派遣・契約社員等、通算5年超だと無条件で定年まで労働可能に…8割の社員が制度知らず

派遣・契約社員等、通算5年超だと無条件で定年まで労働可能に…8割の社員が制度知らず

「Thinkstock」より

 パート・アルバイトや派遣社員、契約社員が契約更新を繰り返し、通算5年を超えれば、契約更新せずに同じ会社の正社員の定年まで働ける制度が2018年4月からスタートする。

 2013年4月に施行された改正労働契約法18条は、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、無期労働契約(期間の定めのない雇用契約)に転換できることを定めている。つまり「私は無期転換を希望します」と手を挙げれば自然に無期労働契約が成立し、会社が断ることはできないのだ。

 具体的には通算5年のカウントは2013年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象になり、同年3月31日以前に開始した契約は通算期間に含めない。したがって契約期間が1年の場合、更新を繰り返して6年目の更新時を迎える18年4月1日から労働者は無期転換の申込みができ、1年後の19年4月1日から無期労働契約に移行する。

 仮に18年4月1日から1年間の契約期間に無期転換の申込みをしなくても、次の更新以降でも申込みができるので無期転換権が消滅することはない。また、契約期間が3年の場合は5年を経過しなくても更新すれば通算契約期間が6年になるため、4年目の16年4月以後にすでに無期転換権が発生していることになる。

 ただし、無期労働契約に移行しても待遇が正社員と同じになるわけではない。労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定めがないかぎり、直前の有期労働契約と同一になる。つまり、有期から無期契約に変わるだけで、正社員の労働条件と同じにする必要はない。

 給与は今と変わらないし、正社員と同じになるわけでもないから無期転換の申込みはしないという人もいるだろう。だが、少なくとも「契約更新されるかわからない」という不安やリスクからは解放されるし、無期転換しても辞めようと思えばいつでも辞められるのだ。

 また、正社員と同じ定年までいられるとなれば、会社の事情で正社員に欠員が生じれば同じ待遇を支給される可能性もある。あるいは正社員と似たような仕事に携わることになれば、19年4月施行予定の「同一労働同一賃金制度」の法制化によって、ボーナスや諸手当、退職金も支給されるようになるだろう。

●周知しない企業

 有期契約で働く人にとっては決して損ではない「無期転換ルール」なのだが、じつはこのことを知らない人が多いのだ。

 労働組合の中央組織である連合が全国の20歳〜59歳の有期契約労働者を対象に行った調査(17年7月20日発表)によると、「ルールの内容まで知っていた」人はわずかに15.9%。「ルールができたことは知っているが、内容までは知らなかった」が32.9%。そして「ルールができたことを知らなかった」が51.2%と半数に上っている。内容まで知らなかった人を合計すると84.1%に上る。

 すでに無期転換開始まで1年を切っているというのに、有期契約労働者にとってこんな大事なことを知らないというのはちょっと異常ではないだろうか。このような事態が生じている理由は、じつは会社が有期契約社員に知らせていないからである。

 なぜなら労働政策研究・研修機構の企業調査(常用労働者10人以上を雇用する9639社を集計/5月23日発表)によると、企業の半数は「改正内容まで知っている」と回答し、「改正されたことを知っている」と回答した企業を合計すると9割弱になる。ほとんどの企業は無期転換できることは知っている。

 また、連合の調査ではルールができたことを知っていた有期契約労働者に、どこで知ったのかを尋ねている。「マスコミ(テレビや新聞報道など)」が最も多く、50.7%。「インターネット」が26.0%であり、「勤務先からの説明」は35.9%にすぎなかった。この結果を見ても企業は無期転換ルールをあえて従業員に周知しないようにしているとしか思えない。

 その最大の理由は有期契約労働者を無期雇用にすれば、必要に応じていつでもクビを切れる便利な「雇用の調整弁」としてのメリットがなくなるからである。できれば今のままの契約更新の仕組みを温存したいのだ。

●懸念される「雇止め」

 無期転換ルールに企業はどのように対応しようとしているのか。多くの顧問先企業を抱える社会保険労務士はこう指摘する。

「大手小売業やサービス業のように正社員を含めてパート、アルバイトの確保が非常に厳しい企業は正社員化していきたい企業が多い。なかには5年の無期転換を待たずに、正社員に登用するなど囲い込みを図っている企業もあります。でもこれは全体からいえば、一部の企業にすぎません。メーカー系など正社員が全体の9割超を占めるような企業など、対象者が少ない企業は積極的に無期雇用化をしようとは考えていませんし、従業員への周知もしていないのが実状です。

 仮に有期契約社員が無期転換を申し出たら無期契約にせざるを得ませんが、その場合は『無期に変わるだけで処遇は従来と何も変わりませんよ』と言ってメリットがあまりないことを強調してくるかもしれない。中小・零細企業のなかには最低賃金の給与を払っている製造業がたくさんあるし、有期を雇用の調整弁だと思っている社長も多く、無期転換になってちょっとでも賞与を上げるという発想もありません」

 こうした企業において無期転換に際して最も懸念されるのは、通算5年を超える前に使用者が更新を拒否し、契約期間満了で雇用を終了させる「雇止め」だ。現在、企業などに周知活動を行っている厚生労働省が問題にしているのも雇止めだ。

 厚労省の担当者はこう話す。

「無期転換を避けることを理由にした直前の雇止めは、雇用の安定を図るという法の趣旨に反する。また、雇止めの前に更新回数や更新年限の上限を設けるというルールの潜脱も想定される。たとえば『1年の有期契約を前提に更新回数は4回まで』というルールを免れる規定を設けても、それがあるからといって必ずしも雇止めをすることが許されるものではない。そのことを含めて啓発指導していきたい」

 今後、企業のなかにはさまざまな理由をつけて無期転換させないようにしてくるところがあるかもしれない。だが、決して言いなりになるのではなく、堂々と権利を主張すべきだろう。
(文=溝上憲文/労働ジャーナリスト)

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