滋賀県、ブーム到来の謎…なぜ観光客激増?

滋賀県にブーム到来か 観光客数が急増し15年の調査では外国人観光客数は前年比68%増

記事まとめ

  • 日本橋に滋賀県のアンテナショップがオープンし田原総一朗氏や西川貴教らが駆けつけた
  • 滋賀県は琵琶湖が有名だが「出生率全国2位」「百貨店・スーパー数全国1位」など統計も
  • 近年は外国人観光客が急増し2015年の調査では宿泊客数は前年比99.8%増となった

滋賀県、ブーム到来の謎…なぜ観光客激増?

滋賀県、ブーム到来の謎…なぜ観光客激増?

日本橋にオープンした「ここ滋賀」

 再開発が進む東京・日本橋に、またひとつ新たなアンテナショップがオープンした。滋賀県の「ここ滋賀」だ。10月29日のオープニングセレモニーには、三日月大造知事や滋賀県出身のジャーナリスト・田原総一朗さん、滋賀ふるさと観光大使のミュージシャン・西川貴教さんらが駆けつけた。

 日本橋にはこの数年、自治体のアンテナショップが続々とオープンした。山口県、島根県、奈良県、長崎県、富山県など。滋賀県を加えると10県の拠点が集積する激戦区となっている。よほど個性的な展開、運営をしないと生き残っていくのは大変だろう。

 ショップの名前は、「ここ滋賀」と一風変わっている。同県のフェイスブックにネーミングの由来が記載されている。

「『ここ滋賀』という名前には、(1)『ここ』に滋賀があり、『ここ』から滋賀を発信する、(2)『ここ』へ来れば滋賀に行きたくなる、(3)英語の『COCO』→コミュニティ、コワーキングなど、人と人とが手を結び共に創るイメージ、(4)滋賀といえば琵琶湖であり、『湖国』といった意味が込められています」

 特産品の販売だけでなく、情報発信、観光や産業誘致の拠点にしたいとの思いが込められているようだ。

 日本橋交差点に面した立地は最高だ。コレド日本橋と高島屋の間に位置し、常に多くの人々が行き交う。「ここ滋賀」は1Fが総合案内と特産品を販売するマーケット、地酒バー、イベントエリアなどで構成されている。2Fは「近江牛と発酵」をテーマに滋賀の食材を使ったレストラン(コース料理5000円〜)、屋上はテラスとなっている。

 マーケットには近江牛関連商品、鮒ずし、近江米、近江茶などの食材に加え、雑貨や工芸品など地場産業の特産品が並ぶ。ショッピングを楽しむ中高年女性だけでなく、近くを通りかかったビジネスパーソンが立ち寄っていくシーンも見られる。地酒を堪能するシニアの姿もあった。

 いろいろな特産品がワンフロアに凝縮されているので、滋賀県内のエリアごとの特性がわかりにくい。大津、彦根、信楽、竹生島など魅力的な土地のそれぞれの個性、特徴をもっとダイレクトに感じられるレイアウトがあってもいいのではないのか。各地のパンフレットを置いておくだけでは魅力は伝わり切らない。

●「出生率全国2位」「百貨店・スーパー数全国1位」が示す、暮らしやすさ

 滋賀県のイメージといえば、日本一の湖・琵琶湖だろう。そのほかに思い浮かぶのは、近江商人、近江牛、彦根城、安土城、比叡山延暦寺といったところか。

「ここ滋賀」の総合案内にあるパンフレットの中で興味深かったのが、「滋賀らしい 仕事×暮らし 読本」という冊子だ。滋賀大学の学生が県内の中小企業を取材して編集したもので、数十社の企業紹介とともに、そこで働く若手・中堅社員の日常生活、仕事への思いなどをコンパクトにまとめてあり、地場企業や従業員の実態の一端がうかがえる。

 冊子の冒頭に「滋賀ではじめるワーク・ライフ・バランス」というコーナーがあり、働きやすさランキング、暮らしやすさランキングとして8つの指標が紹介されている。

(1)製造品の出荷額…全国1位
(2)製造業1事業所当たり付加価値額 8億2148万円…全国2位
(3)従業員1人当たり現金給与総額 495万円…全国3位
(4)男性の有業率 71%…全国3位
(5)5年間の一戸建て住宅の増加率 9.9%…全国1位
(6)出生率 人口1000人に対して9.1人…全国2位
(7)百貨店、総合スーパー数は人口10万人当たり2.33店…全国1位
(8)自然公園の面積が県土総面積に占める割合 37.3%…全国1位

 仕事を取り巻く環境、暮らしを取り巻く環境ともに高い水準だ。琵琶湖に代表される自然豊かな土地で、名古屋や京都、大阪へのアクセスもいい。

 出生率の数値は2015年のものだが、沖縄県に次ぐ高さである。この年、出生数が死者数を上回ったのは沖縄、愛知、東京と滋賀だけだった。滋賀は子どもを産み、育てる環境に恵まれているということなのだろう。県民の平均年齢は44.5歳で全国3位の“若さ”だ。

 このほか、国指定の重要文化財(国宝含む)の指定件数は819件で全国4位。そのうち国宝の指定件数は55件で全国5位と、歴史・文化が息づいていることがわかる。

●近年は外国人観光客も急増中

 水の国・滋賀の魅力に遅まきながら気が付いたからだろうか。国内外からの観光客数がこの数年、急増している。15年の滋賀県の観光入り込み客数は延べ4794万人。前年比3.5%増で過去最高となった。宿泊客数は382万8800人で15%増。すごいのは外国人観光客数で、延べ47万5778人と前年比68%増だ。宿泊客数は36万1652人で99.8%増と、ほぼ2倍に増えたことになる。いずれも過去最高である。

 外国人宿泊客36万人というのは、日帰り観光客(11万4126人)の3倍以上。京都や大阪での宿泊をあきらめて滋賀に宿泊先を求めるケースがあるだけでなく、ソーシャルネットワーキング(SNS)上の情報で滋賀の魅力を知り、腰を据えて観光する客が増えてきているという側面もある。

 しかし、全国的に見れば外国人観光客数、宿泊者数は中位。京都の10分の1程度でしかない。逆にいえば、今後の情報発信や魅力的なツアー、滞在プランを用意すれば、まだまだ伸びしろがあるということだ。

 高島屋(創業者の義父が近江国高島郡出身)、西川産業(創業者は近江国蒲生郡出身)など、近江商人とゆかりが深い企業が残る日本橋に、滋賀県はアンテナショップをオープンした。「ここ滋賀」が、そうした滋賀県の魅力と実力をどう情報発信していくのか。挑戦は始まったばかりだ。
(文=山田稔/ジャーナリスト)

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