「日本の外国人嫌悪」が民泊事業をダメにした

「日本の外国人嫌悪」が民泊事業をダメにした

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▼〈 夜明け前に終わった「日本の民泊産業」の末路 〉7月17日、東洋経済オンライン(筆者=レジス・アルノー特派員)

 訪日外国人旅行客数が、年間3000万人に達する勢いの日本。ところが、今年6月15日に施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)によって外国人客が東京を中心に大混乱をきたしている。海外在住の私も、7月の東京滞在では、巻き添えを食らった。

 民泊仲介最大手として知られる米国の「エアビーアンドビー(以下、エアビー)」。私も、海外取材になると頻繁に利用し、東京出張の際には、民泊特区・大田区のエアビーを毎回、利用してきた。しかし、今回の民泊新法で、民泊部屋が約6万から約2万に激減し、宿泊問題が露呈。突如、空室が見つからない状況に、私も巻き込まれたのだ。そこで、民泊新法にまつわる記事を読み漁り、面白い視点で書かれていたのが、レジス・アルノー記者の「夜明け前に終わった『日本の民泊産業』の末路」だった。

 外国人のほうが、滞在国の文化や伝統に詳しいことがよくある。日本在住歴20年以上のアルノー記者がまさにそうだ。文中で、日本の体制を強く批判するが、その中立的な物言いは尊重に値する。

「48万5000軒の民泊登録があるフランスのように、日本でもエアビーと観光庁がタッグを組めば、最強のコンビになっただろう。(中略)だが結局、圧力団体や自治体の影響力、エアビーの傲慢さ、日本の外国人嫌悪(としか言いようがない)によってこのコンビは破局に追い込まれてしまった」

 日本の長所を知りながらも、島国大国の弱点を見事に突いている。両文化を知る者だからこそ、正確に判断できる能力の表れといえる。

■日本人が知っておくべき「外国人が望んでいること」

 実際にエアビーを利用する人はこの問題をどう考えているのか。大多数の外国人に言わせると、日本の交通費と滞在費は、とにかく高い。エアビーを利用して、滞在費だけでも減らしたいと考えるのは、ごく自然なこと。私も物価の高いフィンランドとスイスへ取材に出かける際には、よくエアビーの助けを借りている。

 しかし、コスト面だけが問題ではないことも、日本人は知っておくべきだ。欧州の若者が日本に魅力を感じるひとつの理由として、スペインの漫画出版社社長が、私にこう言ったことがある。「アメリカの英雄物語と違い、日本の漫画はごくありふれた家族物語が多い。若者は、日本のその魅力に惹かれているんです」

 つまり、特に最近の旅行者は、高いホテルに泊まることよりも、現地出身者の家に泊まり、本場の私生活を「体感したい」ということだ。私も、海外でエアビーに宿泊する際、快く迎えてくれる現地のオーナーと、話をしたりお茶を飲んだりすることに「旅の醍醐味」を見出す。何よりも、現地の人と直に触れ合えることが、後の思い出へと変わっていく。

 アルノー記者は、そのような意味において、日本をみごとに俯瞰している。「日本の外国人嫌悪」……。そう言われても仕方がない。フランスのように移民に寛容な国とは意識が違う。だが、日本人はまだ「見慣れない物事への恐怖」を抱いているだけで、決して「人種差別」ではないことを知ってもらう必要もあるだろう。エアビーが、日本のホテルや旅館ビジネスに脅威を与えている側面は納得できる。しかし、2020年の東京五輪を前に、外国人旅行客から「またいつか戻りたい国」と絶賛してもらうためにも“滞在問題”があってはならない。

 今回、観光庁や観光業界は、もう少し柔軟な対応を示してもよかったのではないか。外国人の訪日によって、日本のマナーが世界に広まる可能性だってある。外国語が話せなくても、身振り手振りでいい。「おもてなし」と呼ばれているその心を、全員で伝えていこうではないか。

(宮下 洋一)

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