・麦野初と加穂子が出会い、押し付けられるかたちで加穂子がピザ店のアルバイトをするなかで働くことの意味を見いだしていく場面には高揚感があった。

 こういう、男と女が喧々諤々やりながら仲良くなっていくというボーイ・ミーツ・ガールのドラマを描かせると、遊川は圧倒的にうまい。

『家政婦のミタ』以降、遊川和彦は夫婦を中心としたショッキングなホームドラマを繰り返し書いているのだが、『過保護のカホコ』がおもしろいのは、物語の視点が夫婦から子どもへと移っていることだろう。

 この傾向は、昨年放送された特別養子縁組が題材の『はじめまして、愛しています。』(テレビ朝日系)にも表れていたが、本人が昨年結婚したこともあってか、遊川の関心は夫婦から子どもに移っているのかもしれない。

 遊川作品には欠かせない存在になりつつある黒木瞳が演じる過保護な母親・泉や、物語の語り部としてあらゆる登場人物にツッコミを入れるが、「どう考えてもコイツが一番ダメだろう」と思える時任三郎が演じる父親・正高といった脇役も個性的。

 ドラマが進むにつれて、えげつない本音をまき散らしながら、次から次へとトラブルが起きることは間違いないだろう。特に、最近の遊川作品はバッドエンドも多いため、見ていてまったく油断ができない。

●「脇でこそ光る」高畑充希の主演は成功するか?

 もうひとつの注目点は、主演を務める高畑充希の演技だろう。

 実は『とと姉ちゃん』に出演するまで、高畑は連続ドラマで主演を務めたことがなかった。『問題のあるレストラン』や『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(ともにフジテレビ系)などの作品で脇役の女性を演じて高く評価されるタイプの演技派女優だった。

 主演の演技と脇役の演技は、求められるものが違う。そのため、脇で活躍していた俳優が人気上昇とともに主演に移行する際には、演技の質を変えないとうまくいかない。

 高畑充希は、脇でこそ光るタイプの技巧派だ。

 半年間という長丁場で、演じる役柄の年齢や環境が次々と変わる朝ドラなら、多様な演技を試すことができる。しかし、民放連ドラの主演で求められるのは、わかりやすさと力強さだ。

 特に、遊川のドラマは『家政婦のミタ』の三田灯(松嶋菜々子)のような個性的なキャラクターを主人公にすることが多いため、下手に役者が欲を出して繊細な演技を見せようとすると、役者のエゴと遊川の脚本が衝突して、空中分解を起こしてしまう。

 過去作を見ていても、遊川のドラマと一番相性がいいのは、天海祐希や黒木瞳といった宝塚出身の記号的でわかりやすい芝居をきちんと演じきることができる女優である。そのあたり、高畑も理解しているのだろう。加穂子の仕草は極端に子どもっぽく、漫画のキャラクターのように記号化されている。ただ、高畑を見ていると、記号になりきれない葛藤のようなものが見え隠れして、どうにもむずがゆかった。

 おそらく、物語は抑圧されていた加穂子の魂が解放される方向へと向かうのだろう。そう考えると、今の高畑の記号になりきれずに自我がにじみ出ている雰囲気は、のちの伏線になるのかもしれない。そういう(演技レベルの)計算が透けて見えてしまう点は、今の高畑の限界ではあるが、方向性自体は間違っていない。

 また、第1話でピザを届ける加穂子の姿が客からほめられた場面からわかるように、おそらく本作は過保護に育てられた加穂子を「ダメな存在」として描くのではなく、「何もできないダメな子に見えるが、実はしっかりした女の子だった」ことが明らかになっていく話になるのではないかと思う。

 一筋縄ではいかない遊川の世界を、高畑がどう演じきるのか。今後が楽しみである。
(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)

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