西友、売却が迷走…カギ握るドンキとニトリ、不採算店舗外し「切り売り」も

西友、売却が迷走…カギ握るドンキとニトリ、不採算店舗外し「切り売り」も

西友の店舗(「Wikipedia」より)

 米小売り大手ウォルマートは、傘下の西友の売却に向けて動きだした。複数の流通大手や投資ファンドに打診している。非上場のため細かいデータはないが、西友の店舗数は335店、年間売上高は7000億円規模と推定される。国際的なM&A(合併・買収)に詳しいアナリストは、「売却額は3000〜5000億円」とみている。

 ウォルマートは丸ごと売りたいが、すんなりいきそうにない。流通大手といえば、まず浮かぶのがイオンとセブン&アイ・ホールディングス。両社とも総合スーパー(GMS)事業の立て直しに取り組んでおり、西友のGMSを引き取る余裕はない。「西友のシステムがウォルマート仕様になっている」(流通業者)のも難点だ。

 国際M&A市場で「ドンキホーテホールディングス(HD)が名乗りを上げる」との観測が急浮上。ドンキHDの株価は7月12日、一時、前日比160円(3.0%)高の5450円まで買われ、5330円で取引を終えた。翌13日の終値は前日比90円(1.7%)高の5420円。5営業日続伸した。高値は3月16日の6380円。しかし、8月9日には一転して4990円の年初来安値に逆戻りした。

 ドンキHDは業績が好調だ。ユニー・ファミリーマートホールディングスと資本・業務提携して、総合スーパーのユニーやコンビニエンスストアのファミリーマートの店舗の“ドンキ化”に取り組み、成功を収めている。すでにユニーとドンキを融合したディスカウントストア業態の6店舗をオープンした。伊藤忠商事はユニー・ファミマHDを完全子会社にするためのTOB(株式公開買い付け)を8月16日まで実施中。ドンキHDが伊藤忠と組んで西友の有力な買い手候補になるとの思惑が流通業界に広がっている。

 このほかに、三菱商事・ローソン・イオンの三菱連合や楽天、国内外のファンドが買い手として取り沙汰されている。イオンのDS(ディスカウントストア)事業の現在の年商は4000億円規模。2020年にこれを2.5倍の1兆円にする高い目標を掲げている。西友はGMSからDSへの転換を進めており、イオンのDS事業強化とぴったり波長が合う。西友を手に入れればイオンのDS事業の柱となり得る。もし、イオンが動くことになれば、同社に4.64%を出資する筆頭株主の三菱商事の力を借りることになるとみられている。

 かつて、イオンはウォルマートによる買収防衛策として、三菱商事を筆頭株主に迎えたという経緯がある。当時、ウォルマートは西友とイオンを経営統合させることを狙っていた。それが、イオンが西友を買収する立場になる可能性が出てきたとは運命の皮肉である。

 三菱商事はコンビニ業界第3位に転落したローソンのテコ入れに躍起となっている。三菱商事の垣内威彦社長は三菱商事・ローソン・イオンの大連合で西友獲りを考えるかもしれない。

●楽天も有力候補

 楽天も有力候補だ。米ウォルマートは今年1月、それまで組んでいたディー・エヌ・エーとの提携を解消し、ネットスーパー事業で楽天と提携すると発表した。3月に合弁会社、楽天西友ネットスーパーを設立し、楽天西友ネットスーパーを8月14日にスタートさせた。

 ネット通販の巨人、米アマゾン・ドット・コムは昨年、米高級食品スーパーのホールフーズ・マーケットを買収し、ネットとリアル店舗の融合を実現させた。野菜や肉などの生鮮食品を扱うネットスーパーへの本格進出を目指している。アマゾンのネットスーパーに対抗して、ウォルマートと楽天が手を組んだ。会見時に楽天の三木谷浩史会長兼社長は「世界でも類を見ない強力なタッグ」と自画自賛した。もし、楽天が西友を買収すれば、西友の店舗はロゴを一新した「Rakuten」に変わることになる。しかし、他社が西友を買収すれば、楽天がアマゾンに抵抗するために構築したウォルマートとの共同戦線は空中分解するかもしれない。

 しかも、楽天は携帯電話事業への参入を表明しており、基地局などに多額の設備投資が必要だ。西友買収に手を挙げるためには、買収資金の一部を負担してくれるパートナーが不可欠だ。楽天が強力なスポンサーを探し出すことができるかにかかっている。ウォルマートは店舗の一括売却を目指しているが、「西友は不採算店が多く、切り売りされる可能性がある」(国内の流通大手のトップ)。

●イズミとニトリ

 その場合、有力な受け皿候補となるのが、中国・四国・九州が地盤のイズミだ。イズミは「西日本の小売業の雄」と呼ばれ、23年2月期に売上高1兆円を計画している。その目標を達成するために17年5月、ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長を社外取締役に招いた。イズミはモール型ショッピングセンター「ゆめタウン」が主力事業で、売上、利益の半分を九州地区で稼ぐ。九州ではイズミはイオンモールと勢力を二分している。

 西友は食品を軸とした低価格戦略を進め、大型店を売却してきた。これまでにも、イズミには西友の店舗を取得した実績がある。15年に西友から福岡県と熊本県のスーパーを取得し、食品スーパー「ゆめマート」に改装した。18年には西友の旗艦店であった「ザ・モール周南」(山口県下松市)と「ザ・モール姫路」(兵庫県姫路市)の2店の経営権を取得し、年内にイズミのショッピングセンター「ゆめタウン」に看板を掛け替える。

 西友は2001年、福岡市の地場最大手百貨店・岩田屋(現・岩田屋三越)傘下のスーパー「サニー」を買収し九州の店舗を大幅に増やし、現在、サニーを60店舗以上展開する。イズミが西友傘下のサニーを買収すれば、九州ではイオンを上回る最大手となる。イズミの西友獲りの成否は三顧の礼をもって招いたニトリHDの似鳥昭雄氏が握っているといっても過言ではない。

「ニトリは西友の関東の店舗を狙っている」(国際M&A筋)との見方が有力だ。ニトリが西友買収の台風の目になるかもしれない。

 ウォルマートは、西友の売却方針を固めたと報じられたことについて「西友を売却することは決定していないし、いかなる売却交渉もしていない」と声明を出したが、すでに売却に向けての動きは加速している。西友の売却先をめぐり、流通業界は“酷暑の季節”に突入した。
(文=編集部)

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