「おいしくなった」かっぱ寿司、実はお得度低い食べ放題、なぜ客殺到で完全成功?

かっぱ寿司の「食べ放題」企画が成功を収める 「まずい」の悪名は過去のものか

記事まとめ

  • かっぱ寿司の「食べ放題」企画の利用者は延べ11万5765人だったという
  • 今回の食べ放題は、かっぱ寿司が十分に利益を確保できる水準であったと考えられる
  • 少し前までは「まずい」という悪名もあったが、過去のものになりつつあるとの指摘も

「おいしくなった」かっぱ寿司、実はお得度低い食べ放題、なぜ客殺到で完全成功?

「おいしくなった」かっぱ寿司、実はお得度低い食べ放題、なぜ客殺到で完全成功?

かっぱ寿司の店舗(「Wikipedia」より)

 かっぱ寿司の「食べ放題」企画が成功を収めたようだ。6月13日から7月14日までの約1カ月間、平日14時から17時まで、80種類以上の商品が70分間食べ放題のキャンペーンを21店(開始時は20店)で実施した。

 運営元のカッパ・クリエイトによるとキャンペーンの状況は、初日が3999人、もっとも多い日で5415人、延べ利用者数は11万5765人だったとしている。時間帯比較で通常営業時の3〜4倍程度の客が来店し、予想を上回る反響だったという。今後の実施も前向きに検討しているようだ。

 ちなみに、単純計算すると、食べ放題客だけで1店舗・1時間当たり約60人が訪れたことになる。一般的な飲食にかかる時間とかっぱ寿司の席数を考えると、対象のすべての時間帯で食べ放題客が途切れることがなかったことが、このことから推測できる。

 インターネット上では、混雑ぶりや行列の様子が次々にアップされた。店舗によっては、10時間以上の待ち時間になったとの情報も流れた。いずれにしても、多くの利用客で店は溢れ、かっぱ寿司ではうれしい悲鳴が上がったのではないだろうか。

 別の角度から見ても、いかに今回の食べ放題のインパクトが大きかったかがわかる。回転寿司事業の売上高と店舗数をもとに計算すると、かっぱ寿司の1店舗当たりの平均月商は1580万円程度とみられる。一方、今回の食べ放題の1店舗当たりの推計売上高(実施の約1カ月間)は430〜870万円程度とみられる。そのため、おそらく、平均月商の3分の1以上にあたる額を食べ放題だけで稼ぎ出している。14時から17時までの“アイドルタイム”での売上高と考えると、これは大成功といっていいだろう。宣伝効果も大いにあったのではないか。

 ちなみに、推計の売上高の根拠だが、利用客全員が最高価格となる大人男性の価格1580円(税別)で利用した場合が約870万円、利用客全員が最低価格となる小学生の価格780円で利用した場合が430万円となるため、430〜870万円とした。範囲は少し広いが、全員が小学生ということはあり得ないし、大人女性の価格でも1380円(同)あるため、最高額寄りの売上高になるだろう。また、付加サービスで、アルコール飲み放題を680円(同)でつけることもできたため、さらなる上積みも考えられる。

 このように、売上高の面では大成功といえるだろう。

●利益は確保できたのか

 一方、利益面ではどうだろうか。今回の食べ放題は、利益を度外視したキャンペーンのようにも思えるが、利益は確保できたのだろうか。

 大手食品会社のマルハニチロが公表した「回転寿司に関する消費者実態調査 2017」によると、回転寿司店で食べる寿司の量は1人当たり平均9.3皿、男性の平均は10.8皿、女性の平均は7.8皿だという。また、格安均一価格店での支払額は平均1358円となっている。

 一方、かっぱ寿司の寿司メニューの多くが1皿100円(税別)だ。仮にすべてを100円メニュー、調査の平均枚数で食べたとした価格と比較しても、食べ放題で設定した価格のほうが男性では500円高く、女性では600円高くなる。もちろん、100円より高いメニューを注文したり、食べ放題ということで普段以上に食べる人もいるため、その価格分は上昇するが、それを考慮しても十分利益を確保できたのではないだろうか。

 以上から、今回の食べ放題の設定価格はかっぱ寿司が十分に利益を確保できる水準であり、決して「赤字覚悟の出血大サービス」ではないと考えられる。

●なぜ客が殺到したのか

 一方、お客にしてみれば、大食漢な方を除いて、それほどお得感はないのではないか。それにもかかわらず、なぜ多くの人がかっぱ寿司の食べ放題を利用したのだろうか。

 筆者は、良くも悪くもかっぱ寿司の話題がネットを中心に渦巻いていたからだと考えている。「業績が悪化している」という話題が渦巻いていたのだ。

 かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトの業績は悪化している。17年3月期決算の最終損益は58億円の赤字だ。15年3月期決算(決算日変更のため13カ月の変則決算)も134億円の赤字を計上している。そのことを筆者は各種媒体で記事化してきたし、ほかにも多数記事化や報道がなされてきた。

「かっぱ寿司は業績が悪いらしい」といった情報が拡散されていき、かっぱ寿司が注目されるようになった。そうしたなかで食べ放題を行ったため、「最近話題のかっぱ寿司の食べ放題に行ってみようか」となったのではないかと筆者は推測している。

 業績が悪化しているという情報は、決して良いイメージではないだろう。しかし、それでも話題に上るということには大きなメリットがある。「悪名は無名に勝る」という言葉の通り、注目されていないよりは注目されているほうがいい。

 たとえば、ドナルド・トランプ米大統領も、「悪名は無名に勝る」が重要であると自身の著書でも述べている。また、著書『トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ』(ちくま文庫)で「個人的には不愉快に感じるような批判的な記事でも、ビジネスには大いに役立つこともある」と述べ、話題になることはいいことだと主張している。実際に、トランプ氏は意識的に話題になるような言動を繰り返しているのは周知の通りだ。トランプ氏については賛否があるだろうが、「悪名は無名に勝る」を体現して大統領になれたといってもいいのではないだろうか。

 もちろん、道理に反する悪名は問題がある。最近の例でいえば、タカタの欠陥エアバッグの問題がそうだろう。多数の死傷者を出して注目されたが、これは道理に反する悪名だろう。このような悪名のなかでは、何をしても叩かれるだけだ。

 一方、かっぱ寿司の悪名は業績が悪化しているだけで道理には反していない。問題を起こして業績が悪化しているわけではない。「業績が悪い」という、どこででも起こり得ることが話題になっているだけである。

 そうしたなか、少し変わったキャンペーンを行えば、多くの関心が集まるだろう。業績悪化以外にも、少し前までは「まずい」という悪名もあったが、それは過去のものになりつつある。筆者が以前執筆した記事でも指摘したが、かっぱ寿司はおいしくなっている。「まずい」という悪名は薄れつつあるし、「おいしくなったと聞いているので久しぶりに食べてみようか」といった感じで許容されるようになっているのではないか。

 以上の理由により、多くの人がかっぱ寿司の食べ放題に足を運んだと推測している。いずれにしても、今回の食べ放題は成功した。そして、多くの人においしくなった寿司を食べてもらうことができたはずだ。復活のきっかけにはなったと考えていいだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

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