「好きでやってるもんを『全部男のため』に回収されるの、つれ〜な〜」 『作りたい女と食べたい女』が描く“対等な女同士”のおいしいご飯

「好きでやってるもんを『全部男のため』に回収されるの、つれ〜な〜」 『作りたい女と食べたい女』が描く“対等な女同士”のおいしいご飯

©ゆざきさかおみ

 自炊をすれば「男ウケのため」と決めつけられ、外食をすれば「女性は小食だから」と断りなくご飯を小盛りにされる。「女の子にはビールの旨さ、分からないよね〜」と勝手にマウントを取られたかと思えば、無料の接待要員として扱われることもある……。 “女”という性に振り分けられた、あるいはそれを選んだ。ただそれだけの理由で、食事ひとつもまっさらな気持ちでは出来ない。一体どうして?

 このように、日々の生活の中で“女”を絡めとる悩みや苦しみ。それらを丁寧に描いた作品として話題になっているのが、ComicWalker(COMIC it)にて連載中の『作りたい女と食べたい女』です。ゆざきさかおみ先生によるこちらの作品は、ツイッター発のweb漫画。著者のツイッター掲載の時点で「いいね!」の総数は30万越え! 作品の公式アカウントは開設から2ヶ月で3万フォロワー突破、連載第7話はComicWalkerのデイリーランキング1位を獲得と、乗りに乗っている人気ぶりです。?

■野本さんの意識を鈍麻させたストレス

 料理が大好きな野本さんは、「もっと色々な料理を作りたい、でもひとり暮らしで小食だし、作ったところで食べきれない……!」という思いを日々燻ぶらせていました。そんなある日、野本さんは募る思いと職場でのストレスから、うっかり夕飯を作りすぎてしまいます。

 彼女の意識を鈍麻させたストレス。それは、同僚男性から向けられた「(自炊ができるなんて)いいお母さんになるなって」「俺も彼女には弁当作ってもらいたいな」という言葉でした。

「自分のために好きでやってるもんを『全部男のため』に回収されるの、つれ〜な〜」 

 目の前に、一人では到底食べきれない量のごはん。落ち込む野本さんの脳裏に、マンションの隣人である春日さんの存在がよぎります。実は昨日、大量のファーストフードを買い込んだ彼女と鉢合わせしていたのです。しかも春日さんは、それを全部一人で食べるという……。野本さんは意を決して、彼女の部屋のチャイムを押します。

「突然手料理をごちそうするなんて無理があるのでは」としどろもどろになる野本さんですが、対する春日さんは冷静。一口食べて無言……と思いきや、スプーンを運ぶ手が止まらない! がつがつと料理に食らいつき、あっという間に皿を空にしてしまいます。春日さんの豪快な食べっぷりに、高鳴る野本さんの胸。

「ずっと探してたんだ/一緒におなべをからっぽにしてくれるひとを」

 こうして、“作りたい女”と“食べたい女”の、ともに食卓を囲む日々が始まるのでした。

■認知度が急上昇した「生理回」

 そして、この作品の認知度が一気に高まったのが、第4話の「この世に同じ女はいない」。この回で描かれたテーマは「生理」でした。

 せっかくの休日、料理を作る気満々だった野本さん。しかし、ちょうどやってきた生理のせいで、ベッドから起き上がることもできません。そんな野本さんに、春日さんから絶妙なヘルプが入ります。

「(ナプキンは)普段使ってるの何ですか」「痛み止めはどこですか」「食べたいものありますか」。生理用品一式に、さらには鉄分ドリンクまで買ってきてくれる。この細やかな心遣い。生理に苦しんだ経験のある読者には「ぐっ」と刺さるのではないでしょうか。

 “同じ女”だから、相手の辛さも分かってあげられるんだ! ……と言いたいところですが、実はこの話、そのようには描かれていません。生理の諸症状が重い野本さんに対して、痛みはまったくなく、さほど苦しい思いをしない春日さん。体の性別は同じでも、“同じ女”ではないし、他人の辛さは分からない。だから相手に尋ねたり、調べたりするしかない。春日さんの気遣いは、“違う他人”としての野本さんへと向けられたものなのです。

 さらに、毎月の生理に苦しみながらも「私ぐらいの辛さで行くものじゃないのかなあって」と婦人科の受診をためらう野本さんにも、作品の中では丁寧なフォローがなされています。

■「対等な女同士」の関係性を描く

「生理回」のみならず、『作りたい女と食べたい女』では、“女”を取り巻く不均衡や抑圧を、要所要所で取りこぼすことなく拾い上げています。

 たとえば春日さんであっても、一人で入った飲食店で「少なくしておきましたよ!」と勝手にご飯の量を減らされ、あるいは見知らぬ男性客から「餃子にライス? 邪道だよそれ〜」と上から目線の説教をされる場面がある。理不尽で窮屈な、男のための社会。そこからひととき抜け出し、連帯できる場所として、二人の食卓は描かれているのです。

 そして、“作りたい女”の野本さんと、“食べたい女”の春日さん。この二人の関係も、ともすれば不均衡なものになりやすい。炊事、とくに女性が行うそれは、無償の家事労働としてその価値を認められないことがままあるからです。

 ですが、この作品はそうした不均衡を放っておくことはしません。第3話では、春日さんと野本さんの間に発生する「対価」がテーマ。これまでの食費と手間賃を計算して渡そうとする春日さんに、野本さんは「私が好きで作ったものだし…お金出してもらうほどのものなのかっていう…」と抵抗を示すのですが、春日さんはスッパリとそれを拒否します。

「労力に対して対価を支払うのは価値を明確にする上でも一番てっとり早い手段だと思うんですが」「それにお互いフェアじゃない気がして、私が嫌です」

 どちらか一方が“させてもらう”のでも、“してもらう”のでもない。二人はあくまで“作りたい女”と“食べたい女”であり、その関係性は対等なものなのです。

 もちろん、毎話描かれるおいしそうな料理の数々も、読み手の食欲をそそります。また、実際に作って食べてみたくなる料理が多いのもこの作品の魅力。読者参加型のハッシュタグ「 #つくってたべたよ 」には、作中で登場した「味噌焼きおにぎり」や「ソーセージ味玉丼」といった料理の写真が多数投稿されています。

 これから先、野本さんと春日さんはどんな料理を“つくってたべる”のか? そして食卓をともにする二人の間には、どのような変化が待っているのか?

 待望のコミックス第1巻は、6月に発売が決定。今後の展開から目が離せません!

?【ComicWalker】『作りたい女と食べたい女』
  https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_FS00202041010000_68/

【マンガ『作りたい女と食べたい女』第1話】春日さんの食べっぷりに高鳴る野本さんの胸。「ずっと探してたんだ 一緒におなべをからっぽにしてくれるひとを」 へ続く

(餅井 アンナ)

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