【DHCまた問題文章「NHKは日本の敵」】DHC会長の“サクラ投稿指示”に反対した新入社員が年末に懲戒解雇されていた!

【DHCまた問題文章「NHKは日本の敵」】DHC会長の“サクラ投稿指示”に反対した新入社員が年末に懲戒解雇されていた!

東京都港区にあるDHC本社

《DHC人事部の退職勧奨音声》「差別発言は問題じゃない」サイト批判の新入社員を懲戒解雇 から続く

 化粧品会社DHCの差別的文章がまた問題となっている。公式オンラインショップのサイトに、吉田嘉明会長名で「NHKは日本の敵です。不要です。つぶしましょう」などと誹謗中傷する文章が掲載されたからだ。NHKは4月9日の「おはよう日本」で、DHCの公式サイト上に在日コリアンに対する差別的な文章が掲載されていることを報じていた。

「文春オンライン」では昨年末と今年1月、社員や元社員の告発を元に、吉田会長とDHCの問題を報じていた。当時の記事を再公開する(日付、年齢、肩書き等は掲載時のまま)。

◆ ◆ ◆

 昨年末、差別的な発言で炎上した大手化粧品メーカー「DHC」の代表取締役会長・吉田嘉明氏(79)。「文春オンライン」特集班は、差別発言以外にも吉田氏が従業員に消費者の口コミを大量にSNSに投稿するよう指示していたことや、「愛社精神指数」と呼ばれる指標で賞与額を決めていること、人事評価で低評価の社員を「穀潰し」と呼んでいることなどを詳報した。

 報道直後から、編集部には続々と同社に関する情報が寄せられた。「報道内容はDHC社内の問題の氷山の一角に過ぎない」という。

 そんな中で、ちょうど記事が公開された昨年12月28日、ひとりの男性新入社員が研修中の人事部付きの身でありながら、懲戒解雇処分を受けてDHCを去っていた??。

 労働問題に詳しい神奈川総合法律事務所の嶋崎量弁護士が話す。

「懲戒解雇は『死刑判決』に例えられることもあるほど、労働者にとって最も重い処分です。仕事を失うだけでなく今後のキャリアにも傷がつく。それほど厳しい処分を、本配属もされていない研修中の、人事部付きの新入社員が受けることは、会社のお金を横領する等の犯罪行為を社内で行うような場合でもない限り、一般的にあり得ない」

 新入社員はなぜ懲戒解雇処分になってしまったのか。「文春オンライン」特集班は本人に直接話を聞いた。(全2回の1回目/ #2 に続く)

◇◇◇

■爽やかな青年がDHCに入社した理由

 2020年4月、新型コロナウイルスが日本でも猛威を振るい始め、多くの企業がリモート業務を取り入れるなどの変化を求められていた頃、Aさんは都内の有名大学を卒業しDHCに入社した。Aさんは爽やかなルックスの青年で、大学在籍中にはダンスサークルにも所属していたという。

「就活が始まって企業研究をするなかで、DHCが化粧品だけでなく医薬品、アパレル、介護やホテル経営まで幅広く事業展開をしていると知り、志望しました。もともとIT関連の仕事に興味があり自主的に勉強していたのですが、DHCという誰もが知る大企業が展開する事業の数々をITの視点から動かすことに興味を持ち、入社に至りました」

 しかし期待を胸を膨らませていたのも束の間、4月8日には緊急事態宣言が発令され、Aさんを含むDHCの新入社員は2カ月間の自宅待機となった。真新しいスーツに身を包んだのは、6月になってからだ。

「ようやく社会人になるんだと心が躍りました。専門企業の方から1カ月間ビジネスマナーを教えていただくことからDHCの新人研修がスタートしました。本格的な現場研修は7月からでした。20名弱の同期が各部署に仮配属されました。

 DHCでは人事部が問題ないと判断した新人から順に本配属が決まっていくと聞かされていたので、気を引き締めて頑張っていこうと思いました」

■「とても優秀でした」Aさんの希望に満ちた日々

 研修中のAさんを知るDHC現役社員が語る。

「Aくんはとても優秀でした。リーダーシップもあり、研修中に出される課題にも一生懸命取り組んでいました。人当たりもよくてコミュニケーションスキルが高い印象で、『新入社員のAくんと飲みに行ってきたよ』と話す社員もいました。物怖じせず人の懐に入っていくので、ある意味、新入社員らしいフレッシュさはなかったかもしれませんね(笑)」

 Aさんにとって例年より遅れてスタートした社会人生活は、思いのほか楽しいものだった。研修が始まって2カ月が経つ頃には、DHCで長く働きたいと思うようになったという。

「マーケティングの視点から商品と消費者の関わり方を学んだり、工場から商品が出荷されるまでを目の当たりにしたり、DHCという巨大な組織がさまざまな仕事で成り立っていることを実感しました。自分もこの会社で居場所を見つけて、大きな仕事をできるようになりたい、そう思いました。先輩社員もとても良い人たちばっかりで、毎日とても楽しかったです」(Aさん)

 しかしAさんの希望に満ちた日々は長くは続かなかった。2020年8月、 「文春オンライン」でも報じた“サクラ投稿” についての社内通達が掲示されたのだ。

■社内に通達された“サクラ投稿”指示

 この“サクラ投稿”とは、「らくがき板」というハガキに書かれた消費者の感想コメントを、SNSや口コミサイトに消費者に“成り代わって”大量投稿せよと吉田氏がDHCの社員に対して指示したものだ。引き受けた社員には月10万円の報酬が提示されていたが、その作業を無償で引き受けた社員は“ゴールド社員”、“DHC特別社員”といった称号が与えられ、ゴールドバッヂの授与や賞与・人事評価での優遇が約束された。

《落書き版(原文ママ)に書かれた内容をデジタル化して、それをファンの人に成り代わってあらゆるメディアに次から次へと投稿していく。これを副業でやってくれる人を募集する。固定給制度でスタートは月給10万円。毎月一度報告をしてもらい、貢献度によって11万円、12万円、・・・、20万円と上がっていく。DHCに愛社精神があり、是非やってみたいと思う人は応募せよ》(2020年8月20日「通達」より)

《報酬を辞退したいと申し出てくれた奇特な人たちには、家で仕事をしてもらうわけにはいかないので、当然就業中の手がすいた時にやってもらうことになる。この人たちには「ゴールド社員」という称号を与え、その愛社精神を将来にわたって尊崇の対象としたい》(2020年8月25日「通達」より)

《無償ゴールド会員はいま専用のゴールドバッヂを作っているので、これも今しばらく待っていただきたい。無償ゴールド会員は賞与支給の際にその貢献度に応じて厚く報いるつもりである》(サクラ投稿を引き受けた社員に宛てたメール2020年10月12日)

 吉田氏は社内向けの文書で、この施策に200名を超える従業員が応募したとも明かしている。

■「自分のなかで何かが崩れる音がした」

 Aさんは「これを知った瞬間、自分のなかで何かが崩れる音がしました」という。

「だって、社員があたかもその消費者本人かのように振る舞い報酬を受けながら宣伝活動をするなんて、正々堂々としたやり方じゃないと思います。書かれているコメントは消費者の方のありのままの声かもしれませんが……。

 研修中、先輩から『マーケティングは顧客と会社の信頼関係で築くものだ』と教わりました。でも、この会社がしようとしていることは消費者をだますことに他ならない。何十年もかけて築いた信頼関係を壊す施策だと思いました」

 思い悩んだAさんは、交流のあった先輩社員に相談をするようになった。

「自分が長く働きたいと思い始めていたDHCが、働くのが恥ずかしくなるような会社であってほしくない、間違っていることは間違っていると言いたかったんです。研修部署の先輩や、人事部との面談でも『この施策、おかしいと思います』と疑問をぶつけるようになりました」

 しかし先輩社員の反応は芳しいものではなかった。

「みんな困り顔で、『応募してないから分からないなあ』とか『黙ってるしかないよ』と曖昧に答えるばかりで、納得のいく回答は得られませんでした。なかには『あれは“ステマ”だよね』と小声で同調してくれる先輩もいましたが、じゃあなにか行動に移そう、という話には一切ならなかった。研修担当の上長からは『そういうことが気になるなら転職するしかないね』と言われました。誰も、会長の指示に異を唱える人がいなかったんです。愕然としました」

■「DHCはワンマン企業、異を唱えるなんてありえない」

 この頃のAさんについて、前出の社員はこう振り返る。

「『らくがき板』の施策のことは社員のほとんどが疑問に思っていたんです。でもDHCは吉田会長のワンマン企業ですから、異を唱えるなんてありえない。表立って批判する人はAくんだけでした。Aくんは正しいことをしていたと思いますよ。でもDHCで働くには正義感が強すぎるというか……。生意気な新人だと思っていた社員も多かったと思います」

 Aさんにとって、DHCは居心地がいい職場ではなくなっていったようだ。10月にもなると、Aさんの研修部署は4カ所目になっていた。「平均して、だいたい皆3カ所程度で終わるらしいんですけどね……」とAさんは言う。

「いちどはDHCで長く働こうと思いましたが、この頃から徐々に会社に対する不信感が募っていきました。会社の研修以外にも、資格の勉強を始め、映像制作やコーディングなどのスキルをのばす勉強を始めました。同時に、自分なりにらくがき板の施策がいかに会社の長期的な利益にならないかを調べ、先輩社員に対して個人的に発表し、意見を聞いたりしていました。でも手ごたえはなく、『君の言いたいことはわかるけど、会長が言っていることだからどうしようもない』という答えが返ってくるだけ。もやもやした気持ちを抱えたまま、研修をこなす日々が続きました」(Aさん)

 11月になるころにはAさんの研修先は5カ所目になっていた。20名ほどいた研修生の大半は、本配属先が決定していた。この頃、炎上騒ぎのきっかけとなる韓国に関する差別的な文章が、DHCの公式オンラインショップサイトに吉田氏の署名で掲載された。

■会長の差別発言に新入社員が提出した“抗議文書”

《売上金額ではDHCはサントリーに負けていることになっています。(中略)消費者の一部は、はっきり言ってバカですから、値段が高ければそれだけ中身もいいのではないかと思ってせっせと買っているようです。(中略)サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです》(DHC公式オンラインショップサイトより「ヤケクソくじについて」から抜粋)

 Aさんはこれも許せなかった。

「この時も先輩社員に対して『なぜ差別的な文章をそのまま掲載し続けるのか』『消費者を馬鹿にした内容の文章を会長の署名で出しているのになぜ誰も何も言わないのか』などの意見をまとめた文書を提出しましたが、らくがき板のとき同様、誰にも相手にされませんでした」

■倉庫勤務で極度の緊張から突発性難聴を発症

 12月に入り、Aさんは6カ所目の研修先に行くことになった。本配属が決まる気配はまだなかったという。

「この頃には、自分を含め研修中の新人は片手で数えられるほどに減っていました。評価の低い新人は研修期間が長くなるのです。過去には研修を6部署経験した先輩社員が不名誉な意味で“伝説”と言われているのを知っていたので、相当焦りました。6カ所目の研修先として指定されたのは物流倉庫でした。倉庫といえど、もともと銀行だったビルを倉庫にしているので天井も低く、そこで200名近くの従業員が働いていました」

 しかし倉庫で研修が始まって3日目、Aさんは突発性難聴になり左耳が聞こえなくなってしまった。

「勤務中、耳の中に水が溜まっているような違和感があったのですが、翌朝に目が覚めると左耳が全く聞こえなくなっていました。すぐに病院に駆け込んだところ、極度の緊張による突発性難聴だとわかりました」

 Aさんが極度の緊張を覚えたのには理由があった。

「実はちょうど“サクラ投稿”の施策が発表された頃、発熱と嗅覚、味覚障害をおぼえて検査をしたところ新型コロナウイルスに感染していたんです。

 会社にはすぐに報告し、10日ほど会社を休みました。重症化はしなかったものの、他人事だと思っていたコロナに自分が罹ったことがショックで、それ以降、密な空間には敏感になっていました。そのため閉鎖的な倉庫勤務に緊張してしまったんです」

■人事部女性社員X氏から衝撃の“退職勧奨”

 Aさんは突発性難聴になって以降、会社を休みがちになったという。そんななか、12月18日にAさんは人事部の女性社員X氏から突然の呼び出しを受けた。

 X氏について、別のDHC社員はこう明かす。

「人事部と吉田会長の距離はかなり近いんです。特にXさんは会長に心酔していて、会長もXさんを可愛がっています。Xさんは女優の松下由樹さん似の美人で、セミロングの髪が似合う40代くらいの女性です。過去にレースクイーンをしていたという噂を聞いたこともあるほど、華やかな容姿の方です。

 Xさんは吉田会長の代弁者のような存在なので、彼女の言うことは絶対なんです。ご本人も可愛がられている自覚があるからか、ほかの社員に対して高圧的な態度をとることが多い」

 Aさんは“サクラ投稿”や差別発言についての会社の対応に不信感があったため、X氏との面談の際には録音するようにしていたという。取材班はその音声も確認している。( 《DHC人事部の退職勧奨音声》「差別発言は問題じゃない」サイト批判の新入社員を懲戒解雇 )

■「退職してもいいんじゃないか」と言われて頭が真っ白に

「いよいよ本配属が決まると思っていたんです。Xさんから『なぜいま私があなたと面談しているかわかる?』と聞かれたので、『本配属ですか?』と答えました。

 すると、Xさんは『結果から言うと、配属はないよ。12月以降も、来年の4月以降も配属するところはありません』と淡々と話し始めました。耳を疑いました」

 驚くAさんに対し、人事部の女性社員X氏ははっきりと「退職してもいいんじゃないか」と勧めた。

 突然の退職勧奨に「頭が真っ白になった」というAさんに、X氏は“退職勧奨事由”を説明し始めたのだ??。( #2 に続く)

 1月26日(火)21時〜の「 文春オンラインTV 」では、担当記者が本件を含め、これまでの「DHC問題」について詳しく解説する。

【DHCまた問題文章「NHKは日本の敵」】「文春に情報を出した」DHC新入社員が“濡れ衣”で懲戒解雇 弁護士は「不当解雇にあたる可能性が高い」 へ続く

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

関連記事(外部サイト)

×