「冷凍食品」「ホームフリージング」冷凍食材を「本当においしく」食べる方法

「冷凍食品」「ホームフリージング」冷凍食材を「本当においしく」食べる方法

ピカールの商品。調理済みの商品もあるが、「温野菜ミックス」(右)など、料理の「素材」になる商品も使いやすいという。

 今や、離乳食にも活用され、フランスの人気冷凍食品専門店「Picard(ピカール)」の本格上陸で流行に敏感なSNS世代からも注目される冷凍食品。だが、実は冷凍した食材を「本当においしく食べる方法」はあまり知られていない。どのような食材が冷凍に向き、どのように解凍すればもっと美味しく食べられるのか。冷凍食材の「正しい食べ方」を聞いた。(全3回の3回目/ #1#2 より続く)

■ピカールが「冷凍食品=手抜き」の悪印象を払拭できた理由

──冷凍食品はお弁当用、というイメージはひと昔前のもので、今やさまざまな冷凍食品が発売されています。スーパーの冷凍食品の売場も、昔に比べると随分賑やかになったように感じます。

山本 ピカールが入ってきて、少しずつ日本の冷凍食品のイメージも変わってきていますよね。「日本の冷凍食品がReady to eat(レディ・トゥ・イート)であるのに対して、ピカールはReady to cook(レディ・トゥ・クック)」と簡潔に分析した方がいましたが、確かにピカールの商品は、オーブン加熱や焼くだけであっても、調理の最終段階を消費者の手に委ねる商品が多く、それが「冷凍食品=手抜き」の悪印象を払拭しているように思います。

──山本さんはよく、冷凍食品は「手抜き」ではなく「手間抜き」食品だとおっしゃっていますが・・・・・・。

山本 冷凍食品は「手抜き」の食品ではなく、家庭の代わりにメーカーが手間を代行してくれた「手間抜き」の食品です。冷凍食品は、食材の選別、購入からはじまって、洗って切って下茹でをして、さらに調味して、という手間を、家庭に代わってメーカーが行っているんです。しかも、家庭より数段上の衛生的な環境で手間ひまかけています。しかも、できたてを急速凍結して新鮮さを保って流通している。こんな良いものを使うことは、決して「手抜き」じゃないですよ。

 ピカールが人気なのは、珍しさだけでなく、一定の品質基準で自社ブランド製品を開発して品揃えしていることに、利用者が気付いたからではないでしょうか。ちゃんと家で「調理して」食べることで夕食に使っても罪悪感を持たないところにも魅力があると見ています。

■「本当においしい」冷凍食品の食べ方

──冷凍食品の味はどうですか? 最近はおいしい冷凍食品も増えましたけど、やはりまだおいしくない冷凍食品が多いですよね。

山本 それは、冷凍食品の保存・解凍方法が間違っているからです。ご自分で冷凍食品をわざとまずくして、「冷凍食品はおいしくない」と言っている方があまりにも多い。なんとかしたいと思っているんですが・・・・・・。

──冷凍食品って、まずくしようがないのでは? 味は変わらないでしょう?

山本 たとえば、ブロッコリーやホウレンソウなどの冷凍野菜だと、茹でて凍結してあることを知らない人が多い。生と同じように茹でて「冷凍野菜はベチャッとしてまずい」というクレームをよく聞きます。

──なるほど。一度茹でてあるので、もう一度ゼロから茹でるつもりでいると、茹ですぎになってしまうんですね。

山本 冷凍野菜のパッケージを見ると、「加熱してお召し上がりください」と書いてあるので茹でました、という人がいますが、冷凍食材はブランチングという下茹でを行ってから凍結しているので、生の食材と同じように火を通せば、まずくなるのは当然です。たとえばお味噌汁などに冷凍ホウレンソウを入れる時は、最後に加えてすぐに火を止めれば、色鮮やかでしゃきしゃきの歯ごたえが楽しめます。

■冷凍食品を美味しく食べる「コールドチェーン」という考え方

──正しい解凍の仕方を知らないわけですね。ほかにも注意点はありますか。

山本 食品冷凍学の権威、鈴木徹先生(東京海洋大学教授)から、「冷凍食品はかけ算で考えるシステム」だと教わりました。これはつまり、良いものを作り(1)、流通段階でコールドチェーン(温度管理徹底)を切らさず(×1)、解凍・調理を適切にする(×1)ことで、良いものがそのまま食卓に再現できる、ということです。

◆ ◆ ◆

【「コールドチェーン」のかけ算】
生産(1) → 流通(×1) → 調理(×1) = 1

生産・・・・・・調達から工場加工まで
流通・・・・・・−18℃以下で保存しながら工場から販売店まで運ぶ
    店から消費者の自宅まで凍結状態を守り、−18℃以下(冷凍庫)で保存
調理・・・・・・解凍、調理(正しい解凍時間と調理方法)

◆ ◆ ◆

 仮に流通で温度上昇のミスがあってその部分が「ゼロ」になれば、そのあとどんなに注意しても「ゼロ」になりますし、家庭の調理段階で「ゼロ」にしてしまえば、メーカーがいくら努力しても、食べる段階では「ゼロ」になってしまうわけです。

──家庭で「ゼロ」にしてしまうことが多いのですか?

山本 そうですね、残念ながら多いです。たとえば、冷凍炒飯。電子レンジにいれる際にはラップをかけないで、と表示してあるにもかかわらず、ラップをかけて解凍して「やっぱり冷凍炒飯はベチャッとしておいしくない」などと言われると悲しくなります。

 あと、スーパーで冷凍食品を買ったら、必ず保冷剤をもらってください。「家が近いから」とか「すぐ帰るから」と保冷剤をもらわない方も多いんですが、帰宅途中で近所のおしゃべりな人に遭遇したり、すべての信号でストップしたりするなど、コールドチェーンを切らすトラップは意外に多く潜んでいます。保冷バッグの持参がベストですが、忘れた場合、買い物バッグの中では、なるべく冷凍食品は真ん中に入れ、サイドを常温品でブロックして、上に保冷剤を置く。そして、走って帰る(笑)。

 さらに、家庭の冷凍庫に入れた後は、賞味期間にかかわらず1〜2カ月で使い切ってください。マイナス18℃以下に保つ高性能冷凍庫でも、扉の開け閉めが激しい家庭では温度変化にさらされて、品質が低下していくからです。

■冷凍に向く食材

──「正しく」冷凍食品を購入・運搬し、家庭で調理する際は、表示をよく読んで「正しく」解凍すれば、冷凍食品はもっとおいしく食べられるんですね。今まで損していた気分です。冷凍食品の方がおいしい食材などはあるんですか? 

山本 冷凍うどんがおすすめです。一般に、でんぷん質の食材は「冷凍適性」があるといわれていて、うどん、パスタ、ラーメン、ご飯、パンなどは冷凍食品に向いています。冷凍うどんの最新工場では、茹でたての状態からわずか10分で急速凍結するほど冷凍技術が高くなっているので、正しく解凍すれば茹でたてのコシのあるうどんがおいしく食べられます。生卵を絡めれば、美味しい釜玉うどんになりますよ。ただ、ゆですぎ注意なので、1食だけの時は電子レンジで解凍するのがおススメです。暑い時期もレンジ解凍は便利ですね。お好み焼きなんかも、下手に家庭でつくるよりよっぽどおいしいんですよ。

 ホームフリージングでは、ごはんや食パンなど、当日食べきれない分を冷凍しておくといいですよ。家庭の冷凍庫だと冷凍に時間のかかる緩慢凍結になるので、急速凍結よりも品質は劣りますけど、1週間くらいで食べきるなら問題ないと思います。

──たった1〜2日でも、冷凍するとしないでは味に違いが出るんですか?

山本 トウモロコシや枝豆などは、生よりも冷凍食品の方がだんぜんおいしいです。我が家は家族みんなで冷凍食品を食べていますが、夫などは冷凍食品の枝豆をほぼ毎日食べるくらい、冷凍食品の枝豆信者です。

 トウモロコシや枝豆って、収穫したその段階から糖度がどんどん落ちてしまうんです。冷凍野菜の場合は、収穫して数時間で工場に到着しています。お店に売っているものはどんなに新鮮でも収穫後半日から数日経過していますよね。「新鮮でおいしい」枝豆を食べたければ、絶対に冷凍食品がおすすめです。

──調理の苦労もなく、一番おいしい状態で食べられるなら、活用しないともったいないですね。

山本 あと、具付き麺類もおすすめですよ。冷凍食品はお弁当のイメージが強いので、ファミリー層や若い人向けだと思っている方が多いんですが、実はシニアにこそ活用してほしい食材なんです。

 冷凍のラーメンやパスタ類は今、具付きのタイプのものが主流。レンジ加熱や鍋で煮るだけで美味しいもの、中には専門店の味が再現できるものもある便利な食品です。野菜やたんぱく質もとれますし、シニアの方のお昼ご飯などにも便利に使ってもらえると思います。これからも豊かでおいしい食生活を楽しむために、もっと冷凍食品が広まることを願って、発信を続けていきます。

◆ ◆ ◆

山本さんがおすすめする「冷凍うどん」をはじめ、冷凍めんのアレンジメニューが満載の日本冷凍めん協会ホームページ
https://www.reitoumen.gr.jp/

冷凍食品のアレンジや保存方法などの情報が紹介されている日本冷凍食品協会の「冷食ONLINE」
https://online.reishokukyo.or.jp/

取材・構成=相澤洋美

写真=釜谷洋史/文藝春秋

やまもと・じゅんこ
冷凍食品ジャーナリスト。「冷凍食品新聞」編集長、主幹を経て、2015年独立。現在は一般向けサイト「冷凍食品エフエフプレス」を立ち上げ、編集長としてサイト運営に携わる。冷凍食品の報道に携わって以来37年間冷凍食品を食べ、冷凍食品のよさとおいしさを発信し続けている。最近は冷凍食品解説者としてテレビ番組などでも活躍。夢は「冷凍食品ミュージアム」を設立すること。 https://frozenfoodpress.com/

(「文春オンライン」編集部)

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