『民衆の敵』、実は傑作なのに大コケさせたフジテレビの責任

『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』が最終回 「月9復活」期待も苦戦に

記事まとめ

  • 「月9」で放送のドラマ『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』が最終回に
  • 篠原涼子を筆頭に、石田ゆり子と古田新太、高橋一生を揃え、若手議員役に前田敦子も
  • 脚本は黒沢久子で、映画『花芯』の脚本や、ドラマ『ウルトラマンX』のシリーズ構成も

『民衆の敵』、実は傑作なのに大コケさせたフジテレビの責任

『民衆の敵』、実は傑作なのに大コケさせたフジテレビの責任

「民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜 - フジテレビ」より

月9」(フジテレビ系月曜夜9時枠)で放送されていたドラマ『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』が最終回を迎えた。

 前作の『コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜THE THIRD SEASON』が高視聴率で終了し、「月9復活となるか」という期待を背負ってのスタートだったが、視聴率は苦戦。

 あおば市という架空の地方都市を舞台に女性議員の活躍を描くというコンセプトは、時代にマッチしていたと思う。しかし、初回放送が唐突に決まった衆議院議員選挙と重なって1週間延期となり、スタートから味噌がついてしまった。

 それでも、選挙で盛り上がるなかで放送していれば注目されたのかもしれないのだが、フジテレビの腰が引けた姿勢のため、なんだかお通夜のようなスタートになってしまった感は否めない。

 主演の篠原涼子を筆頭に、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)に出演していた石田ゆり子と古田新太、『カルテット』(同)、大河ドラマ『おんな城主 直虎』、連続テレビ小説『わろてんか』(共にNHK)に出演し、今年の顔となった高橋一生を揃え、若手議員役に前田敦子、千葉雄大というキャスティングも悪くなかったが、どうにも最初から逆風が吹いていたように思う。

 筆者自身も、あまり熱心に見たいという気持ちになれずに、第2話まで見た時点で録画したものを放置していた。だが先週、久々に見たらハードな政治ドラマとなっていて驚いた。そこから3話以降をあらためて見直したのだが、画面構成もしっかりしており、「これはちゃんとしたドラマだ」と思った。

●絶妙な篠原涼子と高橋一生のコンビ

 物語は、高額の議員報酬に釣られて市議会議員となった専業主婦の佐藤智子(篠原涼子)が何も知らないまま政治の道を歩み、市が抱えている問題に取り組んでいくというもの。

 1話が市議会選挙。2〜4話が1話完結方式で、シングルマザーの貧困問題やシャッター通りとなった商店街に子供食堂をつくる話などを通して、政治的な派閥間の裏取引が描かれる。「うまいなぁ」と思ったのは、当初は佐藤のライバルになるかと思った、高橋一生が演じる2世議員・藤堂誠の見せ方。藤堂は「あなたはおもしろい人だ」と言っては、佐藤の話を聞いて状況を分析して的確なアドバイスをする。

 無知だが正義感が強く行動力のある佐藤と、冷静で状況が見えているが議員としてのモチベーションが薄い藤堂のコンビによって、ドラマは事件を解決するバディものとなっていく。

 それと同時に、千葉雄大、前田敦子、斎藤司(トレンディエンジェル)が演じる1年生議員にも、彼らなりに「あおば市を良くしていきたい」という動機があることがわかってくる。

 佐藤の夫・公平(田中圭)や石田ゆり子が演じるジャーナリスト・平田和美の背景も丁寧に描いており、群像劇としてどんどんおもしろくなっていくのだ。

 脚本は黒沢久子。脚本家の荒井晴彦の弟子筋に当たる人で、映画『花芯』(クロックワークス)の脚本や、ドラマ『ウルトラマンX』(テレビ東京系)のシリーズ構成などを手掛けている。今年はAmazonプライム・ビデオで放送された『東京女子図鑑』が話題になっていたが、いわゆる民放地上波の連続ドラマを手掛けるのは初めてで、大抜擢といってもいいだろう。

 黒沢はその期待に見事に応えており、題材の選び方もキャラクターの描写も一見軽いように見えて重厚で、実力は完全に証明できたと思う。

●苦戦の理由はフジテレビの支援体制?

 ただ、それだけに残念な点も多い。まず一番に思うのは、展開が早すぎるということだ。初回の選挙も1話で終わらせるのはもったいない。もっと話数をかけて、じっくりと描くべきだと思った。

 第6話からは第2部となり、佐藤が新市長となるのだが、これも展開が早すぎる。そもそも物語自体が1クールに収まる題材ではないのに、無理矢理詰め込んでいるので展開に無理が出ているのだ。だから、視聴者は気持ちがついていけずにどんどん脱落していったのだろう。

 せめて2クール(半年)の放送であれば、もっとじっくり描けたはずだ。また、最初からバディものというコンセプトを明確にしていれば、視聴者も入りやすかったはずだ。

 今の月9は視聴率が低迷し、大混乱期にある。だからこそ、専業主婦だった佐藤智子が市議会議員になるように、黒沢久子のような外部の才能を大胆に起用できたのだろうが、肝心のフジテレビサイドの編成の意識が旧態依然としたままなので、どうにも脚本の足を引っ張っているように見えた。

 番組宣伝も「高橋一生におんぶに抱っこ」という感じで、肝心の内容が伝わっていない。本来であれば、こういうドラマこそ情報バラエティ番組と連携して作品のおもしろさを伝えないといけないはずだ。NHKの朝ドラや大河ドラマはそういう連携がうまく、放送期間が長いため視聴者に作品の魅力を伝えることに成功していたのだが、フジテレビはそういうバックアップがまったくできていない。

 フジテレビの支援体制の弱さが、そのまま佐藤議員が市議会と対立して足を引っ張られていく展開とリンクしているように見えるのは、なんとも皮肉である。
(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)

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