「本木雅弘が苦手な納豆を例に語り始めて…」 内田也哉子、中野信子が明かす“なんで結婚しちゃったのか”の答え

「本木雅弘が苦手な納豆を例に語り始めて…」 内田也哉子、中野信子が明かす“なんで結婚しちゃったのか”の答え

©文藝春秋

内田也哉子「私は内田裕也の情動の部分を受け継いでカッとしやすいんで」 中野信子と語る“両親に似ている嫌な部分”との付き合い方 から続く

 内田也哉子さんと中野信子さんの共著『 なんで家族を続けるの? 』(文春新書)の刊行を記念して、4月11日に行われたオンライントークイベント。ZoomウェビナーとYouTubeライブ中継( 現在、YouTubeにてアーカイブ動画を公開中 )を合わせて1800名超の視聴者を集めたトークの全貌を公開します。(全6回中の4回目。 #1 、 #2 、 #3 、 #5 、 #6 を読む)

(文:小峰敦子、撮影:山元茂樹/文藝春秋)

◆◆◆

■家族を持つメリット、デメリットとは?

Q.【30代女性より】家族を持つメリットは何ですか?

内田 これは究極の質問ですね。

中野 これは社会的なメリット、認知的なメリット、生物学的なメリットがそれぞれあるんです。社会的なメリットというのは、「あなたもう結婚はしないの?」みたいなことを言われる面倒くささから逃れられるというメリット。それから社会的証明としてのメリットですね。結婚していることを重要視する人はまだたくさんいるので。

内田 日本ではけっこう多そうですね。

中野 大きな企業とか官公庁とか、オフィシャルな性格の強い組織にはそういうところがあると思います。また、認知的なメリットとしては、近くに自分と違う存在がいることによって豊かに過ごせる。今、メリットしか話してないんですけど、あとでデメリットも話しますからね(笑)。それから生物学的なメリット。これは対談でもお話ししましたが、アリー効果というのがあるんです。

内田 人間は生物としてあまり強くない。脆弱な身体で、柔らかい肉で、逃げ足も遅いから、他の動物に食べられてしまう。でも集団でいれば強くなるということですね。

中野 そうです。群れをつくることによって生存確率がすごく大きく上がるんですよ。だから一人でいるよりも2人でいるほうが安全、2人よりも3人、3人よりも4人。群れが大きくなればなるほど、安全度が増すんです。それをアリー効果といいます。アリー効果があるので、群れになりたがる性質をそもそも脳に備え付けているんですね。メリットが何かということを問う前に、人間とは「家族をつくりたがる性質がそもそもある生物種ですよ」ということはいえる。

内田 とはいえ、たくさんデメリットもあるんですか。家族を形成している私たちが言うのもなんですが。

中野 どの口が言うか、ですね。家族を持つデメリットは、集団となるとルールが生じますので、そのルールから外れた人に対して、非常に冷たく当たるという現象が生じる。これ、ムラ社会の弊害ということで語られることが多いけれども、家庭でも生じるんですよ。

内田 家族をつくるとは、一つのルールを掲げるということでもありますよね。一人ならばすべて自分の自由になるわけで、やっぱり家族という族になった途端にそれが生じる。

■弱い立場の人が犠牲になりがちなルール

中野 家族のどの立場にあっても、そのルールの犠牲になることがあるんです。よく耳にするのは、出産後のお父ちゃんたちですね。出産後には母子のルールが生まれるのに、お父ちゃんは大縄跳びに入り損ねるみたいにそのルールにうまく乗り損ねて、家族から排除される。お母さんは子どもが一番大事になって、「自分一人でこんな大変な思いしているのに、何であいつは」みたいなことをお父ちゃんに対して思うようになるわけです。お父ちゃんも疎外感を味わっている。よくあるのは「奥さんはいつも神経質だけど、ちょっとどうしよう」みたいな気持ちになることですが、もっと深刻な例も沢山あります。

 また、家族のルールでは、世間体を気にして、家族としての体裁をととのえることを優先してしまうから、弱い立場の人が犠牲になりがちなんですね。子どもや奥さんがDVに遭うこともあります。海外の例ですが、フランスでは2週間に1回ぐらい、女性がDVで亡くなっているんですよ。非常に高確率で暴力の犠牲になりやすいのは女性なんです。例えば、女性の身体を思いやって男性が力の要ること、危ないことを受け持つのは、男性に対する逆差別だという声も盛んに上がりますが、女性は物理的に男性より筋力が弱くできてしまっています。人類の身体的特徴というのはそんなに簡単に変わるものではないので、やはり肉体的に脆弱なほうが犠牲になりやすいのは、昔から変わらずなんです。

 もっと犠牲になっているのは子どもです。世間体を重視する家庭の中で起こりやすい最大のデメリットは、性的虐待です。対外的に非常に体面を気にして完璧に見える家では、性的虐待が疑われると主張する人もいるぐらいです。

■「なんで結婚しちゃったのかな」

内田 その家が完璧に見えているのなら、見つけることは難しいですよね。

中野 まさかあの親がそんなことをやるわけがないだろうと、被害を訴える子どものほうが虚言癖だという扱いを受けてしまうこともある。家族とは集団生活ですから、そこのルールと個人とを天秤にかけたときに、個人のほうが犠牲になる可能性が大いにある、というのが家族のデメリットの深刻な部分です。

内田 そこまでわかっていて、中野さんはどうして結婚して家族をつくったのですか?

中野 一人でいることも好きなんですけど、なんで結婚しちゃったのかな。夫とはお互いに否定し合うところが少ないです。人格的に尊敬しているというところは大きいですね。それがないと、あの人のほうが得しているなとか、私がわり食ってるなみたいに思うようになって、やっぱりお互いに一人になりませんかと言い出すことになると思うんです。でも、大変なときに精神的に支えてくれたなとか、この人は人間としてちゃんとしているなとか、そう思えるから、彼が困ったときに自分も何かできるといいなあという気持ちになります。

内田 中野さんご夫婦はウィークデーは離れて暮らしていて、それぞれ忙しくお仕事をしている。会えるときのウィークエンドだけ一緒に過ごすということだから、素敵な距離感だと思います。それでも一緒に歩みたい、何かシェアしたいし、お互いに尊敬できるって、本当に理想だと思うんです。私は25年間、四六時中一緒にいる夫婦だから、一緒にい過ぎることでどうしても合わない部分が目立ってしまう。もう、中野さんの話はおとぎ話に聞こえるんです(笑)。

■本木が納豆を例に語り始めて…

中野 ホントに?

内田 だって、結婚して10年でしょう。私は10年たったときに中野さんのように言えなかった。なぜそう言えない夫婦になっちゃったんだろうって、自問自答しているんです。それで今朝、夫に立ち話で聞いたんです。「こんなに意見が合わないこともたくさんある、価値観が違うことで悩むこともたくさんあるのに、どうしてあなたはこういう生活を選んだの? どうして今もなお続けているの?」って。

 そうしたら、本木が納豆を例に語り始めて……彼は小さい頃から納豆がとても苦手なんです。

中野 (爆笑)。

内田 納豆って、嫌いな人にとっては匂いが強烈じゃないですか。私は大好きなんだけど、結婚した当初は遠慮して、本木がいないときに食べていました。でも子どもができると、納豆は身体にいいから食べさせる。そうしたら、「うわっ、食卓に納豆があったら耐えられない。食卓を楽しめない」と言っていた本木が、何年も何年も経て、今では子どもに納豆を出して、食べ終わったヌルヌルの食器を素手で洗っている。

中野 おお、成長だ(笑)。

内田 そう。本木は「小っちゃなことだけど、自分って偉いな」って思うんですって。一人だったら一生そんなことしなくて済んだのに、あんなイヤだったことをできるようになっている自分って頑張っているなと思ったときに、家族がいることに何かありがたみを感じるんですって。

中野 ああ、素晴らしい。それはすごく大事。

■清々しく諦めていくというのが彼のモットー

内田 もっと劇的なカッコいい例を挙げたいけど、そういうことなんです。だから、基本的に人と合わない、価値観が合わないなんて当たり前で、私たちもかなりそれでぶつかって無駄な労力を使っているんですけど、夫に言わせれば、「イヤだって思ったら、何もかもがイヤになるじゃないか」ということなんですね。家庭の外に一歩出たらもっとイヤなことがあるし、もっと合わない人と出会う。でも、そういう自分にとってはイヤなことや無駄に思えることを、結局生きている間はうまくこなしていかなければいけない。だとしたら、家庭内の小っちゃなレベルでもそうやって訓練できるし、少し自分にエールも送れる。「あ、できているじゃない。偉いね、頑張っているね」って(笑)。

 夫は元々忍耐強い人ではあるんです。「辛いのに、ただ忍耐なの?」って聞いたら、「そういう部分も大いにあるけど」ですって。

中野 大いにあるんだ(笑)。

内田 ほどほどに希望は持って生きているけど、清々しく諦めていくというのが彼のモットーなんです。諦めていくっていうことは、何かすごく寂しいもののように感じるけれども、でも清々しく諦めていくと、人生を積み重ねている感があるそうで。

中野 清々しく諦めるって、カッコいい。字面が本木さんに似合っているね(笑)。

内田 私のほうは、こんなに価値観が合わないでケンカしたりするのに、何で夫婦を続けるんだろうという問いにまだ答えがないんですね。

中野 細胞の成長にたとえるのはちょっと変かもしれないんですけど、多能性幹細胞は可能性の塊なんです。何にでもなれる。それが分化して例えば神経細胞になりましたというときに何が起こっているかというと、ほかのものになる可能性をどんどん捨てている。それが成長なんですよ。

内田 では、諦めも成長の一部なのね。

中野 生物は諦めないと成長できないんです。

内田 本木は、真理を分かっていたんですね(笑)。

中野さんは順風満帆で、何も夫婦間のいざこざなんてないように見えるんだけど。

■4日を超えてくると、ちょっとつらい

中野 いや、いざこざはある。なんでいつも部屋を散らかしておくの!とか、日常的にあります。

内田 夫婦を続けたいという思いがそれを上回っているのね。

中野 そう思いましたね。夫は、私とはまったく違う生存戦略で生きているわけですよ。私は何か目標を定めて、そこまで一生懸命、息さえ止めて走り抜く、みたいな人生だったのに、もう悠々と、お花畑を楽しみながら歩いている人がそこにいたわけです。どうしてこの人はそんな生き方ができるんだろう、ああ、新しいなと思ったんですよね。この先の人生で、私がその生き方を体得して自分のものにできたら、家族を解消するかもしれない(笑)。

内田 まだまだ教わることがあるっていうことですね。その尊敬する、そして新しいことをたくさん与え合える2人が、もし今のような距離感でなく、毎日24時間一緒にいたら、どうなると思います?

中野 4日を超えてくると、ちょっとつらいかな。

内田 この10年間、最長何日間、一緒にいたことがあるんですか。

中野 クルーズ船で旅行したときは2週間一緒にいましたよ。

内田 奇しくも、あのダイヤモンド・プリンセス号ですよね。それが最長?

中野 そう。

内田 笑っちゃっていいですか(笑)。その2週間は息詰まる瞬間もあった??

中野 ちょっとあった。そういうときは、私だけ「カジノに行ってくるね」って(笑)。

内田 爆発する寸前にスッと距離をとるということが大事なんですね。

中野 いや、ぶつかることによって得られる効果が大きいのであれば、大いにぶつかるといいと思うんです。でも、ぶつかることによる効果がイマイチな場合は、やらないほうがいいかな。

内田 それを判断するには、やっぱり俯瞰の目で見ないとね。難しいですねえ。みんな、いろいろな理想を掲げて家族になるんですけど、なかなかうまくいかないものなんですね。

■人はみな選択をさせられる人生を送っている

中野 シングルの方からの質問もありますね。

Q.【30代女性より】自分の今までの生き方を振り返ると、仕事遍歴ではいいタイミングで正しい選択ができてませんでしたし、結婚、出産についても縁がなかったために、ずっと自分の過去の選択にバツをつけていました。そんなときに中野さんの著書を拝読し、ただ単に世間一般に蔓延している「正しい答え」を選べなかっただけで、自分個人としては悪くない選択だったのでは……と考え方が変わってきつつあります。著書に書いてあった「自分の選んだ答えを正解にする」という言葉が印象に残っています。

?

 そこで質問なのですが、自分の選んだ答えを正解にするには、どのような考え方や行動が必要だと思いますか。後悔をしない生き方……は清々し過ぎて無理で、ほかにもっとないかなと考えています。正解を作るには、常に最善を尽くすことでしょうか。

中野 これはですね、後悔は絶対するんですよね。

内田 後悔しなかったら、それはまたまずいですよね。

中野 それは学習しないってことですからね。何か後悔しているほうが知能を使っているなということなので。

内田 その度合いが大事なのかしら。

中野 そうですよね。自分が何かを選んでしまって、もう戻れないということがある。でもその戻れないということに、何か意味を与える必要があるんですよね。結婚もその一つかもしれない。あのときこう言っておけばこの案件を受注できていたのに、何で言わなかったんだろうというようなことがたくさんあると思います。

 普通は、人はみな選択をさせられる人生を送ってくる。その選択をさせられながら、正解を選ぼうとして、正解ではないものを選んでクヨクヨする。そんな人生を送るぐらいだったら、自分が選んでしまったものを正解にする努力をしよう、と私は提案したんです。

 一方で、選んだ答えが自然に正解になってしまう人がいるんですよ。その人が選んだから正解、というのがあるんですよね。例えば、その人の逃げた方向だけが生き延びる方向だった、というように。逆に、望んだとおりに大学付属の学校に入ることができたけれど大学がなくなったとか、素晴らしい大企業に入ったのに外国の企業に買収されてしまった、といった展開もあります。

 正解って、自分の努力とまったく関係ないところで決まることも確かにあるんです。運のいい人は、これはちょっと間違っていたかなという選択をしても、それが正解になるようになっている。私はそれを目指したいなあ。この質問者の方も、そういう人になることを目指しませんか。

内田 でも、どうやって?

中野 それをじわじわ考えているんですけどね。とにかく運が悪い人なんていない。誰にでも等しく“運”は降り注いでいるのだということだけはお伝えしたいと思います。これはまたいずれどこかで(笑)。

【続きを読む】中野信子「両親も必死だっただろうしなと…」 内田也哉子が笑った“中野さんのデスノート”とは

INFORMATION

【キャンペーン情報】
内田也哉子&中野信子が優秀作を選びます
うちの家族も“普通”じゃなかった!「#なんで家族を続けるの」
ハッシュタグキャンペーン

■募集期間 5月5日(水)23:59まで
■形式 Twitter、Googleフォームからの投稿
■参加方法 あなたの家族のエピソードを、「#なんで家族を続けるの」をつけて、140字以内でTwitterに投稿してください。(応募エピソードはハッシュタグも含め1ツイートに収めてください。ツリー形式で応募ツイートにコメントを追加していただくことは可能ですが、1ツイート目を応募と見做します。応募ツイートに写真、動画などをつけることも可能です。文藝春秋プロモーション部アカウント( @bunshun_senden )をフォローし、DMにて連絡が取れるようにしてください)
Googleフォーム からの投稿も可能です。
締切までに応募いただいた投稿から、『なんで家族を続けるの?』著者・内田也哉子さんと中野信子さんが優秀作品を選びます。
■賞品 優秀作品には、著者サイン入りの文春新書『なんで家族を続けるの?』を進呈します。

※優秀作品は各種SNS、ウェブサイト、その他メディアや広告などで、Twitterアカウントとともにご紹介することがあります。また、その他の応募作品についてもTogetterでまとめたり、ご紹介させていただくことがあります。ご了承のうえご応募ください。

※優秀作品は、文藝春秋プロモーション部のTwitterアカウントにて発表いたします。賞品の発送は、日本国内のみとさせていただきます。締切数日後にDMにて送付先を伺います。連絡が取れない場合、当選が無効になることがございます。

内田也哉子
1976年東京都生まれ。樹木希林、内田裕也の一人娘として生まれ、19歳で本木雅弘と結婚する。エッセイ、翻訳、作詞、ナレーションのほか音楽ユニットsighboatでも活動。著書に『会見記』、『BROOCH』(ともにリトルモア)、樹木希林との共著『9月1日 母からのバトン』、翻訳絵本に『ピン! あなたの こころの つたえかた』(ともにポプラ社)、『こぐまとブランケット 愛されたおもちゃのものがたり』(早川書房)、『ママン 世界中の母のきもち』(パイ インターナショナル)などがある。

中野信子
1975年東京都生まれ。脳科学者。東日本国際大学特任教授。京都芸術大学客員教授。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『サイコパス』、『不倫』、ヤマザキマリとの共著『パンデミックの文明論』(すべて文春新書)、『ペルソナ』、熊澤弘との共著『脳から見るミュージアム』(ともに講談社現代新書)などがある。

中野信子「両親も必死だっただろうしなと…」 内田也哉子が笑った“中野さんのデスノート”とは へ続く

(内田 也哉子,中野 信子/週刊文春WOMAN)

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