いきなり!ステーキ、米国で大人気&賞賛の嵐…日本式そのまま導入、抱える危険なリスク

いきなり!ステーキ、米国で大人気&賞賛の嵐…日本式そのまま導入、抱える危険なリスク

いきなり!ステーキの店舗(撮影=編集部)

「It was soft and juicy!(柔らかくてジューシーだったわ!)」
「I would definitely consider taking friends and family here in the future!(近いうちに必ず友人や家族を連れて来るわ)」
「This place is cool.(ここはかっこいい)」

 これらは、飲食店情報サイトに寄せられた、ある店に関する評判だ。
 https://www.yelp.co.jp/biz/ikinari-steak-east-village-new-york

 立ち食いステーキ店「いきなり!ステーキ」がステーキの本場、米ニューヨークへの進出を果たしたのは現地時間2月23日。「立ち食い」は、アメリカでは馴染まないから失敗するという声もあったが、蓋を開けてみればオープン日には多くの人が行列をつくった。開店後の売り上げの推移は、銀座1号店にも勝るほどだったという。進出から5カ月以上が経過した今も、1日に400人が訪れるようで、冒頭のような喜びや賞賛の声が口コミサイトなどで絶えない状況にある。

 同店を運営するペッパーフードサービスは、米国での多店舗展開にも意欲的なようだ。年内に10店舗の出店を計画しており、すでに2店舗・3店舗目はオープンする見通しが立っている状況という。3年後にはナスダックへの上場準備に入りたいとの意向を示している。フランチャイズ(FC)に対する問い合わせも増えているようで、全米でのFC展開の野望を隠さない。

 ニューヨークでの成功は、同社の業績にも好影響を及ぼしている。4月28日に業績予想の上方修正が発表されたが、2017年12月期連結決算において、売上高は予想より15億円増加の286億円、本業の儲けを示す営業利益は2億円増加の13億円になるとした。そして、7月14日には、さらなる上方修正が発表され、売上高は48億円増加の334億円、営業利益は8億円増加の21億円になるとの見通しを示した。

 上方修正の理由は、ニューヨーク店が好調なことに加え、国内既存店の4月から6月までの売上高が前年比120%を超えるほど好調に推移したことが寄与したという。また、ステーキ店「ペッパーランチ」も好調で、6月まで56カ月連続で既存店売上高が前年を超えたことも影響している。

●異常な高原価率でも利益が出る秘密

「いきなり!ステーキ」は、13年12月に東京・銀座4丁目で誕生した。翌年1月に銀座6丁目で2号店をオープンし、その後矢継ぎ早に出店を推し進めた。驚くべきことに、1号店が誕生して半年も経たない14年4月に、年内のニューヨーク出店に向けて米国デラウェア州に100%出資の子会社を設立している。年内の出店は実現しなかったものの、3年を待たずにニューヨーク店をオープンしている。

 ニューヨーク店には、日本で行っている方式をそのまま持ち込んだ。立ち食い形式はもちろん、顧客が好きな量をグラム単位(7月からはオンス単位に変更)で注文できる「オーダーカット」システムも採用している。

「いきなり!ステーキ」は、立ち食いにすることで狭い敷地であっても収容人数を確保できるようになっている。低価格で提供しているため原価率が高いのが特徴で、肉で70%、ライスやサラダ、アルコールなどを加えると60%程度(一般的な飲食店の原価率は30%程度)にもなるというが、回転率を高めて客数を確保できれば収益を確保できるため、原価率の高さは問題にはなっていない。

 ニューヨーク店の価格は、日本よりも高く設定している。たとえば、リブロースステーキの現在の日本での価格は1グラムあたり7.3円(税別)だが、ニューヨーク店では1オンスあたり2.55ドルで、1グラムあたりにすると約10円(同)になり、日本よりも2割以上も高い。

 日本よりも価格が高いのは、米国産の高品質な牛肉を使用しているためだ。一方、アメリカ国内から取り寄せることになるため関税がかからず、輸送コストを抑えることができる。そのため、日本よりは価格が高いが、より高品質の牛肉をリーズナブルな価格で提供できている。

 部位はリブロース(リブアイ)、サーロイン、フィレの3つを選べる。焼き加減はレア、ミディアムレア、ミディアム、レアがあり、牛肉の味を最大限に楽しめるレアを勧めているという。アメリカではレアは馴染まないといわれるが、日本式を試してみたいという客にレアやミディアムレアなども好評のようだ。

●日本式システムがニューヨークでもヒット

 こうした「立ち食い」「オーダーカット」など日本発の「いきなり!ステーキ」独自のスタイルを、ペッパーフードサービスでは「J-Steak(ジェイ・ステーキ)」と呼び、オーダーカットのことを「Japan Cut(ジャパンカット)」と呼んでニューヨーカーに訴求している。ニューヨークでは珍しい紙エプロンやテーブル下に荷物を入れる物置を用意するなど、日本流のおもてなしスタイルも導入している。「日本式のステーキ店」という珍しさが受けている面もありそうだ。

 日本で人気がある「肉マイレージカード」も健在だ。1ドルの手数料を支払うとメンバーズカードが手に入る。肉を食べた分だけポイントが貯まり、ステータスが上がっていく仕組みだ。メンバーズカード、ゴールドカード、プラチナカードの順にランクアップしていき、各ランクで特典が付くのは日本と同じだ。なお、日本国内店舗で採用されている「ダイヤモンドカード」は、ニューヨーク店ではない。

 メンバーズカード会員になると毎年の誕生月に5ドル分のクーポンを受け取ることができ、ゴールドカード会員になると10ドル分のクーポンを受け取ることができる。また、店を利用するたびにノンアルコールドリンク1杯が無料になり、誕生月はリブロースステーキが1回無料となる。プラチナカード会員の場合、30ドル分のクーポン、ドリンク1杯無料、誕生月は好きなステーキが1回無料となる。

 このような日本で人気のシステムは、ニューヨーカーにも受け入れられている。ニューヨークでも絶好調の「いきなり!ステーキ」。日本国内では6月末時点で129店を展開し、ペッパーランチの142店に迫ろうとしている。勢いは止まらない状況だ。

 ただ、ペッパーフードサービスはリスクが高い状況にあることも事実だ。展開するすべての業態店が単一食材(牛肉)に依存したメニュー構成のため、BSEなどの牛肉特有の問題や、市場価格・為替相場の変動により、食材費が顕著に高騰するといった問題が発生してしまえば、一気に経営が傾いてしまう恐れがある。

 また、急成長しているだけに、管理が行き届かないことで不祥事が起きてしまうといったリスクもつきまとう。事実、07年にペッパーランチ心斎橋店の店長と従業員が女性客を暴行するという事件が起きた。09年にはO-157による食中毒事故が発生している。こうした不祥事が今後は発生しないようにしなければならない。そういう意味で、急拡大している今こそ正念場といえそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

関連記事(外部サイト)