『黒革の手帖』武井咲、悪女がハマり新境地に…セクシー路線を突き進むオスカーの女優戦略

『黒革の手帖』武井咲、悪女がハマり新境地に…セクシー路線を突き進むオスカーの女優戦略

「木曜ドラマ『黒革の手帖』|テレビ朝日」より

 放送前は「なんで今さらリメイク?」「武井咲では若すぎる」などのネガティブな声が多かったドラマ『黒革の手帖』(テレビ朝日系)が好調なスタートを切った。

 2004年に放送された米倉涼子版のインパクトが強かった上に、主演の武井はまだ23歳。「悪女の代名詞」ともいえる原口元子を演じることへのハードルは高かったが、序盤では視聴者・識者ともに高評価が続出している。

 約1カ月前まで放送されていた『貴族探偵』(フジテレビ系)での武井は、「女子大生か?」と思わせる未熟な新米探偵役だった。しかし、わずか数週間で一気にオトナ女優へ変身。色気を感じさせる演技を披露し、視聴者に新境地を感じさせている。

●昨今のテレビ事情に合う武井咲の色気&悪女ぶり

 武井が演じる元子からは、米倉版のような「目的のためならカラダを許すこともいとわない」というほどのムードが漂ってこない。2話で楢林(奥田瑛二)から、なでまわすように手をさわられ、ホテルで背中から抱きつかれ、ベッドに押し倒されても、結局体を許すどころか、肌すら見せなかった。まるで「私はカラダなんか張らないわよ」と言っているようである。

 安易な肌の露出や枕営業に頼らない。体温が低く、欲望が顔に表れない。だからこそ、よりタチの悪さと闇の深さを感じさせる、いかにも現代風の悪女に見えるのだ。

 少し見方を変えれば、「セクシーな描写に厳しい、昨今のテレビ事情に合う色気」ともいえるだろう。武井は、視聴者に嫌われにくく、スポンサーに好かれやすい悪女を演じているのだ。

 とはいえ、やはり23歳。必然的に「銀座最年少ママ」らしい“背伸び感”は出ているが、それも「若いママに肩入れしたい」という潜在願望を持つ男たちを扇情させる。さらに中盤以降は、悪事を重ねてきたしわ寄せが訪れ、ピンチの連続になるだけに、追い詰められた女の色気が見られるだろう。

 これから元子は、江口洋介演じる安島富夫と惹かれ合うのだが、武井と江口はちょうど5年前の『息もできない夏』(同)で共演していた。当時は江口が武井を見守る保護者のような位置づけだったが、今回は堂々の恋仲となるところも、オトナ女優化が進んでいることの証明となりそうだ。

●上戸彩、剛力彩芽、吉本実憂もセクシー路線に

 武井のオトナ女優化を見て、ふと気になったのは、所属事務所・オスカープロモーションの女優戦略。6月に上戸彩の主演映画『昼顔』(東宝)が公開され、大胆な演技で注目を浴びたほか、剛力彩芽も『女囚セブン』(テレビ朝日系)で芸妓を演じて入浴シーンなどを披露し、次期エース候補の吉本実憂に至っては『クズの本懐』(フジテレビ系)で何度となく濡れ場を演じた。

 特に吉本の演技は、「テレビの放送コードを超えている」「そのへんのセクシービデオよりもエッチ」という過激さで、業界内で「20歳になったばかりのエース候補が、なぜこの仕事を受けたのか?」という疑問の声が飛び交っていた。

 つまり、オスカープロモーションは「事務所のトップクラスを、一気にオトナ女優化させている」ということになる。もともと、オスカープロモーションは「全日本国民的美少女コンテスト」を開催しているように、息を呑むような正統派の美女ぞろい。これまでは演技力よりも、美を全面に押し出した圧倒的な存在感で勝負してきたが、セクシーという新たな武器も手に入れようとしているのだろうか。

 朝ドラから人気女優が次々に量産されるほか、各事務所が「広瀬すずに続け」とばかりに10代女優をデビューさせるなど、競争は激しくなる一方。業界をリードしてきたオスカープロモーションとしても、「強みである美を生かすために、セクシーという、もうひとつの武器を得よう」としているのかもしれない。

●『黒革の手帖』、苦境に陥る武井咲が見どころ

 話を『黒革の手帖』に戻すと、今後の見どころは、元子がさまざまな人物から猛攻にさらされるシーン。

 店のオープンを潰された恨みを持つ波子(仲里依紗)、利用されていたことに気付いて逆襲する市子(高畑淳子)、銀行を辞めて復讐をたくらむ村井(滝藤賢一)、ホレさせられたあげく利用された悔しさを持つ橋田(高嶋政伸)、元子のたくらみを牽制する政財界のフィクサー・長谷川(伊東四朗)など、四面楚歌の苦境に陥っていく。

 ここまで武井は、銀行の金を横領してクラブ「カルネ」をオープンしたほか、市子を操り、楢崎を恐喝。着物の袖を破き、腕に切り傷をつけるなどの大胆不敵な演技で、上記の名だたる名優たちを文字通り脇役へ追いやっている。

 武井の姿は、まさに「ディーバ」。もともと、オペラのプリマドンナ(主演歌手)を指す言葉であり、近年は転じて「女王のような自己中心的な振る舞いをする美女」という意味合いも強いが、当作での武井は、まさにディーバそのもの。

 名優たちのど真ん中に立ってイキイキと演じる姿は、劇中の元子にピッタリと重なる。のし上がるにしても、叩きのめされるにしても、最後まで文句なしの主演女優として君臨するだろう。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

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