非核化をめぐりアメリカと北朝鮮の異なる思惑

非核化をめぐりアメリカと北朝鮮の異なる思惑

ポンペオ米国務長官(左)と握手する金正恩氏 ©共同通信社

 5月10日、米国のトランプ大統領はツイッターで、史上初の米朝首脳会談は6月12日、シンガポールで開かれることを明らかにした。

 会談の核心は北朝鮮が既存の核兵器を実際に放棄するか否か、そのためにトランプ大統領が金正恩朝鮮労働党委員長にどう迫るか、である。

 トランプ政権が求めるのは「北朝鮮の非核化」。つまり北朝鮮が自国内の核兵器やその製造技術を「完全に、検証可能で、不可逆的に破棄」することである。

 対して北朝鮮が4月の板門店宣言で同意したかに見えるのは、「朝鮮半島の非核化」だ。韓国領内にはいまは核兵器はないが、かつては米軍の核兵器が配備され、いまも米韓同盟による核抑止力は非常時の提供が約束されている。北朝鮮が唱える「朝鮮半島の非核化」とは、この核抑止力やその基盤となる米韓同盟の破棄までも含めた要求に他ならない。

 ところが日本では、似て非なる2つの概念を混同するような危険な報道が見受けられる。例えば3日付の朝日新聞。一面の見出しは「北朝鮮、核全廃応じる構え」で、リードでは、北朝鮮が〈米国が求める手法による核の全面廃棄に応じる姿勢〉をみせているという。これが本当なら万々歳だが、本文を読むと、北朝鮮は「体制保証」などの条件を要求している、ともある。これは〈米国が求める手法による核の全面廃棄〉と矛盾する。北朝鮮の狙いを読者にミスリードしかねない記事だ。

 日本側では米国が北朝鮮の「非核化」の言葉に応じて、制裁解除などを始め、実際の非核化完結の確認は米朝和解ができた時点でもよいとする「出口論」も語られる。

 だがトランプ政権はこの方策は最初から否定している。米国では「北朝鮮は過去に『非核』を何度も誓いながら国際社会をだましてきたから今回も信用はできない」(北朝鮮専門家ニコラス・エバースタット氏)という懐疑論が大勢を占め、メディアもその認識を反映している。

 いわば同床異夢で臨む米朝首脳会談。もし決裂した場合は、「トランプ政権は確実に軍事力行使という選択肢に大きく傾く」(朝鮮半島情勢の権威ラリー・ニクシュ・ジョージワシントン大学教授)という見通しも強い。

(古森 義久)

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