私が次々襲って来る細かいクレームを激減させた方法…クレームの「本当の原因」

私が次々襲って来る細かいクレームを激減させた方法…クレームの「本当の原因」

菊原智明・営業サポート・コンサルティング代表取締役

 仕事のパフォーマンスを著しく損なわせる要素はなんだろうか?

 そう質問されれば、多くの方は「お客様からのクレーム」と回答するのではないだろうか。気分よく仕事を進めていた時に、突如としてクレームが発生する。そこから潮目が変わり、様子がおかしくなった経験が一度や二度あるだろう。誰でもクレームは嫌なものであり、できればかかわりたくないと思う。

 営業職では、クレームのダメージは顕著に現れる。クレームを抱えた営業担当者は実力の半分も力を発揮できなくなり、あっという間にスランプ状態になってしまう。そこからV字回復するケースもあるが、そのまま会社を去っていく人も少なくない。本当に恐ろしいことだ。

 では、本来持っている力を蝕んでいくクレームはなぜ発生するのか?

 もちろん不可抗力で起こることもある。しかし、クレームの大半は自分自身で種をまいている場合が多い。これは私自身が身をもって体験してきた。私は“クレーム産業”といわれる住宅営業を11年間経験してきたのだが、その間、さまざまなクレームを頂いた。

 やはり、ほとんどは自分自身に問題があった。そして、そのたびに痛烈なダメージを受け瀕死の状態に。ぎりぎりクビにはならなかったものの、成績はどん底だった。

●優良客をクレーム客に

 今でも後悔している、お客様の事例をお話しさせてほしい。

 50代後半のお客様との家づくりでのこと。25年住んだ自宅を解体して建替える計画だった。私と会社を信用いただき、請負契約を結んでいただいた。打合せを十分に重ね、工事がスタート。今まで住んでいた家を解体する際の騒音などの問題は多少発生したものの、順調に工事は進み、無事に家を引き渡すことができた。

 お客様には私たちの仕事に大変満足していただいたようで、「いろいろとお世話になりました。これからお客様をたくさん紹介しますから」と手を握ってくれた。営業担当者として一番うれしい瞬間である。

 それから2カ月ほど経った時のこと。このお客様から、「ちょっと、見てもらいたい部分があるのですが」という連絡が入った。話を聞くと天井の一部に段差が出てきたということ。このお客様からの着信を見て、「もしかしたら紹介をもらえるのでは?」と思っていたこともあり、ちょっとガッカリしながら「わかりました。アフターメンテナンスによく言っておきます」と電話を切った。その後、メンテナンス部門に依頼書を送った。

 それから2週間経ち、修理依頼の件などすっかり忘れていた。そんな時、事件は起こった。お客様から「担当者から電話はかかってきたが『様子を見てください』と言ったきり、一度も見に来ません。いったいどうなっているのですか!」と怒りの電話がかかってきた。

 私は慌ててアフターメンテナンス部門に問い合わせた。

 すると担当スタッフは電話で話を聞いて「行く必要なし」と判断したらしい。その結果、そのままほったらかしに。これではお客様が怒るのも無理はない。

 この件に関しては、メンテナンスのスタッフが悪いのではない。お客様から電話をもらった時点で、すぐに私が行き現状を把握するべきだった。そして目で見てきた状況をスタッフにきちんと伝え、実施日に立ち会ってさえいれば、こんな事態にはならなかった。明らかに私の手抜きである。

 すぐに謝罪に伺ったが、お客様は「あなたにもおたくの会社にもガッカリです」と言い放たれた。これを機にお客様の態度は一変。その後も細かいクレームが次々に発生するようになってしまった。このクレーム処理につきっきりになり、新規へのフォローが手薄に。

 営業活動にも支障があったが、一番ダメージを受けたのはメンタルだった。なにしろ紹介をたくさんいただけそうな優良客をクレーム客にしてしまったのだから。これをきっかけにどスランプにハマった。その後、半年以上も契約が取れないヒドイ状態が続いたのだ。

●「クレームの責任者は私」

 このお客様の痛い経験を教訓にして、「クレームの責任者は私」と考えるようになった。

 クレームを受けたらまず自分が現場に向かう。そして、目で見て確認した状況を踏まえて依頼をする。日程が確定したらお客様に連絡し、できる限り立ち会うように改善した。その後、このようなトラブルは激減した。

 営業担当者でよくオーナー客訪問(既販客訪問ともいう)をする人がいる。この活動がすべて悪いとは言わないが、オーナー客だからと言って「近くに来ましたから」と突然来られるのは、迷惑なこと。私がお客様の立場なら居留守を使うだろう。

 しかし、クレームの件で営業マンがすぐに来てくれるのであれば歓迎される。お客様は「買った後もしっかり面倒をみてくれる」と好印象を持つだろう。こういった対応が紹介につながることも少なくない。

 また、お客様からクレームの電話をいただいたら、必ず顔を出すようにするだけでも多くのクレームは防げるもの。最低でも傷口が広がることはない。

 クレームは火が広がる前に消しておくのが一番。では、クレームをこじらせてしまったらどうすればよいのか? その対処法についてお話しする。

●一番の時間短縮

 30代前半のお客様との家づくりでのこと。このお客様は非常に細かい性格で、とにかく完璧を求めてくる。「このお客様と契約したら苦労するだろうな」とわかりながらも、商談を進めた。営業マンは数字の世界。当時の私には余裕がなかった。“背に腹はかえられない”と目をつぶって契約したのだ。

 案の定、工事が始まると次から次へとクレームをつけてきた。ひとつクリアすればまたひとつクレームが発生する。「もういい加減にしてくれよぉ……」とうんざりしながら対処していた。私の仕事は家を売ることであって、現場監督ではない。毎日、現場に行くわけにはいかないし、ある程度、現場監督に任せるしかない。お客様からの着信を見るたびに、うんざりしていたものだ。時には意図的に電話に出ないことも。こうした逃げ腰な態度が火に油を注ぎ、毎日のようにクレームが発生したのだ。

 こうなると営業活動どころではなくなる。「新規の契約を取らなくては」と思いながらもこのお客様のクレーム処理が気になって仕方がない。時間も精神も蝕まれていった。

 そこで私は、「こうなったら、このお客様にトコトン付き合うしかない!」と腹をくくることにした。そう決め、ほかの用事をすべて犠牲にしてまでも、このお客様と向き合った。

 その直後、クレームは徐々に減っていった。お客様は、物に対してクレームをつけていたわけではなかった。私の逃げ腰の態度に対して、繰り返しクレームを言ってきたのだ。

 この話を聞いて、「もっと簡単な方法はないのか?」と思った人もいるだろう。過去の私も、「なんとかしてうまくクレームから逃げる方法はないか、かわす方法はないか」と考えたものだ。しかし、そういう考えを持っている限りクレームはおさまらず、ますますこじれるばかりだった。とにかく腹をくくってしまうのが一番の時間短縮になる。

「どうしてクレームが次から次へ発生するんだ」と悩んでいる人もいるかもしれない。そんな時はぜひ、とことんまでお客様に付き合ってほしい。そのスタンスを見たお客様は納得し、クレームが劇的に減っていくものだ。
(文=菊原智明/営業サポート・コンサルティング代表取締役)

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