「酒盛りしては仕事に行かなかったり、ケンカして死にかけたり…」 中野信子が語る“内田也哉子と又吉直樹”の家族の“共通点”

「酒盛りしては仕事に行かなかったり、ケンカして死にかけたり…」 中野信子が語る“内田也哉子と又吉直樹”の家族の“共通点”

©文藝春秋

中野信子「両親も必死だっただろうしなと…」 内田也哉子が笑った“中野さんのデスノート”とは から続く

 内田也哉子さんと中野信子さんの共著『 なんで家族を続けるの? 』(文春新書)の刊行を記念して、4月11日に行われたオンライントークイベント。ZoomウェビナーとYouTubeライブ中継( 現在、YouTubeにてアーカイブ動画を公開中 )を合わせて1800名超の視聴者を集めたトークの全貌を公開します。(全6回中の6回目。 #1 、 #2 、 #3 、 #4 、 #5 を読む)

(文:小峰敦子、撮影:山元茂樹/文藝春秋)

◆◆◆

■イケメンの定義とは?

Q.【40代女性より】内田也哉子さんの夫は言わずと知れた日本を代表するイケメンの本木雅弘さん。いつも映画やテレビ、CMで拝見し、「かっこいいなあ」とため息を吐いております。中野信子さんの夫の中野圭さんは、週刊文春WOMANに掲載されたご夫婦の対談の写真を拝見し、「かっこいいなあ」と息をのみました。お二人とも夫はかなりのイケメン。家族をつくるに当たって、結婚相手にイケメンを選んだのですか? だとしたら、それはなぜですか? だとしたら中野さん、女がイケメンを選ぶのに脳科学的な理由はありますか?

内田 これは「夫にイケメンを選び損なった妻」さんからの質問です。この質問はとても主観的ですよね。だって、そもそも何をもってイケメンっていうんですか。

中野 いくつかイケメンの定義がありまして。

内田 あるんだ! ないのかと思っていた。

中野 男女ともに美しい顔というのがあって、それは平均顔に近い顔なんですよね。日本のイケメンの顔といったら、ギリシャ彫刻のような彫りの深い顔ではなく、どっちかというと中性的な顔ということになると思うんです。そういう意味では、私たちの夫は2人とも平均顔に近いといえるかもしれませんね。

内田 そうなんだ、一応平均があるんですね。

■脳科学的には女性はイケメンを選んでいない

中野 とはいえ、女性がイケメンを選ぶかどうかというと、脳科学的には特にそういう基準で選んでいるわけでもないんですよ。私もイケメンだから選んだわけじゃないんです。

内田 最初に出会ったとき、「わあ、ステキ」って思ったんですよね。

中野 ステキだと思ったのは、外見ではなく、話している内容だったんだよね。普通ではないところから答えが返ってくるし、言葉が返ってくるのに1.3秒ぐらいかかるから、もしかして月に本体がいるのかなと思うぐらいのタイムラグがあったんですよ。

内田 やっぱり内面に触れて、いいなと思うのよね。私は自分の夫をイケメンだと思ったことが、正直ないんですよ。何より本人が、自分のいろんなことを気にしているんです。

中野 おお、そうですか。

内田 自分にすごくコンプレックスがあるからだって言っている。私は出会ったときから、こんなのはダメだダメだと言っている夫とばかり一緒にいるから、この人は一生懸命カバーしようとして生きているんだなと、慈しみの目で見ています(笑)。だからイケメンかどうかというのは、ひとえに内面から出ているものを魅力に思うか思わないかだけじゃないかな。

中野 女性が男性を選ぶときの脳を観察すると、あまり視覚領域を使っていないんですよ。

内田 どこを使っているんですか。

■男性が見ているのは脂肪?

中野 気になるでしょ。前頭前野なんです。脳に帯状皮質というものがあってその一部で処理している。その人の言動がおかしくないかとか、言葉遣いとか、振舞いとか、この人は自分の人生にとってどんな人なのかみたいなことを判断するところです。

内田 なるほどね。やっぱりビジュアルは二の次なんですね。

中野 一方で、男性は視覚を使っている。見た目で選んでいます。どこを見ているかというと、くびれ。

内田 くびれ? そんな面白いとこ見ているの?

中野 これは統計だから、俺は脚だとか、俺は谷間だとか、いろいろな人がいると思うんですけどね。有名な実験があって、男性にいろいろな女性の写真を見せると、ウエストとヒップの比率が0.6:1から0.7:1の間に収まる人の写真が選ばれる確率が高いんです。さらに、そういう女性を選ぶとどんなメリットがあるかという追跡調査もなされているんですよ。産まれてきた子どものIQを調べるというすごい実験をしていて、この0.6〜0.7の比率の女性から産まれた子どものほうがIQが高いのですよ。

内田 それはどういう理由なんでしょう。

中野 詳しい機序は、まだブラックボックスではあるんだけれど、脂肪が関係しているということがいわれています。人間の身体の脂肪は全部同じ種類の脂肪ではなくて、女性の身体の場合、太腿とかお尻の脂肪が、子どもの脳を育てるのに必要な材料と同じ種類の脂肪なんです。男性はそれをいっぱいつくれる身体の女性を選んでいるのではないかといわれています。

内田 へえ〜。

中野 それに比べると、女性による男性の選び方は、すごく認知的ですよね。

内田 なぜだろう。

中野 たぶん、出産という作業は命がけで、自分がもしかしたら死ぬかもしれないので、子育てしてくれる男を探したいのではないかという人がいます。

内田 面白い。知れば知るほど人間って、いかに生き延びるか、その最適な方法を試行錯誤しているだけに、何かすごく切ない。

中野 そうね。どこかの時点で家族という仕組みを発明して、どうやら家族をつくったほうが生き延びる確率が上がるらしいぞということで、パーッと広まったんでしょうね。しかし、いろいろなことが社会的に変わりつつある昨今ですよ。あまり人と接するなと言われたり、離婚率もすごく上がって3分の1は離婚する時代です。生涯未婚率も2040〜50年ぐらいには、半分の人が結婚しないという時代になってきました。そんなとき、「家族」はどう変わっていくのかということを語り合うことができたのは、大変意義があったと思うんですよね。こういうかたちで本を出せたのは、すごくうれしいです。

■又吉直樹さんの家族のエピソード

内田 そういう世の中のタイミングともシンクロしているんですね。あ、また編集部から何か突然、メモを渡されましたよ。PRお願いしますって(笑)。

中野 はい。発売中の「週刊文春WOMAN」2021春号についてですね。私と也哉子さんが『なんで家族を続けるの?』を読んでくれた又吉直樹さんと家族をテーマにおしゃべりしているページがあります。又吉さん、面白かったね。

内田 又吉さん、すごい温度が低温なんだけど、淡々と話してくださるご家族のエピソードが面白くて。

中野 お父さんのキャラがすごいよね。酒盛りしては仕事に行かなかったり、ケンカして死にかけたり。息子の可愛がり方も独特。運転中に「後ろの車がずっとつけてきてる」と脅かして、又吉少年は案の定、号泣する。両親に別居期間があったり、お父さんに耐えられなくなったお姉さんが家を出たりするんだけど、又吉少年は一貫して親に優しい。也哉子さんにも感じるんですけど、アダルトチルドレン的なんですよね。親がフリーダム過ぎると子どもが早く大人になってしまう。あと、スイカが半分だったか一玉だったか(笑)。そんな又吉さんのお父さんがお母さんをどう引っ掛けたかという話が書いてあります。

内田 ご自身の家族を観る視点も、又吉さんはやっぱり深いですよね。

中野 小説を書く人って、いいなと思いましたね。

内田 又吉さんも、家庭環境がいわゆるハッピーファミリーの代表ですというわけではなかったから、その逆境のなかから、自分がどういうふうに生きていったら生きやすいかを、すごく試行錯誤されたんだなと思いました。だからこそ、人を見る目、小説を書く力が養われたんですね。難を有り難いものと捉えてらっしゃるんだなっていうのを、すごく感じましたね。

 あっという間にもう時間が終わろうとしているんですが、この本の刊行にちなんでハッシュタグキャンペーンを5月5日(水)23時59分まで開催します。「#なんで家族を続けるの」というハッシュタグをつけて、みなさまのご家族のエピソードを140字以内でツイッターに投稿してください。ご応募いただいた投稿から、中野さんと内田也哉子が優秀作品を選び、私たちのサイン入りの本をお送りします。ふるってご参加ください。出版社は一生懸命いろんなアイディアを出すんですね、本を届けるために(笑)。お疲れ様です、ありがとうございます。

中野 プロモーション戦略としてね。ありがとうございます。

■遠い空に心を飛ばしてくれる、詩の力

内田 まだまだいっぱい、中野さんとお話ししたいんですけれども。1年4カ月前に初めて公開対談をさせていただいた時にも、最後に谷川俊太郎さんの詩を朗読しました。谷川さんは言葉の神様、詩の神様だと私は思っているんです。私自身、物心ついた頃から、谷川さんの言葉に育てられてきたんですよ。「週刊文春WOMAN」では対談させていただいたり、谷川さんの書きおろしの詩をご寄稿いただいたり、そんなご縁もありまして、谷川さんの「家族」にちなんだ詩を今日も読ませていただきますね。詩って、ほんの数行なんだけど、遠い空に心を飛ばしてくれる力があると思うんです。では、谷川俊太郎さんの『バウムクーヘン』(ナナロク社)という詩集から。

「かぞく」

ぼくはチチがきらいだ とアニがいう

わたしはハハがきらい とイモウトがいう

ぼくみんなすき とオトウト

チチはみんなのためだというけど

かえってくるのは つきにいっかい

チチはだれもあいせないのよ とハハはいう

そんなことない とわたしはおもう

もうハハをあいしてないとしても

チチはわたしたちこどもをあいしている

ゆうがた アネのわたしはカレーをつくってる

ハハはまだかえってこない

アニはむっつりメールをうってる

これがいきてるってことなのかな とおもう

ライオンやちょうちょやまつのきやくらげ

みんないきてるってこういうことなのかな

「ハハのむすめ」

わたしはハハのむすめです

つまりはバアバのまごむすめ

アネからみればイモウトですが

わたしはまだまだわたしじゃない

わたしはわたしになっていきます

まいにちまいにちすこしずつ

ハハがしってるわたしのおくに

ハハもしらないわたしがすんでる

わたしはそこではただのいきもの

わけもわからずいきているだけ

うめきもするしうたいもします

ことばにならないたましいだいて

そっくりだっていわれるけれど

わたしはハハとはちがうにんげん

でもいつかはハハになるかもしれない

わたしによくにたむすめのハハに

「まいにち」

いつのまにか

きのうがどこかへいってしまって

きょうがやってきたけど

どこからきたのかわからない

きょうはいつまでここにいるのか

またねてるあいだにいってしまって

まっててもかえってこないのか

カレンダーにはまいにちが

すうじになってならんでるけれど

まいにちはまいにちおなじじゃない

ハハがしんでチチがひとりでないていたひ

そのひはどこへもいっていない

いつまでもきょうだ

あすがきてもあさってがきても

■中野さんの「イケメン論」に乞うご期待!

最後の一編は、谷川さんの『悼む詩』(東洋出版)という詩集から。

「そのあと」

そのあとがある

大切なひとを失ったあと

もうあとはないと思ったあと

すべてが終わったと知ったあとにも

終わらないそのあとがある

そのあとは一筋に

霧の中へ消えている

そのあとは限りなく

青くひろがっている

そのあとがある

世界に そして

ひとりひとりの心に

内田 今日はありがとうございました。中野信子さん、同世代の同じ時代を生きる女性と出会えて、たくさんの刺激と学びをいただいて、本当にありがとうございます。そしてこれからも、よろしくお願いいたします。

中野 よろしくお願いします。あと2分残っているんですね。2分というのは普通の感覚からすると、だいぶ短いと思うんですけど、生放送をやっている身からすると、超長いんですよね(笑)。

 先ほど、イケメンの話で話し損ねたことがあるので、補足をします。女性は自分の子育てをしてくれる男性を選ぶというお話をしましたが、必ずしもそうではないという場合もあります。なんでこの浮気男を好きになるのかなという、だめんずを選ぶ女の習性というのもあるんですね。

 これは脳内のセロトニン濃度によって決まったり、年齢が影響したりもします。比較的若い女子にはだめんず好きの人が多い。ところが、だんだん歳を重ねてくると、たとえば壁ドンが嫌になってくるようなんです。実は今、こうしたイケメン論をそろそろ本にしようかなという考えもあります。

内田 お! 乞うご期待!

中野 よろしくお願いします。予告しちゃった(笑)。

内田 ありがとうございました。

中野 ありがとうございました。

INFORMATION

【キャンペーン情報】
内田也哉子&中野信子が優秀作を選びます
うちの家族も“普通”じゃなかった!「#なんで家族を続けるの」
ハッシュタグキャンペーン

■募集期間 5月5日(水)23:59まで
■形式 Twitterによる投稿
■参加方法 あなたの家族のエピソードを、「#なんで家族を続けるの」をつけて、140字以内でTwitterに投稿してください。(応募エピソードはハッシュタグも含め1ツイートに収めてください。ツリー形式で応募ツイートにコメントを追加していただくことは可能ですが、1ツイート目を応募と見做します。応募ツイートに写真、動画などをつけることも可能です。文藝春秋プロモーション部アカウント( @bunshun_senden )をフォローし、DMにて連絡が取れるようにしてください)
Googleフォーム からの投稿も可能です。
締切までに応募いただいた投稿から、『なんで家族を続けるの?』著者・内田也哉子さんと中野信子さんが優秀作品を選びます。
■賞品 優秀作品には、著者サイン入りの文春新書『なんで家族を続けるの?』を進呈します。

※優秀作品は各種SNS、ウェブサイト、その他メディアや広告などで、Twitterアカウントとともにご紹介することがあります。また、その他の応募作品についてもTogetterでまとめたり、ご紹介させていただくことがあります。ご了承のうえご応募ください。

※優秀作品は、文藝春秋プロモーション部のTwitterアカウントにて発表いたします。賞品の発送は、日本国内のみとさせていただきます。締切数日後にDMにて送付先を伺います。連絡が取れない場合、当選が無効になることがございます。

内田也哉子
1976年東京都生まれ。樹木希林、内田裕也の一人娘として生まれ、19歳で本木雅弘と結婚する。エッセイ、翻訳、作詞、ナレーションのほか音楽ユニットsighboatでも活動。著書に『会見記』、『BROOCH』(ともにリトルモア)、樹木希林との共著『9月1日 母からのバトン』、翻訳絵本に『ピン! あなたの こころの つたえかた』(ともにポプラ社)、『こぐまとブランケット 愛されたおもちゃのものがたり』(早川書房)、『ママン 世界中の母のきもち』(パイ インターナショナル)などがある。

中野信子
1975年東京都生まれ。脳科学者。東日本国際大学特任教授。京都芸術大学客員教授。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『サイコパス』、『不倫』、ヤマザキマリとの共著『パンデミックの文明論』(すべて文春新書)、『ペルソナ』、熊澤弘との共著『脳から見るミュージアム』(ともに講談社現代新書)などがある。

(内田 也哉子,中野 信子/週刊文春WOMAN)

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