“少年院でご飯を1日3食食べると初めて知った” 「普通」がわからない少女たちのリアル

“少年院でご飯を1日3食食べると初めて知った” 「普通」がわからない少女たちのリアル

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「特攻服をお揃いで着るのもコスプレ感覚で楽しかった」 15歳で暴走族総長になった女性が、30年後に“ 女子少年院を全国制覇”したワケ から続く

 全国に9か所ある女子少年院。犯罪に手を染めてそこへ入ることになってしまった少女たちは、“普通”が何かわからないという。

「自分も同じ思いだった」と語る中村すえこさんは、自身も少年院に入院したという経験を活かし、ノンフィクション『 女子少年院の少女たち ―「普通」に生きることがわからなかった 』(さくら舎)を上梓した。

 中村さんが著書出版に至るまでの経緯を教えていただいた前編に続き、後半では取材を重ねた女子少年院の少女たちの実態について詳しく伺った。(全2回の2回目。 前編 を読む)

■性的虐待を受けても「お母さんが幸せそうだったから言えなかった」

――少女たちを取材していて印象的だったエピソードをお聞かせください。

中村 「幸せになるのが怖い」、「幸せを感じたことがない」、「少年院に入った自分が幸せになっていいのか」、そんな言葉を何度も彼女たちの口から聞きました。そんな思いを抱えるに至るまで、今まで一体どんな生活を送ってきたんだろうか。それは女子少年院を回り始めたときから、そして取材をしていくなかでもずっと感じていて。

 他にも、初めてご飯を1日3食食べることを知ったとか、初めて信頼できる大人に出会ったのが少年院だったっていう子もいましたね。

 東北の女子少年院に、お父さんを刺したという女の子がいました。刺した理由は、お父さんから性的虐待を受けていたから。なんでお母さんに相談しなかったのって聞いたら、「お母さんが幸せそうだったから言えなかった」って。自分も幸せになっていいはずなのに、この子はずっとお母さんに遠慮して我慢していたようです。

 こういった子が少年院に送致される理由というのは、親を刺した罪だけが理由ではなくて、子供を置いておけない環境の家から引き離すという意味もあります。

■「孤独」という言葉では片づけられない犯罪に手を染める少女

――そんな、やむなく罪を犯してしまう少女たちに、共通点はあるのでしょうか。

中村 女子でも男子でも、「居場所がない」とか「孤独だ」とか「どうせ私なんか」って感じる気持ちは一緒なんだなって思いました。かつて私が抱いていた気持ちを今の子たちも感じている。そういった意味では、犯した犯罪はそれぞれ違っていても、根底にある問題は同じ。

 ただ、手を差し伸べてくれる人や理解してくれる人が、私の10代のときよりも減っていて、無関心な人が増えているのかなということも感じています。当時金髪になった私を見ても、近所のおじさんやおばさんは声をかけてくれましたから。今は昔と比べたら孤独になりやすい環境かもしれません。この言葉だけで片付けたくはないのですが……。

――“孤独”が犯罪に手を染めるきっかけになりやすいと。

中村 子供たちが立ち直るために大切なのは、“独りじゃない”、“自分を認めてくれる人がいる”と思えるようになること。そのために、子供にとって信頼できる大人がちゃんとその子と向き合うことで、彼ら自身も変わっていけると信じています。

 特に不良系の子は、“自分のことを思ってくれてるかどうか”に敏感なんですよね。単純に、この人は自分のことを好きだって感じたら、自分も好きになれる。生活の支援をしてくれるとか面倒を見てくれるとかじゃなくても、自分のことを思ってくれる気持ちが伝われば、その人を裏切りたくないっていう心が育つはずです。

 生まれたときから不良なんて人はいないですからね。一人で変われる力を持った人もいるかもしれないけれど、人との関わりはとても大切です。

 そういった意味では“子供を変える”、“社会を変える”、この2つに優先順位はなくて、同時に変えていかなければいけない課題かなと思いますね。子供に“独りじゃない”と感じさせるのも大切。一方で「助けて」と言えない子に手を差し伸べられる環境を作るのも同じくらい重要です。

■映画化と著書出版 思いがけない少年院側の変化

――映画の制作、そして書籍化。反響は大きかったそうですね。

中村 映画を観てくれた人にアンケートをとったら、「家に帰って子供と話したくなった」とか、学校の先生からは「自分にもっとできることがあるんじゃないかと思った」というコメントを頂きました。本を読んだ中高生からは「司法を学びたいです」、「Zoomで話が聞きたいです」というようなメールも。

 私が作ったもので、何かしらを伝えることができたんだなって実感しましたし、若い子が高い意識を持ってくれているってことがわかってとても嬉しかったです。

――では、活動を続けていくなかで中村さんが社会に感じた変化は?

中村 かつての少年院は、“ここを出たら、もう2度と戻ってくるんじゃないよ”っていうスタンスだったんですけど、今はむしろ出てからが大事だという考えに変わってきていて、退院後のケアを重んじるようになっています。

 やっぱり退院してからの社会環境は大事であってそこで築く人間関係が大切。それは『セカンドチャンス!』として活動していくうえで“社会に出てからこうして更生できた”という事例を発信し続けたことで浸透させられたと思います。

 12年前に『セカンドチャンス!』ができたときは、当事者支援団体ってなかったんですよ。その団体の影響力っていうのは、この10年余りですごくあったんじゃないかな。

(※『セカンドチャンス!』…少年院出院者同士が経験や将来の希望をわかちあい、仲間として共に成長していくことを目的としたNPO法人)

■法改正で少年院を出た後でも先生に電話を掛けられるように

――具体的にどう変わったんでしょうか。

中村 平成27年に66年ぶりの法改正があって、少年院を出た後でも少年院の先生に電話を掛けられるようになったんです。今までは退院したら先生を含めた少年院出身者とは接触を取ってはいけなくて、このことはなかったことにして生きていきなさいみたいな教えでした。

 でも、少年院出身者同士だから共有できる痛みもあるし、プラスになることも多いんじゃないかという発想になってきた。そういった考えは以前の少年院側にはなく、我々がいくら説いても認めてもらえませんでした。

 ただ、そのなかでも「実は俺もそう思ってたんだ」と賛同してくださる先生もいて。そういった先生たちが出世したりして、今に至るいい変化をもたらす後押しをしてくれたんじゃないかと思います。子供たちにとって、何か困ったことがあったときに、お世話になった先生を頼ることができるのは心の支えになりますからね。

――社会で少年を支援する保護司や更生保護団体の負担も増えていきそうですね。

中村 そうなんです。支援者って大変なんですよ。24時間365日、仕事をしているようなもの。彼らももちろん人間ですから、子供たちと冷静に接することができないときもあります。

 子供側だけじゃなく、支援する側の負担がかかりすぎないように、勉強会を開いたり、現場の状況を把握したりして、どういうことが必要なのか、彼らが追い詰められない現場作りのために国が動いてくれているんです。私としても、彼らも大変なんだっていうのは多くの人に伝えたいなと思っています。

■次のテーマは“少年が犯罪を繰り返す理由”

――現在は映画の続編制作に向けて準備中のようですね。

中村 そのための資金集めと、4月以降始まる撮影の準備を進めていて、今のところ公開は2022年の7月を予定してます。今回は、男子少年院の少年たち3、4人を退院後も含めて追っていく予定です。

 男子は3人に1人が再犯するというデータが出ていて、“少年はなぜ犯罪を繰り返すのか”という面に焦点を当てようとしています。少年らの根底にある、もう自分なんてどうなってもいいんだという思いから、再犯に手を染めそうになったとき、何が彼らを止められるのかと思って。

 そしてその答えは、すでに私のなかにあるものを言い切ってしまうんじゃなくて、観た人が“こういうことをすれば再犯を防げるんじゃないのか”とそれぞれの答えを出せるように、そのきっかけになるような内容にしたいなと考えています。

――どういった少年院を撮影していく予定なんでしょうか。

中村 取材予定の男子少年院は2つあり、少年院側も今はこういう教育にすごい力を入れているんだっていうのを見せていきたいです。

――1作目で出た彼女たちのその後は?

中村 佳奈(仮名)は2作目にも登場してもらう予定で、今も追っている途中。映画として、やっと“少女たちにはこういうことが必要なんだ”ということを伝えられるものが撮れたんじゃないかなと思っています。映画では顔にボカシを入れているので表情まではわからないんですが、彼女たちの表情もだんだん大人びていって、顔つきも本当によくなっているんですよ。

“人は変われる”、“社会は変えられる”。そのために多くの人々の意識をほんのちょっとだけでも変えていって、それを証明していけたらと思います。

(文=二階堂銀河/A4studio)

INFORMATION

ドキュメンタリー映画 「記憶2」(仮題)オフィシャルサイト

https://nakamurasueko.com/kioku2.html

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「お母さんと思えない。他人感覚しかない」 覚せい剤で逮捕された17歳の少女は、なぜ児童養護施設に“いられなくなった”のか へ続く

(中村 すえこ)

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