相次ぐミサイル実験…ついにICBM&核も成功?北朝鮮の脅威と日本のミサイル防衛力とは

相次ぐミサイル実験…ついにICBM&核も成功?北朝鮮の脅威と日本のミサイル防衛力とは

『自衛隊の戦力―各国との比較』(メディアックス)より

 相次ぐミサイルの発射実験に加え、9月3日には「大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に完全に成功した」との声明を発表した北朝鮮。

 1993年に準中距離弾道ミサイル・ノドンの発射実験を行ったことを皮切りに、常にミサイルの開発を進めていた北朝鮮だが、ニュースを見ている限り、ここ数年は特に発射実験が頻発し、開発ペースも上がっているようにも感じてしまうが、実際のところどうなのか。

 多数の関連著書を残しているほか、「平成29年度富士総合火力演習」中継放送のコメンテーター、さらにアニメ『東京マグニチュード8.0』や『ヱヴァンゲリヲン』、映画『亡国のイージス』の監修を務めるなど、多方面で活躍する軍事ジャーナリスト・菊池雅之氏に、現在の状況について解説していただいた。


●北朝鮮の核搭載ICBMの完成はもうすぐそこ

――北朝鮮がミサイルや地下核実験と思われる実験をバンバン行っています。北朝鮮が実験を行っているミサイルとはどんなもので、今行っている実験にはどんな目的があるのでしょうか。

菊池雅之(以下、「菊池」) 彼らが言っているように、やはりICBMへの核搭載が最終目標で、すべてはそこに向けての実験です。ICBMは飛行距離をのばすため、ブースターを3段に分けて飛ばします。そこで、今後も訓練や発射実験が必要になると思います。一方で、8月29日に単段式のICBMではない火星12(中距離ミサイル)を撃っています。今は、いろいろなバリエーションの弾道ミサイルを撃ちまくっている状態なんです。それらも含めて、最終目標は核ミサイルの所持であるのは間違いないです。

――日本や韓国どころか、アメリカの西海岸まで届くような。

菊池 そうですね。火星14などは完全なる“対米国”を念頭とした射程1万キロを超えたれっきとしたICBMです。もう理論はできつつあるので、訓練を重ねていき、発射のための予算を確保する、といったところが整ったらもう完全に完成といえる段階です。

 ただ、だからといって日本としてはむやみに危機を煽る必要もないと思います。北朝鮮の目標は世界征服ではなく、現体制のもとでの朝鮮半島統一ですから。そのために韓国の動きを封じなければいけないけれど米軍が厄介である、ということでミサイルを開発しているわけです。米国を直接攻撃することは身の破滅を意味しますから、それは最後の手段。「開発しました、持っていますよ、ほら実験もしました」というところで止まるはずなんですよ、よっぽど現在の金正恩体制が変な具合に暴発しない限り。

 東西冷戦と一緒で、お互いにこめかみに拳銃を突きつけあって平和を保つという状態がまた新しくできつつあるのではないでしょうか。これが健全かどうかの議論は置くとして、そういった状態で安全というか平和はまた保たれていくのではないかと思います。

――さまざまな報道に接されても、開発は進んでいると感じられますか?

菊池 はい、進んでると思います。今までの発射方式と違って、8月29日の発射は、ミニマムエナジー軌道という本当に遠くまで飛ばすための撃ち方を試していますね。これまでのオフテッド軌道という、真上に打ち上げて、そのまま落とす発射実験よりも実戦的になっています。これは日米を震撼させました。

――Jアラートが鳴り響いて、早朝の日本人をビビらせたあれですね。

菊池 はい、あれです(笑)。あの撃ち方を試したことはすごく意味があるんです、グアムにも届くんだぞっていうのを見せつけたわけですから。一方でトランプ大統領はレッドライン超えたら報復すると繰り返し発言していますが、そのレッドラインの内容を明確に一度も示してない。

――当初はICBMを作るというのがレッドラインでは、と予測されていました。

菊池 最初は「ICBMを作ったら」……その次は「核を持ったら」……と、結局どんどん妥協してレッドラインを引き延ばしている現状ですよね。米国としても落としどころを探っているんでしょうし、北朝鮮もそこを見越しているんでしょう。

 中国も結構強硬なことを言っているようで、北朝鮮がなくなって国境を直接韓国と接する、要するにアメリカと接することがすごく怖い。今の形の北朝鮮が残ってくれるほうが、中国にとっても都合がいいわけです。そうやって各国が自分の利益を考えて、ズルズルとなっていくなかで、もう少し発言力が欲しいと、ちょっと強硬に出たのが今の北朝鮮ということだと思います。


●やっぱり厳しい日本のミサイル防衛能力

――日本人的にはICBMではなく、飛距離が短いけど日本だったらどこでも届くノドンやテポドンが心配という人が多いと思います。

菊池 迎撃は難しいですね、確率の話をすると高くはないと思います。日本を射程に収めているミサイルを200発以上は持っているとされていますが、発射機はそれほど保有していないので、同時に100〜200発も撃つことはないと思います。ただ、今現在、日本の対処能力はかなり低い。ミサイルの飽和攻撃をされたときは無力と言えるかもしれません。

――日本の迎撃システムとしてはイージス艦発射型弾道ミサイル防衛システム(=イージスBMD)があって、PAC3があるわけですよね。

菊池 そうですね。ミサイルが発射後一度宇宙に上がるミッドコース・フェイズ(中間段階)と言われる宇宙空間を飛んでいるところをSM-3で、さらにその後、大気圏へ再突入して地表に落ちてくるところをPAC3で落とすという2段構えなのです。やっぱりミサイル防衛は結局100%に近くしないといけないところですが、たとえば米国の現体制でも80%なんです。米国でさえ20%の撃ち漏らしが存在するということですから、日本は撃たれたらだいぶ厳しい。

――かなりの確率でダメージを食らってしまうだろうと。

菊池 そこで、陸上イージスの配備が決まりました。SM-3を補完し、迎撃確率を高めようとしてはいます。ただ、その「イージス・アショア」と言われる陸上イージスの配備は今年来年の話ではなく、まだまだ時間がかかると思います。今の北朝鮮の開発速度などを考えると、やっぱり脅威ですよね。

――素人的には北朝鮮がミサイルを撃ちそうだという情報を米軍などはキャッチしているみたいですよね。先制攻撃はともかく、発射直前直後や、離陸直後の速度が乗っていないミサイルなら、米軍などであれば簡単に撃ち落とせそうと思うのですが。

菊池 それはできると思います。ただ、結構問題になっているのが――たとえば8月29日に発射されたミサイルは襟裳岬の上空550キロを通過しましたが、550キロはもう宇宙なんですよ。地表から100キロ、10万メートルより上空は宇宙なんです、国際航空連盟などの定義的には。

 そして、今のところ宇宙空間は誰のものでもなく、領空という概念がない。ということは、宇宙空間でミサイルを撃ち落とすための根拠がすごく大事になってくるんです。必ず我が領土に落ちてくると判明すれば、個別的自衛権の行使としてアメリカだろうと日本だろうと撃ち落とすことができますが、それがまだ判然としていない場合や、公海上に落ちそうだという場合、ミサイルを撃ち落とした側が戦闘行為をしかけたことになってしまう。アメリカは傍観しているわけではなく、撃ち落とす根拠が薄い。アメリカ領海に落ちると確信を持てた場合は何かしらアクションを起こしたかもしれませんが、前回のミサイルでも、まだそこまでのことではないと判断したんでしょう。

――SFなどでも宇宙で戦争をとなった時、ではここは誰の領域かというと誰のものでもないみたいな話題がたまに出ますね。

菊池 そうですね。宇宙はみんなのもので、宇宙軍ができるとしたら、『機動戦士ガンダム』の地球連邦軍のような、統一政府なり連合国となるのでしょうか。南極や北極もそうなんですけど、なるべくそういう領土意識を持たないようにしようとなっていて、ちょっとアンタッチャブルな話題になっているんです。

 ただ、弾道ミサイルは、撃ち上げ後は推進力を持ってないので、撃ち上げた時のスピードと角度でどこに落ちるか、推測することは実はそれほど難しくないんです。ですから、Jアラートを鳴らした理由も、襟裳岬の真上を通る際、「飛び越えるはずだけど北朝鮮側の事故やミスでミサイル本体や部品が落ちてくる可能性があるので、付近の方は逃げてください」という警報であって、「ミサイルが落ちてきます」というものではなかったわけですから。


●三沢航空基地をにぎわせたB-1が空爆を担う

――せっかくの機会なので、レッドラインをどこかのタイミングで超えて、トランプ大統領が激怒、米軍が攻撃開始となった場合、どんな攻撃が考えられるものか、教えてください。

菊池 金正恩党委員長がやたらと「グアムを攻撃する」と発言している理由は、B-1ランサーという爆撃機が現在グアムのアンダーセン空軍基地に前方配備されているからです。なぜならば、B-1での空爆が第一波攻撃となるからです。

 米国空軍には他にもB-52とかB-2といった爆撃機があります。なぜそれらではなくB-1かというと、B-52とB-2爆撃機は核が搭載できるんです。一方でB-1は核を搭載できないんですね。昔、B-1も核が搭載できた時代があったのですが、今のB-1はそのシステムを持ってないので、撃ち出すことができない。その機体をグアムに配備したというのは、世界にも「もしかしたら先制攻撃はするかもしれないけれど核攻撃はしないよ」とメッセージを送ったということなんです。

 つまり米国としては、我々はルールを守った21世紀型の戦争をしますよというアピールをしているわけです。ただ、B-1は巡航ミサイルや精密誘導爆弾などを、大量に搭載できるんです。しかも、爆撃機でありながらシルエットを見ていただくとわかると思いますが、可変翼機といって、翼を可変させることでスピードコントロールができて、最大マッハ1〜1.25というスピードで飛ぶことができるんです。

――あっという間に射程距離まで到達できてしまうんですね。

菊池 グアムから3時間程度で朝鮮半島に近づいて、バッと撃って逃げることができる。やはり北朝鮮にとっては脅威なので、突然グアムを攻撃すると言い出したのは、米国がグアム基地にB1を暫定配備して、さらに韓国空軍や航空自衛隊と共同訓練をしたことが、プレッシャーになっているのもしれません。

 ちなみに9月10日に行われた航空自衛隊と米空軍が共同使用する三沢基地(青森県)の航空祭に、B-1が参加しました。あの機体がどこから飛んできたかというのと、やはりグアムからなんです。マニアたちは大喜びでしたが(笑)、ここでみんなが航空祭で撮影したB-1をSNSなどでアップすることで、北朝鮮に今は三沢にいるのかと思わせることができる。こういった脅しをトランプはずっとかけているんですね。

――B-1で狙うのはやはり国会議事堂(万寿台議事堂)などでしょうか。

菊池 まず(ミサイルの)発射台を叩くでしょうね。弾道ミサイルの発射基地は、人工衛星やスパイ活動諜報活動である程度どのエリアにあるっていうのはわかっていますから。そういったところをB-1の巡航ミサイルや誘導爆弾、あわせてイージス艦や潜水艦からの巡航ミサイルで攻撃するのではないかなと。

 ただ厄介なのは韓国。何と言ってもソウルと平壌の距離が近すぎる。今、北朝鮮は3,000門とかもの凄い数の大砲を持っていて、そのうち1,500門ぐらいが国境近くに配備されています。DMZ(非武装地帯)エリア外に置いてあっても、普通にソウルまで届くんです。これを一気に全部叩くのは、いくら米軍でも至難の技です。米軍が何か仕掛けたら、韓国が無傷でいられるわけがない。だから韓国の文在寅大統領が北朝鮮のミサイル実験に抗議はしつつも、米軍に勝手に攻撃させないなどと発言しています。勝手に攻撃されると韓国の被害が甚大であることを改めて訴えるためだったんです。

――米軍に攻撃された場合、北朝鮮が韓国を攻撃する可能性は高そうですか?

菊池 いわゆるハチの一刺し、スカンクの最後っ屁という感じですが、そうなる可能性は高いと思います。また、北朝鮮から韓国に通じているトンネルが今でも数年に一度発見されていますけど、今でも脈々と掘り進んでいるところがあると思いますし、さらに北朝鮮は特殊潜水艇(特殊部隊を送る潜水艦)を多数保有しています。江陵浸透作戦という事件もありましたが、北朝鮮はこれまでも韓国領土に工作員や特殊部隊を送り込むということを何度もやっています。

 そういった戦争を米国や韓国に仕掛けてくるんだろうなと思うんです。ですから米国の第一波攻撃で北朝鮮は相当な被害を受けるでしょう。しかし、今のアフガニスタンやシリアのように、その後はすごく長くなるのではないかと予想されます。米国はそういう戦争は苦手なんですよ。ベトナム戦争がそうだったように、中長期化してしまうと軍の士気も保てなくなってしまう。難しいところですよね。


●対北朝鮮を名目に、対中・露を見据えた開発を

――ここ数カ月、北朝鮮のミサイルなどの実験が活発になってきて、お話を聞きにきたわけですが、かなり以前から北朝鮮は同様の実験を繰り返してきていたんですよね。

菊池 とにかく発言力を高める、米国などと対等に交渉するための力を手に入れようと、金正恩のお父さん、金正日の代から続けてきたミサイル開発を継続しているわけで、今の代になって突然始めたわけではないんです。

――まず93年にノドンの発射があって、その後90年代後半にテポドンが登場して。

菊池 核開発も2006年から始めていますからね。ずっと続けてきたことです。そもそもでいえば、金正恩の祖父、金日成がやってきた活動を金正日が継続したという一面もあります。だからミサイル開発も、ここ数年のペースが速いのは事実ですけれども、ずっとやってきたものが最近になってようやく形になってきたという感じでしょうか。だから、何を今さら、国際社会は今まで無視し続けたじゃないかという言い分が北朝鮮にはあるんです。これまで形だけの抗議を行うだけだったのに、今になって急に袋だたきにしましょうっていうのはどうかとかんじる部分もありますが、だからといって金正恩のやっていることが正しいわけではないので、今こそ国際社会としてきちんと対応しないといけないとも思います。

――今後も北朝鮮の開発は進んでいくだろうし、かといってなかなか手のつけようがない。もう日本とアメリカはがんばってミサイルを迎撃できるシステムを作っていくしかないという感じですかね。

菊池 そうですね、はい。それに北朝鮮だけでなく、中国やロシアもICBMを持っているわけです。アメリカもやっぱり狡猾で、結局対北朝鮮を謳いつつ、遠くに対中国や対ロシアも見据えているんだと思われます。北朝鮮がミサイルの開発や核実験を今日からすべてやめますと言ったところで、ミサイル防衛システムの研究が続くのは間違いない。今、弾道ミサイル迎撃システム開発はアメリカにとってすごく重要なので。

――独裁政権ですし、対北朝鮮だとカドが立たないですものね。

菊池 日本だってそうですよね。

 ただ弾道ミサイル迎撃システム開発を反対する人がいると、それを保守系の一部の人が「日本が攻撃されもいいっていうのか」と、アメリカをフォローするような発言がSNS上のいろんなとこであって。それも事実ではあるんですけど、でもちょっと浅いんですよね、その意見では。結局アメリカは対ロシア、対中国を見据えたシステムを作ろうとしているので。 

 対中国、対ロシアだと世論を納得させるのも難しいでしょうが、対北朝鮮であれば、日本国民も韓国国民も納得します。文大統領だって、THAADを置いたら公約違反になってしまうと発言していましたけど、8月29日のミサイル発射以来、やはり置きましょうと方向転換したじゃないですか。しかも当初は2基だったところを追加して、計6基で協議を始めたという報道もあって。

 大統領の発言をひっくり返すぐらい影響があるわけですから、米国も乗り出しますよね。だって弾道ミサイル迎撃システムをつくるというのは莫大な予算がかかりますから、通常はなかなか賛同を得られません。なにせ半分ぐらい宇宙戦争ですしね。

――上空何百キロというところが舞台ですものね。

菊池 地球の外で撃ちあうなんて、僕の世代からすれば『ガンダム』の世界の話ですよ(笑)。いよいよ究極的な局面だなと思いますし、完璧な防衛を期するのであれば、もう何かを宇宙に打ち上げて、そこから撃つんだって話にゆくゆくはなってしまうのではないでしょうか、宇宙基地とか宇宙戦艦的なものを。事実、迎撃兵器を宇宙に打ち上げる話はこれまでもありましたから。

――不謹慎ですが、ロマンを感じざるを得ないお話ですね。

菊池 技術者は感じているかもしれませんね、やるやらないは別として。今というのは、そういう時代になってきていると思います。
(取材・構成=編集部)

『自衛隊の戦力―各国との比較』
出版社:メディアックス
著:菊池雅之
発売:7月27日
定価:1,080円(税込)
ISBN/JAN:978-4-86201-867-0
公式サイト:http://www.mediax-co.com/mediax_2013/?p=4436

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