稲田防衛相の日報隠蔽疑惑、「瑣末な話」が大事件化の事情…日報問題の隠れた本質

稲田防衛相の日報隠蔽疑惑、「瑣末な話」が大事件化の事情…日報問題の隠れた本質

稲田朋美防衛相(日刊現代/アフロ)

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた陸上自衛隊の部隊が、昨年7月に政府軍と反政府軍の間で戦車、ヘリコプター、迫撃砲も使い、300人以上の死者が出る大規模な戦闘が起こった際、「戦闘が生起した」という正確な情報を中央即応集団司令部(相模原市座間駐屯地)への「日報」(日々の状況や行動の詳細報告)で伝えていた。

 だが、稲田朋美防衛相ら防衛省幹部は「戦闘地域に日本のPKO部隊を派遣しているとなればPKO5原則に反すると言われる」と考え、「憲法9条上の問題になるような『戦闘』という言葉は使わないよう」と指示し、「武力衝突」と言い換えてきた。

 このため防衛省に対し、昨年9月にフリージャーナリスト布施祐仁氏が7月の日報の開示を求める情報公開請求を行った際にも、陸上幕僚監部は「日報はすでに廃棄し存在しない」とし、同年12月2日に防衛省は不開示を通知した。

 だが日報は後日の訓練、装備などの参考に役立つ貴重な資料だから、「あれを廃棄したとは信じがたい」との声も制服幹部の間に多く、稲田氏が再捜索を求めたところ、同月に統合幕僚監部に電子データとして保存されていたことが判明、今年1月には陸上幕僚監部も電子データの存在を確認し報告した。

 結局2月7日に日報は一部黒塗りで情報公開されたが、防衛官僚は「陸上幕僚監部で廃棄した、と答えた手前、今さら陸幕にもあった、とは言いづらい。統幕で見つけたかたちにしよう」と提案、稲田氏にもそのように報告した、とされてきた。

 3月になり、陸幕にもデータが残っていたことが報道されたが、稲田氏は衆議院安全保障委員会で陸幕にもあったことを隠したことについて「報告を受けなかった」と答弁した。日報問題に関しては防衛監察本部が3月から特別監察を行っている。

●高まったニュースバリュー

 今回、7月19日付朝刊で朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、共同通信が一斉に「稲田氏が出席した2月中旬の会議で、陸上自衛隊内にも電子データが保管されていたことは公表しないことにする」と決められたと報じ、20日には読売新聞も後を追った。稲田氏は自身が非公表を了承したか否かについて記者団の質問に対し、「ご指摘のような事実はない」と答えている。

 もし了承したのなら、「報告は受けなかった」との国会答弁は嘘となる。とはいえ、そもそも国民から見れば、電子データが陸上幕僚監部にあろうが、統合幕僚監部にあろうが、防衛省内にあったことに変わりはない。これを新聞社にたとえれば、元の原稿のコピーが社会部に残っていたか、編集局長室にあったか、という程度の話だ。しかも大臣も出席していた会議が開かれたとされる2月15日頃はすでに情報開示が行われた後であり、国民の「知る権利」がこれにより妨げられたわけでもない。

 さらに政府は3月10日にはスーダンのPKO部隊約350人の撤収を発表、4月17日から開始し、5月26日に撤収を完了したから、防衛政策にも影響することはなかった。

 ひとつの省庁内での責任のなすり合いのような話が、不釣り合いに感じられるほど大きく報じられたのは、ひとつには稲田氏がこれまで、たとえば現地視察後に「(南スーダン首都の)ジュバは比較的落ち着いている」とか、森友学園の訴訟に出廷しながら「裁判にかかわったことはない」と答弁したり、東京都議選の応援演説で「防衛省自衛隊としてお願いしたい」と自衛隊の政治的中立を侵す発言をするなど、資質を疑われる言動を繰り返してきたため、ニュースバリューが高まっていることにあるだろう。

 また、森友学園への国有地売却の経緯について、財務省幹部が「文書は廃棄された」と言い続けるため、国民に政府の官庁の隠蔽に対する不信感が累積していることも理由と考えられる。

 今回の「日報問題」の本質も、昨年9月に情報公開請求があった際、防衛省が「日報は廃棄した」との姑息な逃げ口上を使ったことだ。誰がそれを決めたのか、現在進行中の特別監察ではその真相を明らかにし公表することにより、信頼を回復すべきだろう。
(文=田岡俊次/軍事ジャーナリスト)

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