肝胆膵がんは病院選びが命を救うこともある――「症例数」と「技術力」がポイント

肝胆膵がんは病院選びが命を救うこともある――「症例数」と「技術力」がポイント

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 他のがんもそうだが、とくに肝胆膵がんの高難度手術を受ける場合には、慎重に病院選びをしたほうがいい。なぜなら、病院選びが生死を分ける可能性もあるからだ。

 実際に、肝胆膵がんは施設によって生存率、合併症率、術死率といった成績に差があることが知られている。それを見極めるポイントの一つが「症例数」だ。たとえば、日本膵臓学会が作成した『科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2013年版』には、こう書かれている。

「膵頭十二指腸切除など膵癌に対する外科切除術では、手術症例数が一定以上ある専門医のいる施設では合併症が少ない傾向があり、合併症発生後の管理も優れている」

 この「手術症例数が一定以上ある専門医のいる施設」のことを、医学用語で「ハイボリュームセンター(High Volume Center)」という。何例以上がそう言えるのか定義は定まっていないが、複数の研究から膵がん手術では年20例以上、肝胆膵がん手術全体では年50例以上とされることが多い。

■かつては膵がんの手術が年数例という病院も

 このように、症例数によって格差があることを示すデータがあるにもかかわらず、日本では全国の多くの病院で肝胆膵がんの高難度手術を実施しており、かつては膵がんの手術が年数例という病院もたくさんあった。

 外科医の間でもこれを憂慮する声があり、難しい肝胆膵がん手術が必要な患者は特定の病院に集約すべきだという議論が学会でも起こった。そこで2008年に設けられたのが、日本肝胆膵外科学会の「高度技能専門医制度」だった。

 この制度は、「高難度肝胆膵外科手術をより安全に、かつ確実に行うことができる外科医を育てること」を趣旨としている(同学会ホームページより)。この資格を取得するためには、高度技能指導医のもとハイボリュームセンターと呼べる修練施設で、高難度肝胆膵外科手術を50例以上執刀しなければいけないことになっている。

 つまり、病院側からすると高度技能専門医を育てる「修練施設」になるためには、一定数以上(年50例または30例以上)の高難度肝胆膵外科手術を実施するハイボリュームセンターになる必要がある。これによって学会の目論見通り、肝胆膵外科手術を手がける病院の集約化はかなり進んだ。

 患者側も肝胆膵外科手術を受ける場合には、同学会の高度技能専門医または指導医がいる修練施設かどうかを確かめたほうがいいだろう。

 ただし、肝胆膵がんの手術で何人もの患者が亡くなった群馬大学病院と千葉県がんセンターも同学会の修練施設だった(2015年4月に同学会が両施設の資格を取り消し)。したがって、この資格を持っていることは、あくまで「最低限」の条件だと考えてほしい。

■ポイントは技術力

 肝胆膵がん手術では症例数に加えて、もう一つ見極めてほしいことがある。それは、「どれだけ高度な技術力を持っているか」だ。実は肝胆膵がんでは、「うちでは切れない」と主治医から言われた症例でも、別の病院に行ったら、「当院なら手術ができます」ということがよくあるのだ。

 もちろん、どんな症例でも当てはまるものではないが、筆者はある肝胆膵外科医から、膵がんが進行して『余命3ヵ月』と言われた患者が、その病院では手術をすることができて、10年以上元気でいるケースがあると聞いたことがある。もし前の病院であきらめていたら、その人の命はそこで終わっていたかもしれない。

 肝胆膵がんの患者で、これから受けようとする手術が高難度手術に当てはまる場合はぜひ、これらの手術の症例数が豊富かどうか、さらに、その病院の手術の合併症率や死亡率などが全国平均に比べて低いかどうかを確かめてほしい。

 その慎重さが、あなたの命を救うことにつながるはずだ。

出典:文春ムック「 有力医師が推薦する がん手術の名医107人 」(2016年8月18日発売)

(鳥集 徹/文春ムック 文春クリニック がん手術の名医107人)

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