和歌山市、ツタヤ図書館に64億円税金投入…関連文書の情報開示請求に全面黒塗りで回答

和歌山市、ツタヤ図書館に64億円税金投入…関連文書の情報開示請求に全面黒塗りで回答

RIAによる市民図書館・基本設計のパース

 巨額の税金が投入される事業ほど、市民への重い説明責任が生じるはずだが、明らかにそのルールが守られていないことがある。

 下の写真は、総額64億円の補助金が投入される、ある自治体のプロジェクトにおける関係者会議の議事録である。筆者が4月20日に開示請求を行い、45日の延長の末、事務手続きを経て7月4日にようやく入手した。

 開示された1400枚超のうち、全面黒塗りが1000枚超。黒塗りとなっている割合(黒塗頁数/全頁数)を計算してみると、97.91%に達する。

 これらは、来年開館が予定されている和歌山市ツタヤ図書館の建設プロセスにかかわる文書だ。和歌山市では一体、何が起きているのだろうか。

 和歌山市は南海和歌山市駅前に建設中の新しいビルに来年、図書館を移転させる予定だ。同市は昨年末、その新図書館の指定管理者(運営者)に、レンタル店「TSUTAYA」を全国展開しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を選定した。

 CCCが運営する通称「ツタヤ図書館」については、当サイトでこれまでも繰り返し報じてきたが、たびたび不祥事が明るみに出てきた。

 たとえば、2013年に第1号としてスタートした佐賀県・武雄市図書館では、「ウィンドウズ98」の入門書や「埼玉ラーメンマップ」など、極端に価値の低い古本を大量購入していたことが15年9月に発覚した。

 また、その直後に開館した神奈川県・海老名市立中央図書館、翌年開館の宮城県・多賀城市立図書館でも、不祥事が次々に露呈した。

 これらの不祥事発覚前ならいざしらず、そうした悪い評判が広まった事業者を、なぜ和歌山市はあえて選んだのかとの疑問を抱き、筆者は選定プロセスに関してさまざまな角度から取材を続けたところ、興味深いことがいくつかわかった。

 開示された黒塗り文書の背景が少しややこしいので、整理しておきたい。

 和歌山市で、CCCが指定管理者として正式に選定されたのは昨年12月だが、それよりも半年以上前の5月、新図書館の基本設計が発表された。その基本設計を担当したのは、アール・アイ・エー(RIA)という設計事務所だった。

 ツタヤ図書館問題に詳しい関係者であれば、RIAという名前を聞いた瞬間に「指定管理者は、CCCに決まった」と気づいただろう。

 なぜならばRIAは、CCCのフラッグシップ(旗艦店)となった代官山蔦屋書店をはじめ、その後もCCCが指定管理者となった海老名市立中央図書館の大規模改修や、多賀城市立図書館の新築プロジェクトの設計も手掛けるなど、両者は深い関係にあるからだ。そのため、「和歌山市もツタヤ化するのは決まりか」との声が上がっていた。

 そして、実際にその通りになった。では、どのように建物の基本設計業者をRIAに決めたのかを探ってみたい。

 多賀城市などの先行事例をみていると、建物の設計がスタートする時点で、すでに図書館の指定管理者はCCCに内定していた。その不透明な随意契約が批判されたこともあり、和歌山では広く運営者を公募するかたちをとっていた。だが、公募の半年前に、RIAが基本設計を担当したことが判明した時点で、出来レースだったのではないかとの疑いが浮上してくる。

 市民図書館建設について和歌山市に問い合わせたところ、意外な事実が判明した。

 市民図書館が移転する南海和歌山市駅の新しい建物は、市が主体となって建てているわけではないという。地元有力企業の南海電鉄が施主となっており、そこに国や県、市の補助金が投入されるスキームになっていたのだ。建物完成後に、市が図書館部分のみ南海電鉄から買い取る予定だという。

 最近はやりの民間企業の資金やノウハウを活用して社会資本を整備する、いわゆる「PPP(官民パートナーシップ)」の手法を用いたプロジェクトといえるだろう。

 このプロジェクトに投入される補助金の額に驚かされる。都市再生課によれば、図書館が入居する公益施設棟も含めた駅前再開発プロジェクトには、国から32億円、県から14億円、市から18億円の合計64億円もの補助金が投入されることが決まっている。

 南海電鉄は、総事業費123億円のビルを、自己負担半分で建てられることになる。

 問題は、どのようにしてRIAが基本設計の事業者として選定されたのかだが、困ったことに、これがどこに聞いても、さっぱりわからなかった。

 通常の公共施設の建築で、さらに巨額資金が動く計画ともなれば、事業者の選定プロセスは、そのつど事細かに公表される。だが、和歌山市の場合、民間が主体となった開発プロジェクトであるため、市に問い合わせても、「直接関与していないのでわからない」としか回答を得られない。

 そこで筆者は今年2月、南海電鉄に問い合わせたところ、同社の担当部署は「設計事業者は公募して、応募のあった4社のなかで一番(見積額が)安かったRIAにした」と回答した。ところが後日、再度確認すると「公募はしていない。複数社から見積もりをとって、最も安い事業者を選定した」と前言を訂正した。

 さらに詳しい経緯を質問しても「何社から見積もりをとったかは言えない」、公募しなかった理由についても「われわれのやり方で足りると思ったから」、公表しない理由についても「特に必要性は感じていない」と、詳細はぼかす回答に終始した。

 公金が60億円以上も投入される公共施設の建設プロセスが、すべて闇の中ということが許されるのだろうか。

 筆者が「税金が投入され、完成後は市の施設になる予定の図書館について、市が何も知らないのはおかしいではないか」と問うと、市側からこう回答があった。

「図書館建設の経過については、うちは南海電鉄と県の三者で定期的に会議を開いて、その場で報告を受けています」

 市は、設計や施行の事業者と契約に直接関与する立場にはないものの、施主である南海電鉄とそのつど協議し、報告を受けたうえで、事細かに経緯を了承しているというのだ。

 そこで、和歌山市が南海電鉄と新図書館建設について話し合ったすべての文書について、開示請求することにした。会議で話し合われた内容がわかれば、RIAが選定されたプロセスなどは、一瞬にしてわかるはずだ。

 そうして出てきた開示文書が、冒頭に紹介した写真である。届いたのは、1400枚を超える文書がギッシリ詰められたダンボール箱。開封して中身を詳しく見ると、会議ごとに30〜80枚の議事録と添付資料らしき文書がとじられているのだが、それぞれ冒頭の1〜5枚は白地があるものの大半の行が太い黒棒線で伏せられている。さらに、それ以降はすべてが全面黒塗りの「のり弁」状態だった。

 この結果わかったのは、一会議につき数行の発言部分のみ。話し合われた中身については、依然として闇の中だった。

 一部非開示の理由としては、「企業の競争上の地位や利益を害する恐れがある」「率直な意見の交換・意思決定の中立性が不当に損なわれる恐れがある」などとなっている。それならば、企業秘密の部分だけを伏せればいいはずだ。また、会議での発言の余波を懸念するのであれば、発言者の名前だけ伏せればいいのではないか。だが、実質的に全面非開示に等しい状態の回答だった。

 64億円の公金支出について、説明責任を負っているはずの和歌山市・県と南海電鉄は、黒く塗り潰した文書を公開しただけで済ませられると考えているのだろうか。

 次回以降、この黒塗り文書に隠された和歌山市ツタヤ図書館誕生までの秘密を追及していきたい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

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