コンビニに置かれなくともエロ本は死なず!ただしグラフ誌はすでに壊滅状態の模様

コンビニに置かれなくともエロ本は死なず!ただしグラフ誌はすでに壊滅状態の模様

「千葉市」公式サイトより

 コンビニに陳列されている成人向け雑誌をフィルムで包み、扇情的な表紙を見えないようにする――千葉市が行おうとしていた事業が、予定していた市内のコンビニ店に協力を断られ難航していると、地方紙「千葉日報」などが9月6日付けの紙面などで報じた千葉市のコンビニ成人向け雑誌・フィルム包装騒動。

 大阪・堺市も昨年3月に同様の事業を行おうとしたところ、日本雑誌協会と日本書籍出版が連名で「成人に対する図書選択の自由を阻害する」といった声明を発表。“表現の自由”を阻害しているのではという論争を巻き起こしたあげく、肝心のコンビニ店舗からの協力を得られず、80店舗で実施する予定が12店舗にとどまったというニュースも記憶に新しいところだろう。

 だが、フィルム包装自体には千葉市民の賛成が過半数を占めており、さらに「2020年に開催される東京五輪を機に、成人向け雑誌にもさらなる規制が入るだろう」と推測する声も多く、成人向け雑誌業界に逆風が吹いているのは間違いない。

 というわけで、グラフ誌(3次元)とマンガ誌(2次元)の両方で月刊誌の編集に携わったことがあるという業界歴約30年のベテラン編集者・A氏に、堺市&千葉市によるフィルム包装騒動についての感想から今後の展望、そして成人向け雑誌の現状について語ってもらった。なおこの稿では成人向け雑誌を、敬意を込めてあえて「エロ本」と呼びたい。


●「そもそもグラフ誌はもうどこもかなり厳しいというか、ほぼほぼ死に体」

――一般紙含めて、あちこちで話題になりましたが、千葉市のコンビニエロ本・フィルム包装騒動を現場の人としてはどう受け止めましたか?

A 結局、千葉市はお願いしますとは言っていても、根回しはちゃんとやっていなかったんだろうね。お金かけてフィルムを用意すれば何だかんだやってくれるだろうと思っていたんだろうけど、「え、聞いてませんけど」と。端から見てても、今のコンビニは仕事が多いものね。法律や条令で命じられたのならともかく、そんな一手間をかける余裕はなかっただろうな――ぐらいかな、感想は。

 封印シールみたいに、印刷所の段階で袋詰めするしかなかったと思うけど、堺市のときに日本雑誌協会が反対表明するぐらいだから、出版社側が協力するわけないし。ただ、今回の堺市や千葉市はともかく、2020年の東京五輪の際にはさすがに何かしらアクションがあるだろうから、そこについては以前からずっと話し合って、対策を考えてはいるけどね。

――まず都内は厳しそう、という感じですよね。

A そうそう。五輪の期間内だけ袋詰めにするか、いっそのこと期間内は都内のコンビニには置かないとか。ただ、具体的にどんな規制が入るのか、19年になるぐらいまではまだ分からないから、いろんな場合のことを考えてはいるけど。

 ちなみに今コンビニにおいてあるエロ本で、どうにか元気なのはエロマンガだけなんだよ。グラフ誌はもうどこもかなり厳しいというか、ほぼほぼ死に体。コンビニに置かれているエロ本に規制が入ることで、「業界壊滅か!?」みたいな内容の記事をネットニュースで見たことがあるけど、実はもうすでにほぼ壊滅しているという。

――コンビニにはグラフ誌もそれなりの種類が置いてあるように見えますけど。

A たしかに置いてあるけれども、DVDが2〜3枚ついていて、雑誌といいつつ紙のページは2〜4折ぐらいしかなくて(32〜64ページ)、しかも素材は全部AVメーカーからの借り物みたいな本も多いじゃない。安く作って、大量に戻ってくる(返本される)ような。

 何冊か作ったこともあるけど、半分以上戻ってきていたからね。とはいえ、全国的に書店の数が減ってきているし、エロ本を置かない書店も多い。やっぱりコンビニで売るしかないんだけど、コンビニでもなかなか売れない。実際、今コンビニで動いているエロ本というのは、基本マンガばかりなんだよね。

――言われてみれば、結構な数のグラフ誌メインのエロ本出版社が倒産したり、整理されたりしています。

A エロマンガを持っていない、グラフ誌中心のエロ本系出版社はかなり潰れたよね。ここ何年かだけでも英知出版、司書房、東京三世社、サン出版……ミリオンもかなり厳しいと聞くからね、『実話ナックルズ』とかががんばっているけれども。

――グラフ誌系のエロ本で、歴史と由緒があって、毎月ちゃんとしたものを作っているという雑誌は本当に減りましたよね。

A 減った減った。今はもう皆ネットだよね。とりあえずコンビニに置いてある雑誌には、そういう歴史があってちゃんと作っているというエロ本はもうないんじゃないかな。

――そういうエロ本を作っていた人たちって、編集者、あるいはライターとしての腕はいいんだけど、会社を作って経営者になってみたりだとか、編集から離れた事業を起こしたりだとか、そういう政治力や商売っ気が薄い人が多い印象があります。

A ああ、多いね多い! 社内で出世していくのって結局政治力だと思うんだけど、編集が上手な人に限って政治力がないから、辞めていっちゃう。だから社内に残って偉くなった人は編集業が下手な人が多い(笑)。ただ、ネットに乗り換えてうまくいった人も多いからね。


■「コンビニで売れなくなっても、それはそれでラッキーというか、一つチャンスだなと」

――コンビニエロ本の話に戻しますが、封印シールの導入前後くらいから、そもそもエロ本を置いていないコンビニも増えましたよね。

A そうそう、それに全体的にエロ本コーナーがどんどん小さくなっているよね、完全に撤去まではしないにしても。あれ、入れる雑誌の種類が減ってきているんだよ、たとえば人妻系エロ本を今までは3〜4誌入れていたところを一番売れている1誌だけにするとか。極力エロ本を目立たなくしようとしているようには感じるね、今回の件を抜きにしても。

 とはいえ、現状ではエロマンガもコンビニで売らないと厳しいは厳しい。最近はかつてのエロ劇画ほどではないけど、ちょっと線とか演出が濃い目で、女の子の年齢が高めのエロマンガとか、そういうニッチで、ほかがやっていないマンガ誌を作ってヒットさせている会社もあったり、いろいろ工夫しながらがんばっているところはがんばっているけどね。

 ただね、これは業界でも珍しいかもしれないという意見かもしれないけど……個人的には、20年の五輪前後で、もしコンビニで売れなくなったとしても、それはそれでラッキーというか、一つチャンスだなと思っていて。

――ほう。それは何故ですか?

A 配信に全振りできるから。紙代がかからなくなって原価率も下がるし。今、配信を専門でやっているマンガサイトと紙のエロマンガを比べると、やっぱり紙のほうが歴史とブランドがあるだけに、実力あるマンガ家を多く抱えている。たとえばエロマンガ家を志望している子がどっちを選ぶかとなったら、やっぱりまだ紙のほうなわけよ。『快楽天』(ワニマガジン)なんかで連載できるとなったら、すごい宣伝にもなるわけだから。

 コンビニでエロ本が置けなくなったら、マンガ誌は皆配信事業に乗り出すだろうけど、ブランド力で配信専門サイトに全然勝てるだろうし、雑誌は売れなくても単行本は結構売れている。配信をやりながらしっかり単行本を出せれば、今より儲かっちゃうんじゃないの? という気もするね。

――自分が有望な新人マンガ家だとして、『週刊少年ジャンプ』と配信サイト、どっちにも連載できるけどどっちにすると聞かれたら、やっぱりジャンプ、紙媒体を選ぶと思います。

A そうそう。いや、もちろん配信サイトからヒット作も出ているし、面白いマンガもたくさんあるけど、やっぱり何十年と紙を発行し続けてきたブランド力というのもそれはそれで凄いからね。何十年か先にはどうなるか分からないけど。ま、「ピンチをチャンスに」じゃないけど、ブランド力がそれなりにあるところがマジメに配信事業に乗り出せば、コンビニでエロ本が売れなくなってもどうにかやっていけるんじゃないかな。グラフ誌は厳しいだろうけど。
(取材・構成=編集部)

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