NHK大河『西郷どん』を10倍楽しく見る方法…見どころは「男色」と「原作改変」?

『西郷どん』見どころはBL要素か 脚本の中園ミホ氏は男性同士の愛を描く可能性示唆

記事まとめ

  • NHK『西郷どん』は西郷隆盛を描き、大河ドラマで主人公となるのは『翔ぶが如く』以来
  • 原作は林真理子氏の『西郷どん!』、脚本はNHK連続ドラ『花子とアン』の中園ミホ氏
  • 主役発表の記者会見の席上で、中園氏は男性同士の愛を描く可能性を示唆していた

NHK大河『西郷どん』を10倍楽しく見る方法…見どころは「男色」と「原作改変」?

NHK大河『西郷どん』を10倍楽しく見る方法…見どころは「男色」と「原作改変」?

「NHK大河ドラマ『西郷どん』 - NHKオンライン」より

 今年のNHK大河ドラマは『西郷どん』である。

 その名の通り西郷隆盛を描いた作品で、NHK大河ドラマで主人公として扱われるのは平成2年(1990)に放送された『翔ぶが如く』以来となる。原作は林真理子の『西郷どん!』(KADOKAWA)、脚本はNHK連続テレビ小説『花子とアン』の中園ミホが手掛ける。

 1月7日に放送された第1話「薩摩のやっせんぼ」では、幼少期の西郷が「妙円寺詣り」の際に島津斉彬と運命的な出会いをし、またほかの町の少年との諍いから肩口を切られて剣が振れなくなる、というあらすじであった。なお、「やっせんぼ」とは鹿児島弁で「弱虫」や「役に立たない者」という意である。

 原作小説では、西郷と島津斉彬の出会いは少し違っている。戦国期の島津氏の武将で、豊臣秀吉の九州征伐の折に「梅北国兼の乱」の首謀者として切腹を命じられた島津歳久の命日に、その菩提寺である心岳寺に詣でる「心岳寺詣り」の際に出会うことになっているのだ。これは、後に西郷と錦江湾に入水する勤王僧・月照に対し、「西郷が自らを島津歳久になぞらえた」という逸話を踏まえた伏線だろう。

 しかし、ドラマでは関ヶ原の戦いにおける敵中突破による退却戦、いわゆる「島津の退き口」で知られる島津義弘の菩提寺である妙円寺に参るという筋書きに改変されている。なお、「妙円寺詣り」は関ヶ原での労苦を思い、心身を鍛錬するために片道20kmの道のりを歩いて参拝するというものであり、「曽我どんの傘焼き」「赤穂義臣伝輪読会」と並んで、鹿児島3大行事として知られている。

 また、この行事は薩摩藩において反徳川の意志が再生産されていたことを示すものとして、幕末期を扱う作品でしばしば伏線に用いられる。いわば、歴史ファンにとってはおなじみの演出というわけだ。

 あえて原作小説の伏線を切って改変した理由や狙いについて、現時点ではわからない。しかしながら、良くも悪しくも脚本が原作小説を基盤としながらも、そこから跳躍を試みようとしていることを示すものといえるだろう。脚本によって大河ドラマがおもしろくなるという点については、昨年の『おんな城主 直虎』も記憶に新しいところだ。この改変がどう出るか、期待を込めながら見どころのひとつに数えたい。

●『西郷どん』はBL要素も?当時は美風だった男色

 また、見どころといえば、今回はBL(ボーイズラブ)の要素が加えられるとされている点も興味深い。一昨年に行われた主役発表の記者会見の席上で、中園氏は「原作には師弟愛や家族愛、男女の愛、BLまでのいろいろな愛がある」と述べており、男性同士の愛を描く可能性を示唆している。

 確かに、西郷には“その気”がある。下鍛冶屋町の「郷中」におけるつながりもそうであるし、また、いわゆる「精忠組」における同志たちとの交わり、さらに「私学校」における師弟関係なども挙げることができるだろう。

 そもそも、当該期の薩摩藩においては男色を禁じられておらず、一種の美風とさえされていた。文化9年(1812)に上梓された白尾国柱『倭文麻環(しずのおだまき)』には、薩摩藩内外の故事や風俗、伝承や怪綺談の類が収録されているが、そのなかには男色に関する記述もある。

 余談ながら、同書は時の藩主・島津斉興が江戸で生まれ育ったために薩摩の状況をよく知らない世継ぎに読ませるべく作成させたものである。この世継ぎこそが、島津斉彬その人にほかならない。

 実際、原作小説には西郷とある男性との性交渉についての記述があり、BL要素がラブロマンス的なものに留まっていない。ただ、いささか女性に置き換えがきき“いわずもがな”の感もあったが、それをドラマではどのように昇華させていくのか、また大河ドラマという一種特別なコンテンツにおいてBL的な表現がどの程度まで許されるのか、という点についても注目したい。

●西郷隆盛を取り巻く3人の妻と“豚姫”の存在

 また、月並みではあるが、西郷を取り巻く女性たちについても見どころとしたい。母・満佐をはじめとして、最初の妻で離縁することになる須賀、奄美に流刑になった折の“島女房”で本作品の語り部である西郷菊次郎を産んだ愛加那、上野の西郷隆盛像の除幕式の折に「このような人ではない」と言ったという逸話が残る糸ら3人の妻、そして、京都で西郷が寵愛したとされる“豚姫”ことお虎である。

 お虎が“豚姫”と称されたのは、大変ふくよかであったためだという。この“豚姫”、原作では祇園「奈良富」のお虎とされているが、「川端井末」のお末であった、あるいは「伏見の一婢」である、など諸説ある。勝海舟は『氷川清話』のなかで、この“豚姫”が西郷に思慕し、西郷もまたその気持ちに応えた、という旨の証言を残している。

 その関係については、勝いわく「どうも言うに言われぬ善いところがあったのだ」とのことだ。果たして、ドラマに“豚姫”が出てくるのか、もしそうなら誰が演じるのか……気になるところではあるが、現時点では不明である。

 ともあれ、人を愛し、故郷を愛し、国を愛し、民を愛し、男にも女にも大層モテたという、西郷どんの物語。「一日接すれば一日の愛あり、十日接すれば十日の愛あり」ではないが、一話一話と見るなかで愛を感じ、愛が深まるような作品となることを祈念してやまない。
(文=井戸恵午/ライター)

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