おとり広告にだまされないために――異常に安い賃料の物件はもう手に入らない

おとり広告にだまされないために――異常に安い賃料の物件はもう手に入らない

©iStock.com

物件情報を探すとき、最初に目にするのは不動産ポータルサイトが多いだろう。ここ数年、成約済みの物件なのに「ご紹介が可能です」とユーザーへ連絡が来るなど、悪質な業者による「おとり広告」が問題視されてきた。私たちは何に気をつけてポータルサイトを利用すればいいのか、不動産・住宅情報サイト「SUUMO」編集長の池本洋一氏が解説する。

◆ ◆ ◆

■どんな「おとり広告」と戦ってきたか

 家賃がとても安い物件のウェブ広告などを見て、不動産事業者に問い合わせをしてみると「紹介できます」と言われ、店舗まで出向くと「先ほど、申し込みが入ってしまいました」と別の物件をおすすめされる……。実際には、広告に出ていた物件がすでに入居済みであったり、架空の物件のケースもある。これがいわゆる「おとり広告」だ。

 社会問題化する不動産のおとり広告を撲滅しようと、2017年1月から、不動産ポータルサイト5社(at home、CHINTAI、HOME’S、マイナビ賃貸、SUUMO)と公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会(以下、公取協)が協力した施策がスタートしている。公取協から違約金の措置を受けた不動産事業者は、違約金だけでなく、主要ポータルサイトに原則1カ月以上広告を掲載できなくなる。我々が、どんなおとり広告と戦い、ユーザーは何に気をつけてポータルサイトを利用すればいいのか、具体的に明かしたいと思う。

■出会う確率が高い「契約済み物件」

 まず、おとり広告は3パターンに分類される。はじめに「架空物件」。物件が存在しないため、実際には取引することができないケースだ。2つ目が「意思なし物件」。物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件のことを指す。冒頭のように、非常に安い賃料などの好条件が提示されているが、いざ店舗に行ってみたら「内見できません」、「大家さんが変な人なんです」などという言い訳をして契約させないようなケースがある。3つ目が「契約済み物件」。物件は存在するが、すでに契約されているため、実際には取引の対象となり得ない物件だ。すでに入居者がいる物件や、申し込みが入っている物件のため、取引ができない。

 ユーザーは、3つ目の「契約済み物件」に出会う確率がもっとも高いと思われる。最近「SUUMO」のカスタマーから寄せられた声を、いくつか紹介したい。

■「先ほどの物件は申し込みが入ってしまった」と代替物件を紹介

 部屋の内見を申し込んで、金曜日の午前中に見たいと言ったのに、不動産屋の都合で「月曜にしてください」と言われた。待っていたところ、週末の間に「他の人から申し込みが入ったから二番手でもいいか」とメールで連絡してきた。こっちは金曜に申し込んでいたのに……。「そちらの都合で月曜にするように言われただけで、私が一番手でしょう」と返信したら、音信不通になった。

 7月中旬に、メールで空室確認を問い合わせ、夕方頃に「物件紹介可能」と返信があった。3日後に内見希望と伝えたところ、「先に店舗に来てほしい」と言われたため、その足で店舗へ。到着してすぐに、「この物件は今内見が入っている」、10分後に「先ほどの物件は、その方からの申し込みが入ってしまった」と言われ、代替物件を紹介し始めた。明らかに不審だったので「本当はいつから埋まっていたんですか?」と尋ねると、態度が豹変。恫喝するような口調で「申し込みが入ってしまうことはある。了承できなければ、物件探しなんてできませんよ!」と激怒された。

 あくまでも一部ではあるが、こういった事例が現実に起きているのだ。借りられない物件なのに、広告として表示されてしまうケースの中には、悪質な業者が故意に掲載している場合もあるが、本当に申し込みが決まってしまった「タイムラグ」や契約成立後の「削除忘れ」というケースも、実は多い。

■肝心なのはユーザーが故意の事例にどう気づき、対処するか

「SUUMO」の場合、不動産事業者に対して1週間に1回は情報更新してもらうとともに、他の不動産事業者やカスタマーからの指摘によって、契約済み・申し込み済みであることが分かった場合には速やかに物件情報を削除することを依頼している。また昨年10月からは、削除依頼だけではなく、契約済みが確認できた場合は、自社の判断で掲載を停止している。こういった対策によって「タイムラグ」や「削除忘れ」による、借りられない物件の掲載をかなり減らせることができるのでは、と考えている。

 肝心なのは、先ほどの体験談のように、ユーザーが故意の事例にどう気づき、悪質な不動産事業者へどう対処するかだ。

■おとり物件ではないか確認するための一番いい方法

 まず伝えたいことは、異常に安い賃料の物件はもはや手に入らないということ。数年前までは、実際に来店を促す一つの武器として、いい物件をポータルサイトには載せず、店舗のみで紹介するということが成立していた。ところが、現在では競争ルールが厳しくなってきていて、不動産事業者の視点に立ってみれば、ほとんどのユーザーからの問い合わせが、ポータルサイト経由となっている現実がある。つまりポータルサイトにいい物件を載せないことには商売にならないのだ。賃料などの条件は、ウェブ上で一覧できる。不当に高かったり安かったりする物件というのが、次第に淘汰される時代になっていると言えるだろう。だから、お得物件が急にポータルサイトに掲載されるということは、まずないと思ってほしい。

「この物件、いいかも」と思ったとき、おとり物件ではないかを確認するために一番いい方法は、不動産事業者と「現地待ち合わせ」を要望するということ。そうすれば、「架空物件」や「意思なし物件」を見分けることができる。直球で「ひょっとして、おとり物件ですか?」と聞いてみるというのも手かもしれない。また、基本的には「気に入った物件だけを現地で見せてもらえばOKです」と言い切ることも大切だ。気になる言動があれば、「会社名 おとり」、「会社名 評判」と検索してみれば、得られる情報もあるだろう。

 不動産ポータルサイト5社と公取協では、不動産事業者や管理会社、仲介業者など、関係者を対象とした「おとり広告」に関する勉強会を全国で行なっている。幸いなことに、回数を重ねるごとに、違反件数は目に見えて減少傾向にある。これまで述べてきたように、ユーザー側の心がけによって「おとり広告」に惑わされるリスクを回避することも十分可能であることを、知ってほしいと思う。

(池本 洋一)

関連記事(外部サイト)