【富田林署逃走】ピースで記念写真も…樋田容疑者が満喫した「最高の自転車旅行」

【富田林署逃走】ピースで記念写真も…樋田容疑者が満喫した「最高の自転車旅行」

樋田淳也容疑者(大阪府警察のHPより)

 猛暑の日本列島を不安に陥れてから48日。逃走劇は終止符を打った。

 8月12日に大阪府警富田林署の接見室から逃走していた樋田淳也容疑者(30)が9月29日、山口県周南市の道の駅「ソレーネ周南」で弁当やパンなどを万引きしようとして取り押さえられた。丸刈りに顎髭、サングラス。手配写真と風貌は一変しており、万引きを見つけた警備員は渦中の人物とはわからずに警察に引き渡した。鮮明な手配写真が全国に流布しており、整形外科にも行きにくかっただろうし、金もないからできなかっただろう。

 逃走直後に羽曳野市で盗んだ自転車を最後まで使っていた。山のように積まれた荷物には釣り竿もあり、魚を釣って空腹をしのいだか。

 逃走当初、尼崎市などでも目撃されたが、その後、四国へ渡り香川県観音寺市の道の駅で、自転車で日本一周旅行をしていた和歌山県出身の44歳の男性と知り合い、行動を共にした。2人で愛媛県今治市からしまなみ海道で広島県へ入り、呉市の大和ミュージアムや広島市の原爆ドームなどを見学、山口県岩国市の錦帯橋なども訪れている。9月18日からは周防大島の道の駅「サザンセトとうわ」に寝泊まりしていたが、去る時に「(日本一周の)達成後の仕事のことなどは未定ですが、この旅でいろいろなことを学び、今後の生活の糧にしたい」と支配人に手紙を書き残している。錦帯橋では顔を出して記念写真まで撮っている。

 堂々たる「自転車観光旅行」だが、大阪府警では「2人組の自転車旅行者なら野宿も怪しまれないと考えたのかもしれない」とみる。逃走直後は尼崎市の知人に「逃げるか死ぬか迷っている」と置き手紙で援助を求めるなど切迫感があったが、この頃はうまくいって気を許していたか。しかし、金はなく腹が減ることだけは変わらない。いずれは……だっただろうが、捕獲時にけが人などが出なくてよかった。

●加重逃走罪
 
 さて、新たな逮捕容疑は窃盗と加重逃走罪。加重逃走というのは、留置施設や器具などを破壊したり、看守などに暴行や脅迫をして逃げること。しかし、甲南大学法科大学院の園田寿教授は、次のように説明する。

「最初からアクリル窓が外れて隙間ができていて抜け出られたとすれば、破壊したとまではいえず、加重罪が成立しない可能性もある。この場合は単純逃走になる。単純逃走罪なら1年以下の懲役だが、加重が付けば3カ月以上5年以下と重くなる」

 ろくに面会室のアクリルの仕切りなどを点検もしていなかった大阪府警としては、「壊された」と主張して、加重罪で起訴してほしいところ。メンツを大いに失墜させられたことからも、重罰にしてほしいだろう。

 自転車旅行をしていた男性に樋田容疑者は「自分も和歌山出身」と嘘をついて親しくなったとみられる。自転車には「和歌山発、日本一周旅行」などと書かれていた。仮にこの男性が樋田容疑者と知りながら、かくまったり逃走を手助けすれば、犯人隠避罪が成立する可能性もある。

「犯人隠避罪は、容疑者の発見や逮捕を妨げる行為。別に自宅などにかくまわなくてよい。樋田容疑者と知っていて、アドバイスしていたり、カモフラージュのために一緒に自転車旅行したとすれば、同罪に問われる可能性もある」(園田教授)

 一方、逃走前、強姦未遂などの事件で樋田容疑者の弁護を担当していた弁護士は、新たな容疑で彼の弁護をできるのだろうか。共謀していたわけでもなく接見で樋田容疑者に「帰る時には署員に知らせなくてもいい」と言われて疑問を持たず鵜呑みにしていたが、結果的には逃走につながってしまった。しかし公判では参考人として証言しなくてはならない場面も出るかもしれない。

「弁護人が黙秘すれば依頼者に不利益になるし、喋れば依頼人自身に不利になるなど、利益相反になってしまうかもしれない。今後の弁護ができないということはないかもしれないが難しいところですね」(園田教授)

 樋田容疑者は逮捕後、黙秘を貫いているという。逃走中、殺人や傷害などの凶悪事件を犯さなかったことだけは幸いだった。いずれにせよ、夏だったから可能だった野宿逃避行、秋風が吹くとともに終焉した。
(文=粟野仁雄/ジャーナリスト)

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