『苦情殺到!桃太郎』が話題に!ネットモラルを問うCMの制作意図を聞いてみた

『苦情殺到!桃太郎』が話題に!ネットモラルを問うCMの制作意図を聞いてみた

「ACジャパン」公式サイトより

 民間の企業・団体が持てる資源を少しずつ出し合い、社会にとって有益なメッセージを広告という形で発信しているCSR(Corporate Social Responsibility)活動を行ってきた公益社団法人ACジャパン。

 東日本大震災発生時には、同じCMが繰り返し放送されていたことも(そして一部視聴者から「怖い」などと不評を買っていたことも)記憶に新しいが、ACジャパンは「公共マナー」「環境問題」「親子のコミュニケーション」といった普遍的なマナーをテーマとしたもの、「認知症の問題」「スマホマナーの問題」「喫緊の医療問題」といった時代を反映したテーマの広告を作成、発信してきた。

 取り扱うテーマがテーマだけに、どうしても作成するCMは「固い」イメージがつきまとい、新CM映像がテレビで放送されても普段は話題となることも少ないのだが、今月1日より放送・配信が開始された『苦情殺到!桃太郎』のCMは、ネット上で大盛り上がり。その内容はこうだ。

 川で洗濯中、流れてきた大きな桃を拾い上げたおばあさん。すると
「窃盗だろw」「桃の気持ちを考えたことがあるの!」「警察に届けないの?」
「背景から住所分かるかも」「家族も許すな」「川で洗濯するなよー」「通報!通報!」
 などといった、いわゆる「クソリプ」(Twitterのリプライのうち、見当外れであったり、罵倒したくなるリプライのこと)が大量に画面を埋め尽くす。言葉の暴力に遭ったおばあさんは戸惑いうろたえ、涙を流す――というところで、「悪意ある言葉が、人の心を傷つけている」「声を荒げる前に少しだけ考えてみませんか」と美輪明宏の優しいナレーションで締めくくる、というもの。

 おばあさんを批判する各クソリプが妙にリアルであったことや、日ごろSNSやネットを使用していれば身近に感じられるテーマだっただけに『苦情殺到!桃太郎』のCMは大きな話題に。ネットのニュースサイトなどが取り上げ、「なぜ『炎上騒ぎ』は起きるのか?」というテーマのもと、いささか的外れな解説記事を作成・発信したこともあって、さらに注目度を高めている。

 ネット上のマナーに言及するのは珍しいし、なにかと「固い」イメージがあるACジャパンの作成したものにしてはちょっとクスッとできる部分もあったり、1本の映像としても興味深い。どんな意図や狙いを持って作られたものか、ACジャパンに聞いてみた。

「自由にものが言えるのはいいことですが、ネット上では誰もが『ちょっと行き過ぎでは』 と思っているのではないでしょうか。作品の提案企画書には『スマホやパソコンなど、便利 なツールの使い方について、改めて考えてみませんか』と書かれており、幅広い層に共感いただけるテーマではないかと感じました」

 ACジャパンには、独自にテーマを設定した「全国キャンペーン」、支援する支援団体ごとにテーマを設定した「支援キャンパーン」、全国7地域ごとにテーマを設定した「地域キャンペーン」の3カテゴリーにわけ、年に20作品ほどの公共広告を作成。今回の『苦情殺到!桃太郎』は全国キャンペーンのひとつとなる。

 各広告の表現アイデアは、コンペ参加広告会社のボランティアにより提供され、数度の審査を経て、作品決定〜実制作へと移行するという。

「電話や問い合わせなどから、『ネットモラル』の関心の高さを感じました。また、プリミティブなキャラクターと、リアルなネット用語のコメントが相乗効果となり、 インパクトのある表現となったと感じます」と、『苦情殺到!桃太郎』のクオリティー、そして反響の大きさに手応えを感じている様子。

 ただ、取り扱うテーマがテーマだけに、下手な料理の仕方ではそれこそ「炎上騒ぎ」を起こしてしまいかねない素材だったと思われる。制作においては、どんなことに注意を払っていたのだろうか?

「AC から伝えたい『声を荒らげる前に、少しだけ考えてみませんか?』というメッセージ を美輪明宏さんに依頼し、出演していただいたことです。そこがキーだと思います。さらに広告を見た人に共感や興味をもってもらいたいために、ネット上で使われている言葉を使用したり、クスッとしてしまうようなエピソードを入れ、バランスを取りました」

 声高にメッセージを伝えるのではなく、受け入れやすいよう細やかな配慮が各所に散りばめられていたからこそ、SNSやネットを日常的に使用する層にも炎上することなく迎え入れられたのだろう。今後はどんなCMを見せてくれるのか、楽しみだ。

 なお、『苦情殺到!桃太郎』の放送および広告掲載は2018年6月30日まで継続。CMはACジャパン公式サイトなどでも視聴できるので、未見という人はチェックしてみては?
(文=編集部)

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