気がつけば仕事もお金もない…本当にヤバいフリーランスの老後 お金の完全マニュアル

気がつけば仕事もお金もない…本当にヤバいフリーランスの老後 お金の完全マニュアル

「Thinkstock」より

 安定した生活を求めて公務員が人気を集める一方、近年は「フリーランス=自営業」に憧れを持つ人も少なくない。フリーランスワーカーの人材紹介などを手がける「Waris」が行ったフリーランスの幸せ度に関する調査結果でも、フリーランスの人生満足度は日本人の平均よりも高い数値が出たという。

 確かに、満員電車に乗る必要がなく組織にも縛られず……といった自由なイメージのある自営業だが、その半面、月々の給料が保証されているわけでなければ退職金が出るわけでもない。収入は実力と努力次第という、厳しい世界でもある。そんな自営業者のなかには、老後に不安を持つ人が非常に多いという。

 では、自営業は自分の将来にどのように備えるべきなのか。『マンガ 自営業の老後』(文響社)の著者でイラストレーターの上田惣子さんと、同書の担当編集者の飛田淳子さんに話を聞いた

●なぜ危ない?「自営業の老後」の実態…

 タイトルからもわかるように、同書は自営業が抱く老後の不安と、その解決策について描かれたエッセイマンガ。発売直後からツイッターなどで話題となり、一時はAmazonランキングの総合5位に入った。

 担当編集の飛田さんは、「自営業の老後」というテーマを思いついたきっかけについて、こう語る。

「以前、老後のお金の本を出したとき、識者の方が『本当に厳しいのは個人事業主の老後だ』とおっしゃっていたんです。会社員向けの老後本はたくさんあるのに、自営業の老後をテーマにした本はあまりないんですよね」(飛田さん)

 自営業の場合、もらえる国民年金が少ない上に退職金もない。将来、自分の身に何かあれば収入はゼロになる。それでいて、老後対策を取っている自営業者はほんの一握り。ちなみに、作者の上田さんもその1人だった。

「もともと、お金に関することがとても苦手で、かなりのズボラ。恥ずかしながら、真剣に老後の生活設計を考えたことがありませんでした。それでも、若い頃から、締め切りを守って真面目にコツコツ働いてきた自負はあったので、細く長く老後まで仕事があると思い込んでいたんです。ところが、47歳を境にどんどん仕事が減っていって……」(上田さん)

 仕事が減れば当然、収入も減る。以前は年収1000万円を稼いでいたときもあったが、50代に突入したときには、その3分の1に激減した。

 上田さんの仕事が減った理由は、今まで仕事を発注してくれていた担当者が出世し、現場から離れたり退社したりするなど、周囲の変化もあった。

「上田さんのようにきっちり仕事をこなしているのに『40代後半に差しかかった頃から仕事量が減った』というフリーランスの方は多いようです。特に受注が中心の業種は、発注側が管理職になり現場から離れることで、長年実直に働いてきた人への仕事の依頼が減るという現実はあるかもしれません」(飛田さん)

 真面目にコツコツ働いてきたにもかかわらず、ある時期から仕事が減って老後の不安に襲われる。それが自営業者の現実なのだ。

●自営業の老後対策…意外と知らないお得な制度

 同書には、さまざまな自営業者や専門家に話を聞き、上田さんが「お金を整える」までが描かれている。そこで、取材を通して学び、実践した老後対策を教えてもらった。

【確定拠出年金(個人型)】
国民年金や厚生年金などの公的年金とは別にお金を積み立てる“私的年金”。掛け金は5000円から6万8000円(国民年金基金と併用する場合は合わせて上限6万8000円)。受け取りは60歳以降だが、掛け金の所得控除、運用益非課税などの税制優遇がある。

【小規模企業共済】
自営業者が自ら退職金を準備する共済制度で、加入資格は従業員20人以下の個人事業主。1000円から7万円の掛け金をかけ、廃業時にはそれまでに積み立てた金額に1〜1.5%ほどの金利がつく(例:上限の7万円を30年間かけ続ければ、廃業時の受取額は約3000万円となる)。

 ちなみに、確定拠出年金や小規模企業共済は国の制度なので、所得が控除されて節税対策にもなるという。年金の専門家の田中章二氏は、同書で「公的なものを目一杯利用したうえで薄いところを民間の保険でフォローします。気になるところを掛け捨てでかける」と勧めている。

「仮にお得な年金制度があっても、国は教えてくれないんですよね。本をつくる前の私のように、『どうせ少ししかもらえない』と思って、国民年金を納付せずに民間の個人年金や生命保険に入っているという人もいるかもしれません。確定拠出年金や小規模企業共済は、老後対策として基礎の基礎なので、ほかにもお得な情報はたくさんあると思います」(上田さん)

 自営業は、業務も経理もすべて自分が担当する。定期的に税制や年金の専門書を購入し、勉強会に参加するなど率先して学び続けなければ、大きな損をしてしまうという。

●90歳までの「生涯収支」を出せば老後が見える

 自営業者には、日々の仕事に追われ、お金のことを考える余裕がない人も多い。そうした生活を送っているうちに、「いざ仕事がなくなると、どうしたらいいのかわからなくなってしまった」と上田さんは語る。彼女のように、「とにかく将来が不安」という人は、一度「生涯収支」を算出すべきだという。

「生涯収支の出し方は、公認会計士・林總(はやし・あつむ)先生のレクチャーによるものです。現在から90歳までのお金の流れを、その年ごとに書き出して把握する。これからの人生で起きる、結婚や出産、趣味などのイベントに『いくらかけたいか』を自分で決め、その金額を予測することで、老後に必要な金額も見えてくるんです」(飛田さん)

 生涯収支を出すには、まず普段の会計管理を整える必要がある。すべての預貯金額や自宅、株、保険などの財産から自宅ローン、借金、奨学金などのマイナス財産を差し引いた純資産を算出し、「財産目録」をつくる。次に、1カ月の収支を出し、12カ月分をかけて臨時収入を加えれば、大まかにせよ1年間の合計収支を算出できる。

「1年間の合計収入と合計支出が出たら、『老後にどんな生活をしたいか』を目安にして収入予測をします。その後『老後に何をしたいか』という考えで支出予測をしていきます。

 上田さんの場合は、65歳までにもう1軒家を買うことでした。ローンが組めないので、キャッシュで買うには年間でいくら稼がなければいけないかなど、『イベント』にかかる費用を具体化していくと、70歳まで働いて年収200万円を維持する必要があることがわかりました。

 このように、90歳までの収支を具体的に予測することで、長期間の収支を大づかみし、必要な備えを得られるのが、生涯収支を出すよさです」(飛田さん)

 上田さんは、約1年間をかけて90歳までの生涯収支プランを作成し、大まかに計算した結果、104万円のマイナスがあることが判明した。このマイナス分を、これから調節していくという。

「時間はかかるのですが、不安だった部分が見えてきて、これまで自分がいかに漠然と働いてきたかを痛感しましたね。でも、プランによって老後の目標とやりたいことがはっきりしたので、働くモチベーションも上がりました。20代、30代など年齢にかかわらず、生涯収支の算出はとてもおすすめです」(上田さん)

 上田さんの理想の老後は「心身ともに健康で、死ぬまで仕事をすること」だという。ずっと好きな仕事ができることこそ、自営業の最大のメリット。その未来を迎えるためには、さまざまな備えが必要なのだ。
(文=真島加代/清談社)

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