森保ジャパン、初陣コスタリカ戦。見逃したくない5つのポイント

森保ジャパン、初陣コスタリカ戦。見逃したくない5つのポイント

7月末に日本代表監督に就任した森保一。9月11日のコスタリカ戦が初陣となる ©文藝春秋

 みなさん、こんにちは。スポーツライターの二宮寿朗です。

 文春オンライン編集部から「森保一監督率いるサッカー日本代表の初陣(コスタリカ戦=11日、パナソニックスタジアム吹田)を観戦するうえで、事前に知っておくべき10個のポイント」をリクエストされました。「ロシアW杯を見て興味を持ったのに、メンバーに知っている名前がない!と動揺しているファンにも引き続き代表サッカーに興味を持ってもらうための解説を、池上彰さんのように分かりやすくお願いしたい」と。

 10個も無理です。と応じたら、「なら7個、いや5個でいいです」。

 池上さん、自信ないです。と応じたら「あくまでイメージで」。

 ということで、池上さんになったつもりで「5つの質問」に答えていきたいと思います!

質問1.「どうしてロシアW杯メンバーからこんなに入れ替わるんですか? ロシアで活躍した乾貴士選手や大迫勇也選手たちを見たかったのですが……」

解説

 今回、ロシアW杯のメンバー23人から入ったのはGK東口順昭(ガンバ大阪)、DF槙野智章(浦和レッズ)、遠藤航(浦和レッズ→シントトロイデン)、植田直通(鹿島アントラーズ→セルクル・ブルージュ)、MF山口蛍(セレッソ大阪)、大島僚太(川崎フロンターレ)の6選手だけ。山口、大島両選手はケガで辞退したため、結局4人になりました。「活きのいい若手」が中心に呼ばれました。メンバーの平均年齢もロシアW杯の28歳台から3歳も若返っています。

 過去におけるW杯後の初陣を見てみるとアルベルト・ザッケローニ監督は10年10月のアルゼンチン戦で22人中12人を南アフリカW杯メンバーから選びました。4年後の14年9月ウルグアイ戦、ハビエル・アギーレ監督はブラジルW杯メンバーから22人中11人を選んでいます。ですから今回の森保一監督の選考は、ちょっと異例に映るかもしれません。

 大きな理由に「選手の情報を持っているかどうか」があります。ザッケローニ、アギーレ両氏は監督に就任したばかりで日本人選手の情報が少なく、まずはW杯メンバーを自分の手元に置いて力量を把握したかったというのがあると思います。そして手堅い選考になるもう1つの理由は、翌年1月にアジア王者を決めるアジアカップが控えているからです。結果の求められる大会が半年後に待っているわけです。

 森保監督はロシアW杯の日本代表コーチとして帯同していましたから、メンバーのことは把握しています。

 そして欧州シーズンが始まったばかりで、所属クラブでレギュラー争いに専念してほしいという思いもあるはずです。乾選手、大迫選手、原口元気選手、武藤嘉紀選手たちは今季から新しいクラブに身を置いています。なので今回は国内のJリーグで活躍している選手プラス、海外で次の日本代表に入ってきそうな若い選手をピックアップしたのではないでしょうか。

質問2.「長谷部誠選手が代表を引退して次のキャプテンに注目していました。なぜ国内組の青山敏弘選手が指名されたのでしょうか?」

解説

 サンフレッチェ広島のキャプテン、青山選手が代表でもキャプテンを務める予感は私のなかにありました。代表経験豊富な吉田麻也選手や長友佑都選手たちが招集されていないので、「青山キャプテン」はあくまで暫定的だとは思います。しかし私の勝手な予想ですが、「青山キャプテン」は継続していくんじゃないかとも考えています。森保監督はサンフレッチェ広島監督時代に3度、Jリーグを制しました。青山選手がチームの中心を担い、14年シーズンからはキャプテンとしてチームを束ねています。責任感が非常に強く、リーダーシップを持っています。森保監督としては自分のチームづくり、戦術を熟知しており、彼の姿勢を通じて「自分のやり方」を浸透させていくという狙いがあるように思います。

 ただ「青山キャプテン」はほかにも理由があるような気がしてなりません。チームの立ち上げを国内組から始めたと言えば、06年ドイツW杯後に就任したあのイビチャ・オシム監督です。彼は当時ジュビロ磐田に所属した川口能活選手をキャプテンに指名しました。ある程度チームをつくっておいてからセルティックに所属していた中村俊輔選手ら海外組を呼び入れる方法を採用しました。

 森保監督はひょっとするとザッケローニ監督やアギーレ監督、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のように、試合があるたびに主力と考える海外組を全員呼び戻す手法を考えていないのかもしれません。さすがに今は国内組で代表キャンプを行なうのも難しくなっており、オシム監督のような手法は取れないと思いますが、それでも今回のように国内組がベースとなる試合もあるよというメッセージを感じるのです。幅広い人選で欧州の主力を呼ばない可能性があるのなら、国内組からキャプテンを選んだほうがいい。その観点からの青山キャプテンではないかという見方を私はしています。

質問3.「ズバリ、二宮さんの推しメンは?」

解説

 新しいメンバーで見てもらいたい選手はいっぱいいるんですよね。レフティーのテクニシャンで中村俊輔ばりのセットプレーの精度を持つ横浜F・マリノスの天野純選手、今季首位を走るサンフレッチェ広島の原動力になっていて、対人に強くエネルギッシュなDF佐々木翔選手、海外で言えば、高速ドリブラーの21歳、伊藤達哉選手(ハンブルガーSV)そして、左利きの才能溢れるアタッカーである20歳、堂安律選手(フローニンゲン)……。ただ今回、僕が一番注目しているのは伊藤、堂安両選手と同じ東京五輪世代で、ベルギーのシントトロイデンでレギュラーとしてプレーする19歳のDF冨安健洋選手です。

 日本のセンターバックは、層が厚いとは言えません。吉田選手、昌子源選手がロシアW杯でレギュラーを張りましたが、新しい選手が出てきてほしいポジションです。

 188センチのサイズは魅力で、高さや強さばかりでなく、足元の技術もあります。ビルドアップ能力に長け、ここはベルギーでも磨かれています。アビスパ福岡時代から高い評価を受けており、ベルギーに渡ってどれほど成長しているのかを見てみたいなと思います。まだまだ名前は知られていませんが、ぜひチェックしていただきたいですね。

質問4.「森保一監督はどのようなサッカーをすると思いますか? それを言葉で表現するとしたら?」

解説 

 これは難しい質問ですね。実際にコスタリカ戦を見てみないとなかなか語れないとは思います。システムで言えば先のアジア大会でも3−4−2−1がベースになっていましたが、A代表の紅白戦では4−4−2をテストしたようです。3バックに固執しているとは思えません。

 サンフレッチェ時代は、攻守に主導権を握るチームづくりを目指していました。特に3度目の日本一となった2015年シーズンは得点73、失点30で得失点差+43という圧倒的な強さで年間1位の座に就きました。得点もリーグ最多なら、失点もリーグ最少。攻めて良し、守って良し、ボールを持っても良し、持たなくても良しと、攻守においてバランスの良いチームという印象があります。国際舞台でもそのようなチームをつくりたいと考えているのではないでしょうか。

 それと、ハリルホジッチ監督の「デュエル」のようにチームを表現できるフレーズですよね。何か特徴を探してみますと、一つ「クリーン」であることが言えると思います。2012年にサンフレッチェの監督に就任してから5年連続でチームはフェアプレー賞を獲得しています。いつぞやのJリーグアウォーズで、森保監督は「勝つために激しく、厳しくやるのは当然だとしても、人を傷つけるファウルや暴言、異議で無駄なイエローカードをもらうことはやめようとずっと言い続けてきました。選手たちは試合で熱くなっているときも常にクリーンで、かつ激しく、厳しくプレーすることを忘れずにやってくれたことを誇りに思います」とスピーチしたことが、私の記憶に残っています。ロシアワールドカップでもフェアプレーポイントでセネガルを上回り、決勝トーナメントに進んでいます。「クリーン」が森保ジャパンの一つのカラーになるような気がしています。

質問5.「森保監督の多忙ぶりは気になるところ。東京五輪代表監督との兼任は可能ですか?」

 解説

 いい質問ですね(これ一度、言ってみたかったです)。確かに森保監督は多忙極まりないです。インドネシアで開催されたアジア大会に東京五輪世代のU-21代表で臨み、準優勝しました。今月1日の決勝戦を前に、A代表のメンバー発表が現地で行われています。日本で行われないのは極めて異例です。「しっかり選考できているんですか?」という疑問もあるとは思いますが、技術委員会スタッフの報告も参考にしつつ、メンバーを選んだとのこと。帰国して休む間もなく、A代表の活動に入っております。兼任のデメリットとしてはA代表の活動に(または東京五輪代表の活動に)専念できないというのは確かにあります。

 ただ逆にメリットもあります。それは「多忙」に象徴されるように、五輪代表もA代表も両方指導できることです。先述しましたが、今の時代、Jリーグの超過密日程もあって国内でA代表の強化キャンプを張ることも簡単ではありません。A代表の活動そのものの時間も少なくなっています。しかし2つの代表を兼ねることによって、たとえば五輪代表で評価を上げてきた選手をA代表に抜擢しやすくなります。そうなると2つの代表でその選手を手元に置くため、より自分の考えやチームコンセプトなどを落とし込みやすいと言えます。これまで五輪代表の中心選手であっても、A代表に呼ばれない選手もいました。五輪代表とA代表がリンクするのは、大きなメリットだと私は考えます。つまり今回のA代表は「リンク」の出発点となります。そんな観点からコスタリカ戦を見てみてはいかがでしょうか?

 以上、編集部からの質問にお答えしました。

 結果も内容も良ければ、欧州から多くの選手を召集するはずの10月の親善試合でも今回のメンバーが入っていくと思います。

 それにしても池上さんへの道は難しいっ!

(二宮 寿朗)

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