視聴率ジリジリ上昇の『愛してたって、秘密はある。』、秋元康らしさ全開の仕掛けが満載

視聴率ジリジリ上昇の『愛してたって、秘密はある。』、秋元康らしさ全開の仕掛けが満載

「愛してたって、秘密はある。|日本テレビ」より

 秋元康がAKB48以外で12年ぶりに手がけたドラマ『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)が話題を集めている。

 日曜22時30分スタートという難しい放送時間帯ながら、平均視聴率は8.2%、8.7%、9.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と右肩上がりで推移。メインキャストの福士蒼汰と川口春奈は視聴率で苦戦を重ねてきた過去もあるだけに、上々のスタートを切ったといえる。

 ここまでの放送を見る限り、やはり立役者は企画・原案の秋元康だろう。福士と川口がメインとなれば、ここ数年来、映画館をにぎわせていた胸キュンラブストーリーを思い浮かべたくなるが、秋元の企画は真逆。胸キュンどころか、胸を締めつけられるような人間ドラマで視聴者を惹きつけている。

 何より特徴的なのは、主な登場人物のキャラクター設定と関係性。秋元がAKB48などのプロデュースで用いている手法が、当作でも見られるのだ。

●AKBグループと共通する独特の緊張感と人間関係

 主なあらすじは、以下の通り。

 奥森黎(福士蒼汰)は中学校3年生の夏に、母親(鈴木保奈美)をDV(家庭内暴力)から守るために「父親を殺して自宅の庭に埋めた」という過去を持つ。父親は失踪扱いになったものの、黎は誰とも深くかかわらずに慎ましく生きてきたが、立花爽(川口春奈)と出会い、「彼女と母が望むのなら」と結婚を決意する。しかし、その直後から、過去を知る何者かからの不穏なメールが届くようになり、真相を告白するべきか悩んでしまう。

 最大の見どころは、主人公・黎の葛藤。「愛する人にだけは絶対に知られたくない」「秘密を知っても彼女は僕を愛してくれるのか?」「過去の秘密を暴こうとしているのは誰なんだ」……揺れる思いが、手に取るように伝わってくる。

 それを際立たせているのは、黎を取り巻く人間関係。黎は弁護士、爽は検事を目指す司法修習生。爽の父親・立花弘晃(遠藤憲一)は検事正、2人の恩師・香坂いずみ(山本未来)は弁護士、黎の母親・奥森晶子(鈴木保奈美)は看護師、黎の父親・奥森皓介(堀部圭亮)と父親代わりの風見忠行(鈴木浩介)は医師、修習中の事件でかかわる刑事・一ノ瀬義男(矢柴俊博)。

 いずれも命をめぐる職業だけに、同意や協力するにしても、対立や反発するにしても、必然的に深くかかわり合い感情をぶつけ合うことになっていく。

 このような近い距離感での人間関係は、AKB48のそれに近い。AKB48の各チーム、姉妹グループ、坂道グループのタイトでシンプルな関係性は、そのまま同グループの魅力となっている。

 秋元康は、彼女たちの「スターになりたい」という欲望、「このままでいいのか」という葛藤、「選抜入りできた」という栄光、「あの子に負けた」という挫折などの感情を、ファン以外の人々でもわかりやすい人間ドラマとして見せてきた。

『愛してたって、秘密はある。』の人間関係も、AKB48の活動も、距離感の近さと年齢・性別を問わないわかりやすさは共通している。だからこそ、“推しメン”を決めて応援するように、「登場人物の誰かに感情移入して見る」という視聴者が増えているのではないか。

●視聴者に感情移入させる脚本の妙…新たな秘密も

 そんな秋元康の企画に応えているのが、脚本を手掛ける桑村さや香。まだプライムタイム(19〜23時)の連ドラは3作目とキャリアは浅く、前2作『恋仲』『好きな人がいること』(ともにフジテレビ系)の評判は芳しくなかったが、今作ではサスペンス色の強い人間ドラマを丁寧かつ大胆に描いている。

 前述したように、秋元康が企画したタイトでシンプルな人間関係は、「ストレートに感情をぶつけ合える」というメリットがある半面、さじ加減を間違えると「けれんみが強くなりすぎて、視聴者が感情移入できない」というデメリットもある。

 AKB48は、通常の劇場公演やシングル選抜に選抜総選挙やじゃんけん大会などのドラスティックな筋書きを加えることで、「アイドル同士のバトル」という、けれんみを抑え、リアリティを感じさせてきた。

 同様に『愛してたって、秘密はある。』も、過去の殺人やその隠蔽という、けれんみたっぷりのテーマに終始せず、司法修習生の黎が、ストーカー殺人、中学生の殺傷事件、嘘をついて無罪となった女性との出会いなど、自分に置き換えて考えざるを得ない人物と対峙することで、視聴者にリアリティを感じさせている。

 もうひとつ、強烈なアクセントになっているのは、検事正で爽の父親である弘晃が放つシビアな言葉。

「天網恢々疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず)。悪事を働けば必ず報いを受ける。『お天道様の目はごまかせない』っていう意味だ」

「もっと人を疑ってかかれ。自分の都合のいいように真実をゆがめるのが人間だ」

「幸せになる権利も、誰かを幸せにする資格も、嘘つきにはない」

 演じる遠藤憲一の持つすごみもあって、サスペンス色が一気に加速している。

 3話で「爽も嘘をついている」「晶子と弘晃が旧知の仲だった」という新たな秘密を投入したのは、秋元康のアイデアか。それとも、桑村さや香の筆が冴えわたっているのか。どちらにしても、まだまだ波乱含みであり、右肩上がりの快進撃は続くだろう。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

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