東海道線に107年ぶりに誕生する“ナゾの新駅”には何がある? 白亜の建物、巨大な更地…

JR東海道線、大船駅と藤沢駅の中間地点に「村岡新駅」を予定 107年ぶりの新しい駅

記事まとめ

  • 「村岡新駅」は、JR東海道線の大船駅と藤沢駅の中間地点に設置される予定の新駅
  • 107年ぶりの新しい駅で、「村岡新駅」(仮称)は、2032年ごろの開業を予定している
  • 70代男性は「地元で喜んでる人は少ないんじゃないかな」と新駅に興味が無さげだった

東海道線に107年ぶりに誕生する“ナゾの新駅”には何がある? 白亜の建物、巨大な更地…

東海道線に107年ぶりに誕生する“ナゾの新駅”には何がある? 白亜の建物、巨大な更地…

大船駅寄りにある、鎌倉車両センター付近。大船駅発の成田エクスプレスの車両も見える。

「東海道本線」は、日本で最初に敷設された鉄道路線であり、交通の要となる大動脈。なかでもJR東日本が管轄する「東海道線」は東京駅から熱海駅までを繋ぎ、通勤・通学だけでなく都心から伊豆方面への観光などにも大いに利用されている。

 この東海道線に、107年ぶりに新しい駅が設置されるという。

 大船駅と藤沢駅の中間地点に設置される予定の「村岡新駅」(仮称)は、2032年ごろの開業を予定しており、このほど設置に関する基本協定が締結された。

 なぜ、いまこんな場所に駅ができるのか。実際に現地に行ってみた。(取材・文=素鞠清志郎/清談社)

◆◆◆

■1985年に廃止された「湘南貨物駅」の跡地

 1925年に開業した熱海駅以来、東海道線に107年ぶりに誕生するという「村岡新駅」。

 東京駅から熱海方面に向かう東海道線に乗ると、新橋、品川を経て、大船駅に停まる。大船駅は、東海道線に加え、横須賀線、根岸線、湘南モノレールとも連絡しているターミナル駅。ここから藤沢駅方面に約2.6kmほど進んだあたりに「村岡新駅」の設置が予定されている。

 藤沢駅も、小田急江ノ島線や江ノ電が接続し、藤沢市の玄関口ともいえるターミナル。村岡新駅の予定地は、この人気の2駅に挟まれた場所ということで、それなりに栄えているのかと思ったが、実際に行ってみると寂しい雰囲気で、祝日の昼間ながら人影もまばらだった。

 唯一の商業施設といえるのが、1階がdocomoショップ、2階にTSUTAYAが入った建屋。かつて、この周辺には「湘南貨物駅」があったという。

 1969年に開業した「湘南貨物駅」は、その名の通りの貨物車専用駅。1985年に廃止され、その跡地を藤沢市が購入。住宅展示場やフットサル施設として暫定利用してきたという。

■白亜のビルが立ち並ぶ巨大施設「サイエンスパーク」

 このTSUTAYAも、かつてはJR貨物がフランチャイズ運営をしていたらしく、その当時は看板にJRのフランチャイズ経営を示す「JRF」の表記がなされていたという。

 では、この貨物駅はなんのために設置されていたのかというと、隣接する武田薬品工業の湘南工場や、神戸製鋼の藤沢事業所などに資材を運んでいたようだ。

 武田薬品の湘南工場は2006年に閉鎖。その跡地には新たに研究開発所が設立され、現在は「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」という名称の施設になっている。

 「湘南アイパーク」は、白亜のビルが何棟も立ち並ぶ巨大施設で、ゲートあたりから中を覗くと、静かに水を湛えた貯水池があり、桜並木もみえる。

 外からでは何をやっている施設なのかまったくわからないが、サイトをみると「2018年4月、武田薬品工業株式会社が湘南研究所を開放することにより設立された、企業発のサイエンスパーク」と説明されている。

 さらに「製薬企業のみならず、次世代医療、AI、ベンチャーキャピタル、行政など、幅広い業種や規模の産官学が結集し、エコシステムを形成することで、ヘルスイノベーションを加速する場となることを目指しています」とあり、様々な企業の研究所が共同で入っているようだ。

■「地元で喜んでる人は少ないんじゃないかな」

 この湘南アイパークに対し、線路を挟んだ反対側に立つ神戸製鋼の藤沢事業所は現在も操業中。

 村岡新駅は、この2つの巨大施設に通勤する客を取り込むというのが第一の狙いだと思われる。

 神戸製鋼付近を歩いていると、藤沢市が運営する「市民農園」があった。そこで、土いじりをしていた男性に話を聞いた。

「新しい駅ができるっていうのは聞いているよ。この3月に説明会が開かれるというけど、具体的にどういう計画なのかはわからない。地元で喜んでる人は少ないんじゃないかな。この農園もなくなっちゃうかもしれないしね……」

 70代で、このあたりで生まれ育ったというが、新駅にはあまり興味が無さそうだった。

「駅を作るっていう計画はもう何年も前からあるんだよ。もともとはタケダさんの工場が移転するのを引き止めるために計画したんじゃなかったかな。でも、工場は出てっちゃったし、そのあと研究施設になったみたいだけど、何をしてるのかよくわからないね」

「湘南アイパーク」は、地元民にも謎の施設と捉えられているようだ。

「あっちの車両工場の跡も再開発するっていうけど、あそこは鎌倉市だから私はよくわからん」

■巨大な更地に鎌倉市役所を移転する?

 男性が言っているのは鎌倉市の深沢地区にあった「東日本旅客鉄道 大船工場」の跡地のこと。国鉄時代から操業していた車両基地であったが、2006年3月に閉鎖され、その跡は広大な空き地となっている。

 鎌倉市はここを再開発する予定で、住居や商業施設を誘致するだけでなく、鎌倉市役所を移転させる計画も発表されている。

「村岡新駅」からは少し離れているが、「村岡新駅周辺地区まちづくり方針案」によると、この深沢地区までを「シンボル道路」でつなぎ、そこに「次世代交通の積極的導入を検討」しているそうだ。

 このような規模の計画であるため、今回の新駅開発はJR東日本と、神奈川県、藤沢市、鎌倉市の4者合同事業となっている。概算事業費は150億円で、これをJRが15%、神奈川県が30%、藤沢市と鎌倉市がそれぞれ27.5%ずつ負担する形となっている。

 深沢地区の周辺は、現在は大きな商業施設はなく、小規模な鉄工所や老人ホームばかり。青果市場があるがさびれていた。ただし狭い道でも車の交通量は多く、少なくとも区画整理をして道路をつけかえる意味はありそうだ。

■鉄道オタクは「え? そんな駅ができるんですか?」と

 深沢地区から新駅予定地周辺に戻る途中、線路沿いで電車を撮影している男性がいた。ハンディ無線機で列車接近警報を傍受しながらカメラを構えており、なかなかのマニアっぷり。

 鉄道オタクなら新駅に詳しいと思い、話を聞いてみたが「え? そんな駅ができるんですか? 全然知らなかったです」とまさかの反応。

「185系という車両を使った特急踊り子号が3月で廃止になるんで、それを撮りにきました。村岡新駅? こんな所に作って意味あるんですかね」

■乗降客数の想定は1日約65000人

 鉄道マニアにも知られていない村岡新駅の前途多難ぶりを感じながらさらに歩くと、線路をまたぐ陸橋があった。

 その上から藤沢駅方面を眺めてみると、中央あたりに敷設された古いレールが見える。かつての貨物用の線路がそのまま放置されているもので、これをはずせば島式ホームを設置することができそうだ。

 陸橋を降りて少し歩くと、「十二天公園」があり、そこに子供連れで来ていた主婦の方に話を聞いてみた。

「駅ができるという話は聞きました。でも、正直言って利用しないと思いますね…。私の家はもっと藤沢寄りなんですけど、このあたりは静かなので、それが気に入ってよく遊びにきてるんです。なので、新駅ができて賑やかになったら逆に来なくなると思います」

 計画によると、新駅の乗降客数の想定は1日約65000人という。現地周辺を見て回ったところ、正直言ってこの場所にそんなに人が来るとは思えない。

 営業開始となる2032年には、周辺住民から大歓迎となっているのだろうか。

素鞠清志郎/清談社

(清談社)

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