“出稼ぎ”で100人以上の男性を相手にした17歳少女…“売春を斡旋する彼氏”との別れを決意した意外なきっかけとは

“出稼ぎ”で100人以上の男性を相手にした17歳少女…“売春を斡旋する彼氏”との別れを決意した意外なきっかけとは

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「別にだれでもいいよ、もう、遊ぼう」15歳の少女が家を飛び出し、売春で生活するようになった“ただならぬ理由” から続く

 集団レイプ事件、監禁されそうになった少女、集団暴行事件、少女買春事件……。こうした事件の背景に、困窮が一つの要因としてあることは決して珍しくない。生活の困窮は、人々の自尊心が傷つけられやすい状況に置かれることにつながり、そこでは些細なきっかけで暴力が発動される。

 琉球大学教授として教育学を研究する上間陽子氏も、沖縄県で過ごした学生時代に、街が孕む“暴力”を身近に感じていたという。ここでは、同氏が現地少女の取材を通じ、沖縄にどのような暴力があり、どのようにその状況から抜け出し、自分の居場所を作り上げていくのかを記録した一冊『 裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち 』(太田出版)の一部を抜粋。15歳のときに家を出てから4年間、売春でお金を稼ぎ、彼氏と暮らしてきた女性・春菜(仮名)さんの壮絶な実体験を紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

■集団レイプ、盗撮、暴行…援助交際と隣り合わせにある恐怖

  4年間仕事を続けて、その仕事に慣れてはきたけれど、仕事をすることのつらさがなくなることはなかったと春菜は話している。

 ひとつには、いつか客から暴行されるのではないかという怖さがあった。

 ホテルでセックスをするという条件で待ち合わせたにもかかわらず、客のなかには自分の住む家に春菜を勝手に連れて行くひとがいた。客の家に行き、セックスをするということは、部屋にあらかじめ盗撮カメラがしかけられている可能性があったり、複数の人間が自宅に待ち伏せしていて、集団レイプに遭う危険性が高くなる。だから春菜は、客の家に行くことを断わっていたが、それでも車に乗せられて、気がついたら客の家だったこともあったという。

 このとき、お客さんのお家とか行ったことなかったから怖くて。なんていうの、「外でちょっと煙草吸ってこようね」っていって、自分の手にもってたの、煙草とか携帯とかだけだから、もって外に出てって。和樹に電話して、「これ、やばいよね? 帰ったほうがいいよね?」っていって。そのままバーってお家から出て行って。

 そのときは、機転を利かせて客の家から逃げることができた。だがその直後に、春菜はホテルで客から暴行を受けてしまう。

 お客さんと会って、ホテルに向かったら、ホテル入った瞬間に、「トイレ行く」って、相手に背中向けた瞬間に、思いっきり髪の毛、引っ張られたんですよ。

 ──わ、怖い!

「わぁ、何が起きてるんだろー」と思って、で、引っ張られてベッドまで連れて行かされて、なぐりかかられそうなって、でも、必死で抵抗して、蹴ったり蹴飛ばしたりしてて、そしたら相手あきらめて。なんかたぶんDVのケはあったみたいで(中略)。「とりあえず帰して」、っていって、ホテルから出たら、いきなり手握ってきて、「ほんとにごめん、こんな思いさせないから、もう1回ホテルに戻ろう」っていわれて。そんなの信用できないから、「とりあえず、ここでいいから降ろして」って。

 客から暴行を受けたあと、なんとか外へ出ることができた春菜は、米軍基地のフェンスに囲まれた深夜の路上で車から降ろされる。そしてたまたま通りがかったタクシーを拾い、ひとりで民宿まで帰っていった。

■つらくてもやめられない、ここ以外帰る場所もない

 この事件のあと、春菜は客をとることが怖くなってしまった。だが、和樹は仕事をやめろといわない。春菜は薫と相談し、客1名に女性2名がついてセックスをする、「3P」という形態で客をとることにした。もしも客が暴力をふるおうとしても、ふたり一緒ならば抵抗することもできるし、最悪の場合、ひとりはそこから逃げることができる。そうすればいまよりも安全に仕事ができる。

 それからは、ふたりで客と会うようになった。ホテルでは客とそれぞれセックスをして、また元の場所まで送ってもらう。薫と一緒だと、盗撮の確認や、ホテルの施錠の確認がはるかにたやすくなった。春菜たちは以前よりも安全に働くことができるようになった。

 だが、春菜の感じていた仕事のつらさとは、客から暴力を受ける危険性だけではないように私には思えた。春菜は、発作のように泣いてしまうことが相変わらずあったし、目の前に客がいるのにすっぽかして帰ることがあったと話している。

 ──どんななのかな。……やっぱり仕事つらかったの?

 これがとっても激しかった。つらいときと別に楽なときと。

 ──これは、客次第とかではなくて?

 自分の気持ち次第、とっても。嫌な客にあたってても、嫌な客にあたったとしたら自分のなかでは、早く終わらせて早く帰ればいいんだっていうのがあったから。よかったんだけど。気分が嫌なときはどんだけいいひとにあたってても、もう1分1秒がとっても長く感じる。

 ──ふーん。もう話もしたくない?

 うん、話もしたくないし。なんかもう、ひとりでここからいなくなりたいけど。

 ──逃げたりはしなかったの?

 もう、しなかったけど。待ち合わせのときにほんとうに嫌だったら、もう駐車場の隅っこに隠れて、「いないよ」とか。目の前に(客が)いるけど、和樹に(電話をかけて)「いないよー」とか。「ああ、これ、なんていうの、サクラじゃん?」みたいな。車の下に隠れて、「サクラじゃん」とかいって。

 春菜は、仕事をするのがつらいことが何度もあったと話した。でも私は、そのつらさがなんであったのか、それ以上、春菜に尋ねることができなかった。春菜の得たお金は、春菜と和樹が生活するためのお金だから、仕事をやめるという選択肢が春菜にはない。客と会ったあと春菜が泣いていても、和樹はその理由を尋ねない。客に暴行された春菜がひとりで民宿まで帰ってきても、和樹は仕事をやめろとはいわない。そうした和樹の行動をなじり、和樹と別れたとしても、春菜には帰る家がない。春菜はどこにも行けないなかで仕事を続けていた。

 春菜のつらさは、幾重にも重なっているように私には見えた。

■自分が100人と売春して得た金を彼はあっという間に使ってしまった

 だが次第に春菜は、和樹が自分のお金をあてにして生活することに、苛立ちを覚えるようになる。春菜が17歳のころ、春菜と和樹は友だちも一緒に、九州に「出稼ぎ」に出かけ、春菜は毎日数人の客をとって、150万円ものお金を貯めて沖縄に帰ってきた。150万円というお金は、1万5000円で客をとっていた春菜が、ざっと100人の客をとった計算になる。出稼ぎ期間中の生活費もすべて、春菜が払っていたわけだから、それより多い数の客をとって、春菜は毎日、仕事をしていたはずだ。

 だが和樹はそのお金の一部を自分の母親に貸してしまう。さらに和樹は、残りのお金で免許をとり、自分の車を購入した。150万円あった貯金は、あっという間に20万円程度になってしまう。また、これをさかいに、お金を管理していた和樹の浪費もはじまる。

 このお金150万ぐらい貯めて帰ってきたときに、結局、(沖縄に)帰る前に自分はやりたいこといっぱいあるから、ひとり、いくらいくらって決めて、10万、10万ぐらいねって。自分、美容室行って買い物して、バーって行って帰ってきて。「別に、もう仕事しなくていいや」ってなるから、お金あるから。ああーって遊んでたら、「どこ行きたい?」「暇だねー」「100スロ行く?」別にいくら使おうが、「あっふーん(=気にしない)」みたいな。と、思ってたら、和樹、自練(=自動車教習場)行かして、車買って、ってやってたら、「なんでこんなお金がなくなる?」みたいな。………でも後々、和樹のお金の管理が適当になってきて。もうなんか自分がやりたいって思ったら、「ねえ春菜」、みたいなかんじだったから……。

 和樹は自分のしたいことがあるとすぐに、客とセックスをするよう促すようになる。春菜はそれに応じつつ、和樹にも働くように話した。それでも和樹はなかなか仕事につかない。この時期、春菜と和樹のあいだでは深刻な諍いが増えた。

■彼の浪費に呆然…

 春菜が18歳になったころ、和樹はようやく、ホストクラブで働くようになった。しかし今度はそれによって、夜、和樹は不在となり春菜は、家にひとりで待たされるようになる。和樹と春菜の諍いは続いた。

 春菜は、和樹に昼の仕事に移ってほしいと何度も話し、和樹は昼の仕事をはじめた。

 だが、和樹の給料が支払われるまでの1カ月は生活するためのお金がなかったので、結局、春菜が仕事を続けることになった。そのとき春菜は、自分が普段「生活費」として和樹にあげているお金の総額を確認しようと思いつき、家計簿をつけはじめた。

 去年、和樹が(昼の)仕事しはじめたのが、ちゃんと仕事しはじめたのが、6月くらいで。それまでずっと喧嘩してたんですよ。この仕事就くまでのあいだ、夜の仕事してたけど、自分からしたら、(夜、家に)いないのが嫌だったんですよ。だけど、結局仕事しないとお金が出てこない、で、それをとめるってなったら自分がガマンしないといけないのかな、それも嫌で。で、喧嘩してて、で、「おまえもういい加減、昼の仕事しれば?」っていったんです。「女にばっか頼ってないで」っていって。で、仕事しはじめて。で、和樹の実家からも出たんですよ。和樹のいとこのアパートに移って。でも結局、和樹が仕事しても給料が入るの1カ月後じゃないですか? それでまた結局、自分が毎日仕事して。で、やっぱり一緒に住んで、ふたりで住んでいくっていう気持ちだったから、そのときは、全部、この、家計簿とかつけてたんですよ。そしたら、和樹が、仕事、給料もらうまでのあいだに、40万くらい使ったんですよ。

 ──なんで?

 結局、もの(=フィギュア)とか、全部集めたりとかしたりしてて、なんか気づいたらそれぐらい使ってて。

 ──家計簿つけてるからわかったんだね、ちゃんとね。

 もう、もうエグい金額なってて、やばいなーと思って。

 生活費という名目で、和樹が使う1カ月のお金の総額が40万円近くになることを知った春菜は、愕然とした。確かにアパートの代金は和樹が自分のいとこに支払っていたが、それはせいぜい数万円程度に過ぎない。和樹は、自分が働いて得たお金はすべて貯金すると話していたが、その貯金も増えていない。春菜はそれに対していらついた。

 昼の仕事してるのに、結局、貯金するっていって、自分のお金(=春菜が稼いだお金)を生活費にまわしてとかだったから、なんか、「んー?」って思って

 ──和樹が稼いだお金は、和樹が自分のお金として貯金してるってこと?

 うーん、ふたりの貯金ではあって。(その貯金で)自分に自練(=自動車教習場)通わすためとか、アパート借りるってだったけど、(でも)そこまで貯まらなくて。結局、半年くらいで出て行く約束が、1年ぐらいいて、(いとこの)アパートに。それでも全然お金が貯まらなくて、それに対してとかも、いらついてて。

■安定した仕事と自分の居場所を確保して別れを決意した

 ちょうどそのころ、春菜はマーマーから、自分の店で仕事をしないかという誘いを受ける。給料はそう高くないが、午前10時に出勤して午後8時までの勤務という「昼の仕事」であること、マーマーが同じ店にいて仕事を教えてくれることが春菜にとって魅力だった。春菜はすぐに、その仕事をはじめる。

 するとまもなく、春菜の父親からも連絡があった。父親の恋人が内地に移動することになったので、家の管理を春菜にお願いできないかという相談だった。春菜の父親は、「1週間に1回とか様子を見に来てもらって、それか、もしよかったら、春菜が住んでもいいよ」と春菜に声をかけた。

 春菜はずっと家に帰りたいと思っていた。でも「援助交際」をして生活してきたことをお父さんは知っており、「どうやって顔を合わせていいかわからない」と思い続けていた。でも、だれもいない家ならば、帰ることができる。春菜は、「すぐに帰る」と返事をした。

 そしてこのとき、春菜は和樹と別れることを決意した。春菜が別れ話を切り出すと、和樹は、「どうせ自分のところに戻ってくる」といった。春菜は和樹のいい方に心の底からうんざりして、「和樹をほうりなげた」。

【前編を読む】「別にだれでもいいよ、もう、遊ぼう」15歳の少女が家を飛び出し、売春で生活するようになった“ただならぬ理由”

(上間 陽子)

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