日産、ルノーと合併協議か…実現なら国内はトヨタ・ホンダ「2強陣営」に集約の動き

日産、ルノーと合併協議か…実現なら国内はトヨタ・ホンダ「2強陣営」に集約の動き

「Getty Images」より

 ドナルド・トランプ米大統領は、日本の自動車メーカーにとって“福の神”か、それとも“貧乏神”か――。

 トランプ大統領は自動車メーカー各社に、米国内での工場建設や増産を求め、その一方で、輸入車には高い関税を課すと恫喝した。

 法人税率を35%から21%に引き下げた。これが米国内に工場がある自動車メーカーには大きな利益貢献となった。

 自動車大手7社の2018年3月期連結決算の純利益は、SUBARU(スバル)を除く6社が増益となった。ただ、米国の減税効果は一過性とみられる。19年3月期は、東南アジアで稼ぐ三菱自動車を除く6社は最終利益が減るとみている。

 18年3月期の7社合計の純利益は4兆9557億円だが、19年3月期は3兆8050億円の見込みで、23.2%の減益となる。

 自動車メーカーはトランプ大統領に振り回されている状況だ。

【自動車大手7社の純利益】
※以下、会社名:18年3月期実績、19年3月期計画
・トヨタ自動車:2兆4939億円(前期比36.2%増)、2兆1200億円(15.0%減)
・本田技研工業(ホンダ):1兆593億円(71.8%増)、5700億円(46.2%減)
・日産自動車:7468億円(12.6%増)、5000億円(33.1%減)
・スバル:2203億円(22.0%減)、2200億円(0.2%減)
・スズキ:2157億円(34.9%増)、2050億円(5.0%減)
・マツダ:1121億円(19.5%増)、800億円(28.6%減)
・三菱自動車:1076億円(――)、1100億円(2.2%増)
(トヨタ自動車は米国基準、本田技研工業は国際会計基準、ほかは日本基準。三菱自動車の17年3月期は1985億円の赤字)

 トヨタの18年3月期の純利益は2兆4939億円で、2年ぶりに最高益を更新した。トヨタの利益は、日本企業として過去最大となった。2月に公表した業績予想を1000億円近く上回った。

 会社の想定より為替が円安に振れたことに加え、原価低減も寄与した。さらに、トランプ政権の法人税減税が純利益を2500億円押し上げた。

 ダイハツ工業、日野自動車を合わせたグループ世界販売台数は1.9%増の1044万台で、最高となった。主戦場は世界最大の自動車市場の中国だ。豊田章男社長は5月9日の決算記者会見で、中国市場について「急激に伸びている。遅れないように経営資源を投入する」と述べた。

 ホンダの純利益は1兆593億円。日本企業の純利益が1兆円を超えるのは、トヨタ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(15年3月期、1兆337億円)、ソフトバンクグループ(17年3月期、1兆4263億円)に続き4社目。

 米国の法人税率の引き下げによる税負担の軽減で3461億円を純利益に上乗せした。一方で、19年3月期の純利益は5700億円と大幅に減る。ホンダは7社のなかで税負担軽減効果がもっとも大きかった分、減益幅が最大となる。

●日産、ルノーと合併か

 日産自動車の純利益は7468億円。昨年発覚した新車の無資格検査問題に伴うリコール(無料回収・修理)費用900億円を計上したことで営業利益は減益となったが、米国の法人減税の効果で純利益は増えた。一方で、19年3月期の純利益は5000億円と大幅に減る。

 日産については、日産と仏ルノーが合併協議をしているとの報道が駆け巡っている。カルロス・ゴーン会長は経営統合の可能性に言及したこともある。

 西川廣人社長は5月14日の決算記者会見で、「企業連合を組むルノーとの間で資本構成の変更を検討する」考えを示した。日産はルノー株の15.0%を持つ一方、ルノーは日産株の43.4%を保有している。西川氏の発言は、資本関係の再構築の必要性を指摘するゴーン氏の主張に寄り添った格好だ。日産はフランスの会社になるのか。今年の自動車業界最大の話題となる。

 スバルの純利益は2203億円。無資格検査とタカタのエアバッグ問題を受けたリコール費用を合わせて1062億円計上した結果、7社のなかで唯一、減益となった。

 スズキの純利益は2157億円で過去最高。マツダの純利益は1121億円と増益になった。三菱自動車の純利益は1076億円で、燃費不正問題による低迷から脱し、ようやく黒字転換を果たした。

●収益力はスバルがトップ

 自動車メーカーの収益力を測る指標に、売上高営業利益率がある。営業利益は会社の本業の利益を表し、売上高営業利益率ランキングは企業の稼ぐ力を表している。

【自動車大手7社の18年3月期の営業利益率】
・スバル:11.1%
・スズキ:10.0%
・トヨタ:8.2%
・ホンダ:5.4%
・日産:4.8%
・三菱自:4.5%
・マツダ:4.2%

 スバルの営業利益率は、依然として業界トップ。スズキの営業利益率が初めて二ケタ(10%)台に載った。日産、三菱自、マツダは4%台にとどまり、「利益なき繁忙」を浮き彫りにした。

 コネクテッドカー(つながる車)や電動化、自動運転技術の実用化を見据えて、メーカー各社に開発負担が、重くのしかかっている。

 トヨタの豊田社長は決算会見の席上、「百年に一度の大変革の時代を、百年に一度の大チャンスととらえ、これまでにないスピードと発想で挑戦していく」と語っている。

 合従連衡も進んでいる。トヨタはダイハツ工業を完全子会社にしたうえ、スバルに出資。15年にマツダと包括提携し、16年からスズキと提携交渉を進めている。トヨタが先端技術をスズキに供与し、スズキは先行利得を享受しているインド市場でトヨタの水先案内を務める。他方、燃費不正問題を起こした三菱自は日産の傘下に入った。

 国内の乗用車メーカーは、トヨタ、ホンダ、日産の3強に集約されつつある。ただ、日産がフランスのメーカーになれば、まったく別の風景が見えてくるかもしれない。

●トランプ政権が輸入車に最大25%の関税を検討

 トランプ大統領は5月23日、輸入車に新たな関税を課す措置の検討に向け、「(輸入が)米国の安全保障に与える影響について、通商拡大法232条に基づく調査を始めるよう指示した」との声明を発表した。米ウォール・ストリートジャーナルは「(輸入車に)最大25%の関税を課すことを検討している」と報じた。

 米通商拡大法232条に基づく輸入制限について、トランプ政権は3月、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を上乗せする措置を発動し、日本にも適用されている。

 米国は現在、日本から輸入する乗用車に2.5%の関税を課している。実際に関税が25%まで引き上げられるか、上乗せされる事態になれば、日本車の米国での販売価格が大幅に上昇し、日本の自動車メーカーに深刻な影響が出る。

 米自動車調査センターによると、2017年の米国の乗用車販売(1730万台)のうち輸入車が占める割合は44%。日本、カナダ、メキシコからの輸入がそれぞれ11%で以下、ドイツ、韓国と続く。

 日本の自動車メーカーは輸出全体のうち4割が米国向け。関税が上がれば、輸入車の価格競争力が下がり、米国でのサプライチェーン(ディーラー網)の見直しを迫られることにもなる。

 マツダは米国に生産拠点がなく、米国で販売する年間30万台のうち日本からの輸出が76%と高いため、関税引き上げの直撃を受ける。日本メーカーが米国で販売する自動車のうち、輸入車の割合は1985年のおよそ9割から、2017年には30%にまで低下したが、ドル箱の米国市場での販売台数が減れば、業績が一気に悪化する。「安全保障を理由に関税をかけるのは、ちょっと信じられない。自動車だと世界的な影響が大きい」(三村明夫・日本商工会議所会頭)。安倍晋三首相はトランプ氏との「蜜月ぶり」をアピールしてきたが、米国との貿易摩擦は激化の一途だ。

 東京株式市場では5月24日、トヨタ自動車が一時、245円安の7190円に急落した。ほかの自動車メーカーも、ホンダ(終値は124円安の3531円)、スズキ(117円安の6248円)、SUBARU(89円安の3494円)、マツダ(77円安の1399.5円)と軒並み下げた。

 自動車製品メーカーのデンソー(214円安の5534円)、アイシン精機(290円安の5670円)にも波及した。ファナックは535円安の23665円、キーエンスは1100円安の67290円、SMCは1250円安の43080円と、輸出関連の値がさ株も急落した。
(文=編集部)

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