不倫疑惑の斎藤由貴さん、「転移性恋愛」の可能性…相手男性、医師として許されざる行為

不倫疑惑の斎藤由貴さん、「転移性恋愛」の可能性…相手男性、医師として許されざる行為

「Thinkstock」より

●転移性恋愛

 女優の斉藤由貴さんのダブル不倫疑惑が報じられたが、斉藤さんも、お相手とされた50代の妻子ある開業医も不倫関係を否定し、あくまでも「主治医と患者の関係」だと強調した。ただ、斉藤さんは好意があることを認めている。

 患者が主治医に対して恋愛感情を抱くことを、精神分析の創始者、フロイトは「転移性恋愛」と呼んだ。

 転移性恋愛とは、「ある婦人患者が、あたかも恋に陥って死ぬほどに恋い焦がれている女性のように、自分を精神分析治療している分析医を好きになってしまったことをはっきりした表現を用いてほのめかしたり、それを直接に口に出して言ったりする場合」であり、しばしば起こったという。

 ときには、「急に治療に対する理解と関心を失い、自分の愛情以外のことについては何ひとつ話したり聞いたりしなくなり、自分の愛情に応えてくれることのみをひたすら要求するようになる」こともあったようだ。

 精神分析は、密室で心に思い浮かんだことをすべて話さなければならない自由連想法で行われるので、転移性恋愛が起こりやすい。ただ、自由連想法を用いない一般の精神科治療でも、患者が主治医に恋愛感情を抱くことは結構ある。これは、自分の重要な秘密を打ち明けるからかもしれない。

 また、精神科だけでなく、内科、外科、産婦人科などの他科でも、患者が主治医に恋愛感情を抱くことはないわけではない。妊娠中の定期健診、あるいは不妊治療のために産婦人科に通院していた女性が男性の主治医に恋愛感情を抱いたケースで、相談を受けたことが何度かある。信頼、尊敬、感謝などが恋愛感情へと発展していくようだ。

 こういう場合、主治医が女性患者の愛情欲求を満たそうとせず、禁欲的に接すれば、女性の片思いに終わるだろう。一方、主治医が女性患者の愛情に応えると、のっぴきならない事態に陥ることもある。以前、勤務していた病院で、男性の外科医が担当患者だった人妻と心中を図った。空いていた病室にベッドを2台並べて横たわり、点滴ボトルに大量のインシュリンを入れ、点滴チューブで2人の体につないだのである。

●転移性恋愛の3つの帰結

 これはきわめて悲劇的な結末だが、転移性恋愛がめでたし、めでたしで終わることは、ごくまれなようだ。フロイトによれば、次の3つの帰結があるという。

(1)結婚する
(2)治療が中断する
(3)一時的な恋愛関係を結ぶ

(1)結婚がもっとも祝福される結末なのだろうが、これはめったにない。第一、転移性恋愛は治療関係を通して引き起こされるのであり、必ずしも医師個人の魅力や人柄によるわけではないので、結婚後に幻滅が待っているかもしれない。

(2)治療が中断するのは、主治医が患者の愛情欲求を満たさず、物別れに終わるからだが、こういう患者は新しい主治医にもしばしば恋愛感情を抱く。このように同じパターンの関係を繰り返すことを、精神分析では「反復強迫」と呼ぶ。平たくいえば、「二度あることは三度ある」ということだ。

(3)一時的な恋愛関係を結ぶのは、市民道徳に反するし、医師の品位にもかかわるので、本来あってはならないはずだが、実際には結構あるようだ。これは、慎重な態度を取ることができず、自分の欲望を満たすために転移性恋愛を利用する医師がいるからだろう。

●ニューヨークに4年もいたのなら

 斉藤さんが認めた相手の医師への好意は、転移性恋愛であるように見える。斉藤さんが6年ほど前に減量した際に、指導と管理を行ったのがこの医師だったらしいので、斉藤さんは信頼と尊敬を抱いているはずだし、減量のおかげで再ブレイクできたことに感謝してもいるはずだ。

 このような転移性恋愛に対して、「拒否すべき義務」が医師にはあるとフロイトは述べている。ところが、斉藤さんの不倫相手とされた医師の振る舞いは、禁欲的とはいいがたい。斉藤さんと指を絡めた“恋人つなぎ”の写真は、主治医と患者以上の関係という印象を与える。

“恋人つなぎ”について、この医師は「私は実はニューヨークで4年間仕事をしていましたので」などと弁明した。ニューヨークでは、ウッディ・アレンの映画の登場人物が何かあるたびに精神分析医のところに相談に行くのを見ればわかるように、かつて精神分析が盛んに行われていた。当然、医師と患者の関係で起こりうる転移性恋愛については、その危険性も含めて日本以上に研究されている。

 これは当然だ。(1)結婚で終わる転移性恋愛はきわめてまれで、(2)治療の中断や(3)一時的な恋愛関係が圧倒的に多い以上、患者の怒りや復讐心をかき立てる可能性が高く、訴えられるリスクもないわけではないのだから。

 そのニューヨークに4年もいたのなら、たとえ精神科医ではなくても、転移性恋愛についてもっと勉強するべきだった。転移性恋愛について知っていたら、「ボクの中でひとつの作品みたいな感じ」である斉藤さんに対してもっと慎重に振る舞えたのではないだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)

【参考文献】
ジークムント・フロイト『転移性恋愛について』(小此木啓吾訳『フロイト著作集 9 技法・症例篇』人文書院)

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